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プロローグ:静けさの嵐

「めんどくせぇなぁぁ!!」


  おっと、つい口にしてしまった。


  その瞬間、

 大きな白い帽子を被った通行人の女性が

 冷ややかな視線をこちらに向けてきた。

  俺は苦笑し、半分恥ずかしさを覚えながら

 何事も無かったかのように

 すぐさま自転車で去った。


  しかし、夏の暑さで頭がイカれてるせいか

 再び叫びたくなった。


 ふぅ……


「……」


  誰も、居ないよな……


  ある夏の昼下がり。

 今俺が走っている線路の横の道路は

 発展しない街への当てつけのように

 ここだけ舗装される。


  でも、ここが田舎で本当に良かったと思う。

  ド田舎! 超が付くほどのね!

  家なんて全然無いし、むしろあるとすれば

 線路ぐらいかな。

 

  はぁ……周りを見渡しても

 ずっと平坦な景色が続くような所だしなぁ。


  挙句の果てには自転車のチェーンも外れ、

 怒りが頂点に達しそうだった。

  勢いよく叫んだ俺は、少々疲れ気味かつ、

 スッキリとした気分になり、家に帰った。


  帰る途中、

 ふと俺は朝のニュースが頭をよぎった。


  今日は台風が来るらしい。


  その影響もあってか家の前の公園には、

 いつも遊んでいるはずの

 子供たちの姿がなかった。


  俺はその状況を苦だとは思わなかったが、

 どこからか吹く風で揺れる、

 芝生たちと似たように心が揺さぶられた。


  そこは、嵐の前の静けさを

 そのままの意味で置き去ったような

 異様な光景だった。


  ふと向こうの空を見ると、まだ晴天だ。

  そして今、上を見ると──


  灰色の雲が空を覆っていた。


「不穏だなぁ……」


  そうぽつりと呟いて家に入った。

  案の定、夜にはもう豪雨になっていた。


  次の朝、早くから誰かに呼ばれる声がした。


 ……さい……なさい……きなさい……


「おきなさい!!!!」


 わわっ! 耳元で叫ばれたのか?


「ふぇぇっぃ!?」


  思わず変な声が出た。母親だ。


 "敵はどこだっ!!"


  寝ぼけ眼と昨夜見たアニメのせいで、

 急に変な体制になってしまった。


「おいマジか、1階から声掛けて来たのか……

 声量やべぇ……」


  それにしても、

 夏休みぐらいゆっくりさせてくれても

 いいじゃないか。

  大体、折角の休みっていうのに。


「夏休みだからこそ

 ゆっくりしてちゃダメでしょ!」


「……」


  おい、なんだ?

  母親ってのは子供の心を読める

 チート能力があるのか!?


  そうなのか!?


  朝からいきなり馬鹿みたいな事を考えた。


  いや、だが奴の言うことも一理あるかもしれん。

  寝てたら折角の異世界チャンスを、

 逃してしまうことに……


  そんなことを思いながら朝食を食べ、

 結局ダラダラ過ごしていると

 昼頃、召から電話がかかってきた。


「おぉ起きてたか」


「なんだおめぇ。俺が寝てたとでも?」


  実際、寝てると同然くらいぐうたらしてた。

  うん。


「いや、すまん。

 お前ならやりかねんと思ってな」


  召は何かと図星を突いてくる。


「なぁそれより、あの話の続きしようぜ。

 高校生が1番異世界に行けるって話!」


  楽しみで舞い上がって、

 そのまま異世界に行けそうな高揚感が

 湧き出てくるような気がした。


「わかった、今から会うか?」


「おう! 場所はいつものとこで!」


  かくして、夏休み初日から

 いそいそと動く俺であった。

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