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いきなり800日の世界一周  作者: 晩白柚
2/12

D-2日目


男の名は高山飛騨守図書、本当は友照という名前だが、今年に入ってからは自ら図書と名乗っている。

はっきり言って厨二病である。

第一、飛騨守も図書頭も官名である。

一般常識的にも官名は一つ名乗るべきで、2つも名乗るのはおかしいというものを、隣領の領主の茨木が佐渡守を拝命したのが羨ましいからと、官位が上の図書守を名乗ってやろうという腹積もりかもしれないが、それだからといって従5位を詐称する度量もないので、カミを付けずに名乗っているのだ。

彼は何かにつけカッコつけるのが大好きで、若い頃には空元気のカッコつけでなんと三好家の縁者の姫様のハートを射止め、この群雄割拠の戦国時代を無事に過ごすという超高難易度ミッションを達成した猛者である。

居城の高山城というと聞こえは良いが、村の丘の上の砦に代々住んでいるのだが、まあ、どう見ても小山だ、高山よりも小山家、小山田家、丘山家とか、そんな名前に普通ならなっていたところを、ご先祖様がカッコつけて高山だなんて名乗ったおかげで高山家という、先祖代々の厨二病だ。

それでもカッコつけるために税率を低く保っていて村人には慕われている高山の殿様は、弓の名手で村一番の狩人で、村の空中に鳥が通ると一匹残らず撃ち落とす猛者であったので、それの稼ぎで村一番の金持ちと、結構儲かっているのだ。

三好家の戦争に父が従軍して戦死し、家督を結構若くして継いだ友照は、なんとお葬式で知り合った三好家のご当主の従兄弟の娘とかいうお姫様を落とすために、喪に服す期間に高山に屋敷を建てて、家臣と領民にそれを高山城と呼ばせ、自分を御屋形様と呼ぶようにと命じているが、これも旅の芸人のお芝居で武田信玄とかの話を聞いて影響を受けたのだろう。

それでも新築のお屋敷は住心地が良さそうで、三好のお姫様もすごく気に入ってるそうだ。


そんな新婚さん家では子供が生まれようとしていた。

お産をするなら摂津一の、いや、世界一のお医者さんに見てもらうんだと、堺に行って連れてきたのが南蛮人の宣教師で、お国で医学を習って航海中は船医をやっていたという宣教師ロレンソと、看護婦をやっていた宣教師ヴィレラ。

そのおかげもあって最新医学の設備を持ち込み、衛生的な出産準備がある程度整い、今日か明日かに出産という時を迎えていたのだった。


「何があっても無事に生まれるにはどうしたら良いのだ?」

「トノサマ、カミニイノリマショウ」

「そうか、それでは教えてくれ、どう祈るのだ?」

カトリックの印を組み、呪文を唱え始める宣教師、

「命を与え給う父なる精霊よ」

『アヴェ·マリア』

「あなたの敬虔なるしもべの祈りを聞き入れ給え、新しき命をあたえたまい、祝福があらんことを」

『アーメン』

途端に目を丸くする友照、

「な、なんと尊い、もう一度お願いしてもよいか?」


そうである、友照の目には、カトリックの祈りはかっこよかったのだ。


その時寝室の入り口に世話役の隠岐が来て、声をかけた。

「殿、本日付で登城となった星野左衛門が来ましたが、拝命の儀はいかがいたしましょうか?」


「今はそれどころではない、えーと、あなたのしもべのいのりの···」


「殿、では星野は如何いたしましょう?」


「よい、明日にせよ、今は忙しいのだ」


「仰せのままに」


その日は、日が暮れるまで神への祈りの言葉を聞いては覚えてをしながら、結局嫁に怒られ、一生この件で頭が上がらなくなる友照なのであった。





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