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願いが叶う島

作者: 大西洋子

「その願い、しかと聞き届けた」

珊瑚礁に囲まれた小さな島に住む精霊は、お互いの手を取り合い、共に生涯をかけて力を尽くすと誓うレグルス王子とフィリア王女を見つめる。

(……ああ、そうだ。我はこの願いを口にする者が現れるのを、ずっと待っていた)

精霊は島に僅かに生える木々に花を咲かせ、鳥達に歌を歌わせ、二人の頭上に花弁の雨を降らし祝福を与えながら、これまでの日々を思い返す。


──昔、昔、遙か昔。海を挟んで向かい合う大陸に住まうレグルス王子とフィリア王女の祖が、国を興すよりも遙か昔のこと。

(彼らが向き合う海の真ん中に、大地を求めたのが、全てのはじまりだった)

島と共に生をうけた精霊は、嵐の中漂流する彼らに、オリーブの枝を持たせた鳥を向かわせた。そうして、島に上陸した彼らに、食糧と水を与え、寒さを凌ぐための羽毛を与え、船の修繕のための資材を与えた。

(彼らは食糧を均等に分け、羽毛をつめた防寒着をこしらえ、お互いの船を修繕しあい、お互いに別れを惜しみながら、それぞれの大陸へと戻っていった)

それから数年後には、双方の大陸から島へと人が移り住み、島の中央に精霊を祀る祠が建てられた。

(やがて双方の大陸に国が生まれ、その親交はずっと続くものだと思っていた)

だが、その想いは裏切られた。島に自生する香辛料となる木々を巡って、いざこざがおこるようになったのだ。

それだけではない。彼らの祖が寒さを凌いだ羽根の持ち主の卵の色合いに魅了され、競い合うように卵を取り合った。

卵だけではない。船の修繕に与えた鉱物の鉱脈を求め、島にそびえる山々に無数の採掘場がつくられた。

(飢えから解放されたというのに、寒さから身を守る術を得たというのに、船の修繕に十分な資材を得たというのに、彼らはさらにそれらを求めた)

精霊は香辛料となる木が育つ地を切り離し、島を移動させた。

さらに、島に住まう鳥を守るため、島に住む人々の地を切り離し、鳥達と共に大海原へと移動させた。

さらに、島のにそびえる山を切り離し、島は大海原のさらに奥へ移動させた。

(それでも彼らは、我が島を探し続けた)

レグルス王子とフィリア王女の祖が興した国だけでなく、その他の国からも我が島を探す航海に出る者が続出し、 多くの者が海の藻屑と化していった。

運良く島に辿り着いた者に、精霊はその望みを叶え、また、大海原のどこかへと島を移動させ、海原を彷徨い続けた。

彷徨い、彷徨い、彷徨い…… とうとう、波間に沈むのも時間の問題となるくらい、小さくなってしまった。

(我はその時を静かに待ち構えていた。だが、島の周りに珊瑚礁が出来たとき、まだ島は消滅するときではないと、天に諭されているように感じた)

そうして、レグルス王子とフィリア王女が現れた。もう、望みの物を与えることなど出来ない我の元に現れたのだ。

「願いを叶える島に住まう精霊よ、我らの願いを聞き届けたもうれ」

──もう、我はそなたらに与える物などない。帰ってくれ。

「精霊よ、私達の祖がどんな願いをし、その願いでどのように栄えたか存じています。そして、あなた様が私達の祖に与えた物をさらに求め、お互いの国が長きにわたり憎悪を抱く原因となったことも」

──我を責めるのが?

「精霊よ、我らはあなた様に責めるつもりなど微塵もない。むしろ、あなた様にたくさんの物を授けてもらった」

──だったら何故、我の元に来た。

「我らはお互いにいがみ合うことをやめ、協力し合いながら人々が平穏に過ごせる国造りを生涯をかけて行うことを、あなた様に誓いに来たのです」

「人の心は変わりやすい。けれども、心底願うのは皆同じです。その誓いを、私達の願いを叶えていただきたいのです」

精霊はお互いの手を取り合い、見つめるレグルス王子とフィリア王女の瞳を見つめる。

(我を遣わした神が天に戻ったとき、我もそのようにすべきであったと思っていたのだが……)

長い長い漂流の日々は、彼らが訪れるのを待っていたのだと。

精霊は島中の木々と鳥達に命じます。

生きとし生けるものへの最期の願いを叶えるために。精霊の身体は大地から離れ、大気に混じり合おうとしていく。





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