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 猫の「まるちゃん」が若かった頃、まるちゃんはお母さんと二人で暮らしていました。


 まるちゃんは思います。


 お母さんと二人の時は、よくお母さんのお膝に座ってナデナデしてもらったなあ。寒い冬の夜は、お布団の中で一緒に眠ったり。

 暑い時はお風呂場に連れて行かれて猫用シャンプーでじゃぶじゃぶ洗われたりもしたっけ。お風呂場に連れて行かれるのは本当に嫌だったなあ。でも、シャンプーの後お母さんがタオルとあたたかい風でブラッシングしながら乾かしてくれて、気持ち良かった。


 まるちゃんは草原の広場でまあるくなりながら、気持ち良さそうに目を細めて、大好きな人を呼びました。


「おかあさん。」


 グルグルと喉を鳴らします。それからまた思い出しました。


 お母さんとの二人暮らしがしばらく続いて、ある日お母さんが知らない男の人を連れてきたんだよね。


 男の人は、お母さんと私のお家でお料理しに来たんだ。お台所でお母さんと楽しそうにお料理をしてた。あの日はすごくいい匂いがして。出来上がったお料理がテーブルに並べられて。すっごーくいい匂いだったから。わたし、がまんできなくって。いつもは「ダメよ」ってお母さんに言われてたけど。あんまりいい匂いだったから。


 テーブルに飛びのっちゃった!


 匂いを嗅ぐだけって思ってクンクンしてたのに。いつの間にかお肉をペロペロして、お口でくわえて食べちゃって。それで母さんも男の人もびっくりしてた。

 

 わたしもビックリ!


 お母さんにすごく怒られて。あわてておててでお顔をペロペロしたんだよね。


 お母さんと男の人は、あはははって笑ってたっけ。それから、お家にその男の人が良く遊びに来るようになって。男の人は私のお父さんになったの。二人が並んでると、わたしは必ず二人の真ん中。


 なんで真ん中かって?


 そんなの、一人しかわたしを抱っこできないなんてかわいそうでしょ?二人もいるんだからね。平等になでられるようにしてあげないとね!


 「おとおさん。」


 まるちゃんは心地好い風に合わせて、お耳をピクピク、お鼻もピクピク動かします。そしてまた思い出すのです。


 しばらく三人でのんびり暮らしていたのだけど、いつの間にか、お母さんのお腹がまあるくふくらんできたんだよね。


 お母さんのお腹がふくらんできたからわたし、お母さんのお膝に座れなくなっちゃった。大きなお腹に隠れて、お膝に座るところがなくなっちゃって、お母さんの優しいお顔がぜんぜん見えなくなっちゃって。


 しょうがないから、「ごめんなさいね!」って言いながら、お母さんのまあるい大きなお腹の一番上によじ登って、お母さんの肩におててを置いて、おでこでお母さんのあごのあたりをグッグッて。好き好きって。そうするとお母さんがギューってしてくれたの。

 

 たまにお腹の中からポコンッ!て何かが動いて、音がして、わたしほんとうにびっくりしたのよ!びっくりしちゃったけど、でも、大きなお腹に登ってるおかげで、お母さんの声もお顔もとっても近くて嬉しかったなあ。

 

 冬の寒い日だったっけ。


 あの日はお母さんがとっても苦しそうだった。お母さんは風邪かなあ?って言ってた。お家のベッドから寝たり起きたりしてた。わたしとっても心配だったよ。お母さん、猫みたいにずーっとよつんばいになって動かないんだもの。わたし、よつんばいのお母さんのお腹の下にそっと入って、ゴロゴロ喉を鳴らしていてたよ。


 「まるちゃんのゴロゴロの音、幸せな気持ちになるよ。」


って、お母さん優しい声でよく言ってくれたからね。わたしは苦しそうなお母さんに、少しでも幸せな気持ちになってほしかったの。


 夕方が夜になって。夜が朝になって。お母さん、お父さんと行っちゃった。大きな荷物を抱えて、二人で「びょういん」に行っちゃった。


***


 それからどれくらい経ったかな?わたしお家でたくさん寝たよ。寝ても起きてもお母さんはいないの。おとおさんはいたよ。次の日も、その次の日もいないの。わたしはうーんとたくさん寝て、ある日お母さんは帰ってきた。わたしくらいの、小さな小さなよく泣く赤ちゃんを抱っこして帰ってきた。


 お母さんは「まるちゃんただいま!」って言って笑ってた。私のおでこのところと、あごの気持ちいいところをナデナデしてくれた。嬉しかった!


 ニンゲンの「あかちゃん」って、わたしはじめて見たよ。なんて言ったらいいのかなあ?ねこの赤ちゃんもそうだけど、あかちゃんて、あったかくていい匂いがして。柔らかくって、何ていうか。


 お母さんが連れて来たあかちゃんは、ぴったりわたし好みの赤ちゃんだったの!




また続いてしまいました。



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