君は親友(ニンゲン)?
「んー」という言葉と共に浅くとも深い思い出に浸っていた。
シェバラールの城門を出て、俺らは晴れて旅に出ることとなった。
そういえば最初の街では、色々な職業を習得したな。
まとめておくか。
先ず、皆も知っていると思うが射手。
隣にいる召が持っている職業だ。
とは言っても、今のところ雷鳴矢だけだが、これは修行のお陰でかなり強化された。
本職である召よりも数倍の威力が出せる。
次に、紺碧の剣。これは、リリーやあの大男が持っていた物だ。
まさか同じ職業だとは思いもしないほど、体格の違う2人だったのでよく印象に残っている。
とまあ、このくらいだろうか。
意図せず習得してるスキルとか色々あるけど、今は触れるのを辞めておこう。
とにかく!
職業の種類としては、88の内2個、手に入れたってことだよな!
「幸先良くて助かった〜」
「ん? 何が良かったのだ?」
「え? あーいや、無事に出発出来て良かったな〜って」
なるほどな〜と召は頷いてまた歩き出した。
あっぶねえぇ! 心の声漏れてた! バレちゃいけないんだよ! 顔とか出てない!?
ある程度歩くと見覚えのある土地、草原を抜けガラリと変わった景色。
ザクザクと音を鳴らす赤土はあの時の不安と希望を彷彿とさせる。
「……懐かしいな」
意図せずとも言葉が出た。
「あぁ……懐かしいな、最初にここに来た時は訳が分からなかったよな」
俺らが召喚された場所、こっちの世界に来てからも
散々不思議なことに触れてきたけど、いつ見ても訳が分からない所。
しみじみとした思いに浸っていると、召がいきなり大声で……
「さぁ! どうする!」
いいタイミングで水を差されたのもあり若干憤りを覚えながら聞き返した。
「どうするって何が?」
「我ら最強の行く末さ!」
「ガルムさんに地図貰ったからとりあえずは別の街目指すんだよ!
あと、いつその痛いパーティー名考えたんだよ!」
「思いつきなのだが」
全く、最近の召はおかしい。
こっちの世界に来てから、ずっと厨二病をこじらせたような喋り口調で、
毎回聞く度に、俺の知っている召とどんどんかけ離れているように感じる。
気にしすぎかと思うかも知れないけど、元からこっちの世界に居たような口ぶりで怖い。
本当なら、召にも魔王討伐の事を話して一緒に倒そう! ってやりたい。
でも、今の召は、絶対おかしい。こちらの秘密を明かしたらいけない気がする。
旅に出る前、師匠から教えて貰った世界眼で召のステータスを覗いたことがある。
いけない事だとは思った、でも、1度だけ召を信じられなかった。
この時から俺の恐怖は確信へと変わってしまった。
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折オオ々 召〈オリ+8#リ シ!&%ウ〉
AgGe:17?
職業:射手
Abbbbblit:$¥^2?%&@*
=72=@u+%#/o&:&@%-(62m
unknown……unknown……unknown……
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だってこんな画面が出てきたのだから。
明らかに俺の画面と違う。
最初は、他人のステータスだからこういう仕様なのだと思った。
だから、他の人も視てみた。
────ほかの人のは普通だったのだ。
俺は疑心暗鬼に考えを巡らせた。召は本当に人間なのか?
スキルがエラーを起こしたのか? いやそれはないはず。
ならなにか踏み込んではいけない領域に手を出してしまったのか?
いずれにせよ、今、直球で質問をして、確信に迫るのはやめておきたい。
この世界から1度消えた魔王が戻ってきていると噂されていること、
俺が人間側の唯一の切り札であること、そして召のステータスのエラー画面。
この3点を踏まえれば、
いよいよ自身の身に異常が迫ってきていると考えても何一つおかしくはない。
非常に心苦しいが、周りを安直に信用するのは避けておこう。
たとえ、今隣で歩いている親友でさえも。
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