変わりゆく世界と樹
「はぁ……新鮮な空気が吸いたい」
俺はふらふらといつの間にかギルドから出て、
ギルドから程近くの丘の上に来ていた。
太陽は頭の上から少しズレた西に空に入っていた。
大方、地球で言うところの昼2時ってとこだろうか。
青々とした草の上に身体をゆっくりと乗せた。
心地よい風はあの悪夢とは違い、優しく包み込むように身体に触れてくる。
その時、ふと最初のRPGみたいな画面が見れるということが頭を過ぎった。
「そういや、あれ。どうなったんだろ」
俺はそっと片目を瞑り、例の画面に意識を集中させた。
それにはこう記されていた。
--------------------------------
筑木 流〈ツヅキ リュウ〉
Age:17
職業:変幻万象
Ability:未定
────────
--------------------------------
能力が未定? それに、
「なにこれ……変幻万象? これが……俺の…………?」
もっとよく知りたくなったのだが、
触れたことの無いこの画面のシステムがよく分からず何も無い空中に手を振っていた。
数分後、考えることで動かせる事に気づいた。
「職業の説明……えーっと、これか。なになに?
【この職業は万物を統べ、そして凌駕する】
…………ちょっと何言ってるか分かんねぇ」
1度見ただけでは全く意味がわからなかったが、暫く考えてようやく理解した。
恐らくはこの職業……
「もしかして、職業全部使えちゃうのでは!?」
これはもしや、
俺、最強になっちゃいました!? 的な展開?
俺TUEEEEみたいな!!
やったぜいえぇぇい! ん? いや待てよ?
なら何故俺は、まだ1つも職業の能力が発揮できてないんだ?
つまり、能力を使うには、何かしら条件が存在するということか。
なら、条件とは一体──
「ふむ……おぬし、悩んでおるようじゃの」
「うわ!? だ、だ、誰! てか何処?」
あまりの衝撃に身体ごと飛び起きた。がしかし、周りを見渡しても誰もいない。
なんだ気のせいかと思った時、もう一度その声が聞こえた。
「ふぉっふぉっふぉっ、脳内に直接語りかけておるのじゃよ」
何その憧れの展開!
でも真面目に脳内で喋られている感想言うと、話す度に少し脳が揺れる。
そして────
「わぁ、きっっっし……いやなんでもないです。
で、何の用なんですか? 爺さん」
「なんじゃ? 今何かわしを貶すような事を言おうとしたじゃろ。
それに加えて、人を見る前に爺と決めつけるのは些かどうかと思うんじゃがな。
お主らの世界で言うところの重罪じゃぞ。
あーまったく。こんな事を言うために力を使うはずじゃなかったのに。
若造よ、単刀直入に申すぞ」
単刀直入って、いきなり出てきてなんだよ。
それにそんな簡単に解決出来る問題じゃ……
「触れるのじゃよ」
「何処に何を何の為に触れるって?」
「いや、手で相手の身体に力を得るため触れろ。但し、相手の職業を知ってからじゃがの」
はぁ? 職業を知る? 名前だけじゃなくて?
いや、それだけならもう召の能力も使えてないとおかしいって事か……
「なるほどな、爺さん。それと、名前聞いても?」
「あほ、儂に名前など無いわい。
儂は世界樹、その中でも、人類が存在する何百年も前から生きておる世界樹じゃからの」
へぇ……すごい理不尽な世界樹だなぁ。
俺が小説で読んだのとはひと味違うテイスト。
ドライアド──って言えば当てはまるのだろうか。
ん、世界樹……? いや待てよ、て事は……
なんでも知ってる爺さんじゃーん!
え、有能じゃーん! ぐへへへへ。
「世界樹なんだ。なんかかっこいいじゃん」
俺は、内心めちゃくちゃ驚いているが、表面に出ないよう我慢したのだが──
「気持ち悪い笑顔じゃの。
人の気持ちなど分かったことは無いが
今回ばかりは気持ち悪いとはこのことを言うんじゃろうな。」
改めて咳払いをする世界樹の爺。
「それにしても正体を聞いても驚かないとは珍しい奴じゃの。
ほら、分かったらさっさと立ち上がらんか!
わしゃ自分の職業の使い方も分からんあほんだらに説明せないかん」
「失礼だな、俺は流って名前があるんだ。忘れんなよ! じ、い、さ、ん!」
「リュウか、わしに突っかかってくるとは、中々見所のあるやつじゃの。
気に入ったわい! ふぉっふぉっふぉっ」
こうして、俺は悪口を言い合いながらも世界樹の爺さんと仲良くなった。
爺さんに変幻万象の使い方を
1から鍛えてもらう為、共にギルドの方へと戻る事になった。
────────
一方その頃、ギルドでは、
なんやとんでもない騒ぎになっていた!
面白いと思った方、
ブックマーク、ポイントをお願いします*_ _)