決闘の後に映る景色
街の方に近づくにつれ、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「てめぇ、もう一度同じ言葉言ってみろ!」
「んだと? 貴様のその傲慢な態度を改めた方が良いって言ったんだよ! バーカバーカ!」
いや小学生の喧嘩か!
いやまぁ、どうせギルドに蔓延ってる
イカつい冒険者達が、争ってるだけじゃないのか。
あまり危機感を抱かなかったが、心配だったので俺は足早に向かった。
なんとそこには異様な光景が繰り広げられていたのだ。
スタートの合図さえあれば、すぐにでも戦端が開かれそうになっている。
今にも襲い掛かりそうな睨みをきかせる、
おそらく冒険者であろう大剣を持ったガッシリとした体格の良い男と
弓を持ち、恐ろしく殺気立つ小柄な召が向かいあわせで立っていた。
周りの野次馬達は後押しするように「やっちまえー!」とヤジを飛ばしていた。
俺は全くその状況を理解することが出来なかった。
急な出来事に戸惑っていると、兎耳が俺の方へ焦りながら駆けつけてきた。
「リュウさん! 大変なんです! ショウさんが……!」
「ど、どういう状況ですか?
なんか今にも目の前で物凄い戦いが、繰り広げられそうな気配がするんですけど」
「それが……その〜」
兎耳が言葉に詰まったその瞬間、遂に闘いの火蓋は切られた。
召達の方から異様な程の風圧、威圧を感じた。
それに気を抜けば一瞬で潰される感覚にも駆られた。
そう、まるで最初に双狼剣に
会った時のように。
まずい! このままじゃ! と思い足を踏み出そうとしてみる。
しかし2人の闘いは思った以上に激しい。
着地という休憩が入る度、砂ぼこりが舞った。
到底、素人が手出しできる領域ではなかった。
やっと兎耳がモゴモゴした口を開けて状況を話し初めた。
「その、ショウさんが……
我の力を試したいとかなんとか言って……彼に喧嘩……」
「あの馬鹿!
自分からあいつに喧嘩ふっかけたって事ですか?!」
「あ、いえ。そうではなくて」
その一言で、俺の思考は急ブレーキをかけてクラッシュしかけた。
「あの、今闘っている方に稽古をつけて欲しいと頼みに行ったんです」
え? ごめん前言撤回。クラッシュ。
理解が追いつかない。じゃあ何、あの殺気?
つまり──あれは臨場感溢れる修行という
世間一般にいう稽古みたいな感じ…………?
少しでも召を心配した俺が馬鹿でした。若干の呆れと共にため息を吐いた。
脳内からまた爺さんが話し始める。
「まぁ、そうカッカしなさんな。細いのはおぬしの仲間なのじゃろう?」
「まぁ、そうだけど……」
「少し見届けようではないか。なにか奴が技を繰り出すまではの」
爺さんに言われた通り、大人しく召達の闘いを観戦する事にした。
大柄な男は、その身体の大きさからは到底考えられない程の速度で動き、風を斬るように剣を振り下ろす。
その度に空気がピンと張り詰める。
それに対抗する形で小柄な召は大柄な男を上回る速度で見事に剣を避け、
奴の後ろに回り込み弓を正確に射る。
だがしかし、それすらも大剣の男は綺麗に捌いていく。
男が矢を弾くたび、鏃と刀身が火花を散らし、辺りに花火のような若干の焦げ臭い匂いが漂う。
両者1歩も引かない戦い。
だが、時間が経つにつれ、疲れてきたのか両者の額からは汗が滲み出してきていた。
見てるこちらまで、闘いの最中に放り出されたような気分になる。
「あの細いの、自身で言うだけ伊達ではないな。
ほれ、技を使うみたいじゃぞ」
爺さんが言ったその瞬間、まるで口裏を合わせたように召が技を使った。
「……天より舞い降りし霹霊よ!
今一時味方となり我に渾身を!──ライトニングアロー!!」
空気がより一層張り詰めたと思った瞬間、
轟と共に一筋の閃光が男を目掛け、恐ろしい速さで一直線に向かっていった。
最初は押され気味で何とか耐えていた大剣も、
徐々にミシミシという音がなったと思うと、バリンと言って真っ二つに割れ、地面に落ちた。
数秒の沈黙の後、舞い上がった土ぼこりを掻っ切り盛大な歓声が上がった。
「本当に勝っちまった!」 「賭けに勝ったああ!」
などと賞賛する声が多方向から挙がった。
両者緊張が緩み、笑顔が綻び最後にはガッシリと握手を交わした。
闘いを見ている最中見開いていた目は乾きの限界を迎え、目を瞑るしかなかった。
少し休めた後、再び目を開けようとした時、
ありえないものが俺の視界に飛び込んできたのだ。
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