102.鎌は、刃と柄が分離するのか?人を殺し、人を殺す人の目撃者となり、白組の人は、他人を物理的に攻撃することへの抵抗がなくなったのか?北白川サナは、俺の手を握って?
鎌の刃は、柄から外れるのか?
俺は、自分の手にある鎌を確認した。
軽く振ってみる。
刃は、柄から離れそうには見えない。
刃が外れる作りではなさそうだが。
「鎌の刃が外れて飛んでいるように見える。
俺の鎌は違うが、鎌の刃が取り外せる鎌もあるのか。」
鎌の刃だけ取り外して投げているのか?
鎌の刃について考察していると。
「鎌として使われなかった鎌に、鎌以外の未来を与えているです。」
と北白川サナ。
「使われなかったということは、未使用ということか。
前例にいるひとの鎌は、血がついている。
後ろに並んでいる人は、鎌を使わなかったのか。」
使わなかったら、刃が外れて飛び出す鎌か。
刃に何か埋め込まれているのか。
後列にいる人の鎌の刃は、柄から外れて、前列にいる人の背中や腕を切り裂いて床に落ちていく。
北白川サナと俺を囲んでいた白組の人達は、野村レオの仇をとるという崇高な目的で集まっていた。
背中を切りつけられた前列の人達は、何が起きたかを理解した。
「痛い、なんの恨みがあって、こんなことを。」
「背中から狙うなんて、卑怯な。」
「気に入らないことがあるなら、口で言えば良かったでしょ。」
「武器を手に持っているからっ、いい気になるんじゃない!」
「背後を狙っていたの?」
前例にいた人達は、飛んできた鎌の刃に切りつけられたものの、手に持った鎌を落とすほどの重傷者は1人もいない。
振り返るなり、前列の人のうちの何人かは、後列の人に鎌で襲いかかった。
「待て。誤解。鎌の刃が取れたんだ。」
「勝手に鎌の刃が飛んでいった!」
「私は悪くない。何もしていない。」
「鎌が不良品だった!」
後列の人が、口々に無実を訴える。
後列の人の反応は、バラバラ。
鎌の柄の部分で応戦する人。
鎌の刃を避けながら、落ち着け、と前列の人に訴えている人。
逃げ出して、前列の人に追いかけられている人。
恐怖に目をつぶったまま、鎌で切られて、悲鳴をあげている人。
北白川サナに集積していた殺意は、白組内に分散。
白組の人達が、拍手をしていたら、鎌は床に置いていたはず。
手に鎌を持っていなかったなら。
仲間だったはずの人達と殺すか、殺されるか、の関係になることはなかっただろう。
加地さんを殺した白組の人達は、知り合いが人を殺すことに迷わなかった場面を目撃している。
自身も人を殺すことに加担したことで、自分も殺されるのではないかと考えやすくなった。
鎌の刃が外れる、なんてあり得ない言い訳をしてきた、と後列の人達を怒りに任せて攻撃したものの。
本当に刃がなくなって、柄だけになっている鎌だったものを見て、あれ?と我に返る人も出ている。
「嘘じゃないんだ!
やっと分かったか!
この傷、どうしてくれるんだよ!」
鎌の柄を突きつけて、凄んでいる。
突きつけられた方も、悪かった、とは言わない。
無我夢中で追い回していたから、後列の人に一撃を加えて、傷を負わせることができた。
熱気が冷めて、現実に引き戻されて。
やられたことをやり返すという大義名分が、思い込みによるものだったと知ったら?
わざと傷を負わせたことのみを責めるなら、前列の人の攻撃は、反撃に相当しない。
前列の人から攻撃された後列の人が、わざと攻撃されたことを理由として、前列の人にやり返してくるかもしれない、と気づいても。
前列の人は、早とちりしてごめん、とは言わなかった。
「紛らわしいことしやがって!
先に、鎌の刃がなくなっているところを見せたら良かったんだ!」
全体を見ていると。
前列の人は、1人も謝っていなかった。
謝って、ごめんと言った後に、お詫びとして、鎌をとられるのを警戒したのだろう。
一瞬、落ち着いたかに見えた、白組の前列と後列の争いは再燃。
武器である鎌の奪い合いが始まった。
殴ったり。
蹴ったり。
鎌を振り回したり。
ツバを吐いたり。
北白川サナは、鎌を持っていない方の俺の手を握ってきた。
北白川サナは、怖いんですう、などとは言わない。
白組の人達の争いを見るのを止めて、北白川サナの顔を見ると。
北白川サナは、俺の手を握って、歩き出した。
デスゲーム運営が送り込んだ北白川サナ。
従うに限る。
俺は、北白川サナの隣に並んで、歩調を合わせた。
進行方向は、出入り口だが?
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