プロローグ
弁解したいのだが、俺は決してモンスターを使って快楽を得ようとしていたわけじゃない。
ズボンもパンツも履かず――下半身にスライムを巻き付けて、美しき水精霊に見られながら股間にウォシュレットを当てていたとしても、それは決してこう……何というか……まぁ、はっきり言えばオ〇ニーをしていたわけじゃないのである。
全部なりゆきで……そもそもイカれた女神が魔法をくれた事とか、モンスターに襲われた事とか――その時に怖くて漏らしちゃった事とか――、スライムに懐かれた事とか……そういう積み重ねがあって今の状況があるのだから。
でも、どうだろう。どんな言い訳をしたところで、果たして信じてもらえるのだろうか?
客観的に見た時……俺が逆の立場だとして、ダンジョンで半裸の男が並べる言い訳を冷静に聞き入れられるか?
答えはNOである、間違いなく。
現に、俺と目が合った冒険者――白銀の軽装鎧を装備した金髪クンは、切れ長の瞳を見開き、身体をわなわなと震わせている。
アイツすげぇ見てくるじゃん?などと思いながら、俺は意外にも冷静な自分に関心していた。いや、冷静というか、パニックで頭が真っ白だし、この状況について色んな事を諦めてしまったのだろう。
白銀鎧は身長170cm程度で中性的な超美形だ。
ダンジョン四層まで来られる強さもあって、芸術品みたいな模様の入った美しい防具もめちゃくちゃ似合っている。
この世界に勇者という存在が居るなら、まさにああいうヤツを指すのだろうという見た目だった。
『信じられない』という顔をしながら、それでもこちらへ一歩踏み出してきた男が口にした言葉に、俺は耳を疑ってしまう。
「ぼ、ボクの……ボクの初めてをもらってくれませんか!?」
――あぁ、しまった。こいつホモか。そう思いながら、俺は複雑怪奇な本日を回想し始めたのである。