少女
退廃の王、十六夜刹那は、路地裏を出た後文句を言いながら歩いていく。
「あぁぁクソッ! めんどくせぇ! 無駄な時間を食ったじゃないか。早くコンビニで頼まれた物を買って、帰りてぇのに!」
コンビニに行く近道の路地裏を通っていたら、まさかの面倒ごとにイラつく刹那。さらには、自分を探していたと言う少女にまで出会い、どう考えても面倒事だ、怒りを口に出さずにはいられない。
「待ってください!」
「あぁん!」
先程、裏路地にいた少女が、やはり自分を追いかけ、再び声を掛けてきた。
急いで追いかけて来たのか、少女は荒い呼吸をし、深呼吸して落ち着いた後、刹那に再び、声を掛ける。
「……退廃の王、私は貴方を探していたんです。……どうか話を聞いてください!」
だが、刹那に話を聞く義理もなく、どう考えても面倒くさい話だ、イライラも合わさり、攻撃的な口調で少女に言う。
「チッ、……なんで俺がお前の話を聞かないといけねぇんだッ……」
「ッ‼…………」
少女は言葉に詰まる。
確かに退廃の王が自分の話を聞く理由はない。だが、こちらも命がかかってる。なにより、退廃の王も全く無関係と言うわけではない。ここで引いてなるものかと、少女は強気で退廃の王に話す。
「このままだと…………超能力者が全員、殺されますよ」
「あぁん……」
超能力者が全員殺される、その言葉に興味を持った刹那は、なに言ってんだ? と少女をにらみつける。
「ようやく、話を聞く気になりましたか。実は……ッ!?」
刹那が一瞬にして少女に近付き、少女の首を掴んだ。
あまりに一瞬の事で、刹那が突然目の前に現れたように見えた少女は、驚き、苦しむ。
刹那からしたら、他の超能力者が、死のうが生きようがどうでもいい。ただこのうざい少女を一生黙らせるため、息の根を止めようとする。
「はぁぁ、お前うぜぇよ。……死にな……」
少女に『退廃』を使う刹那。だが、予想外の事が起きる。
「……え……」
「はぁぁ!」
『退廃』により、風化して死ぬはずだった少女は死なず。肉体が風化する変わりに、衣服が風化して全裸になった。
「「!?」」
お互い、まさかの事態に驚き固まる。少女は全裸になった事で、刹那は自分の『退廃』が効かないことに。
驚き固まっていた少女は、我に返り、身を屈め叫ぶ。
「キッ、キャァァァァァ‼」
辺りに少女の悲鳴が響くが、刹那は動じない。裸の少女と、鋭い目付きの人相が悪い男、誰がどうみてもヤバイ絵面なのに。
「うっせー!、耳が痛いだろうがガキ。それより、なんで俺の『退廃』が効かねー」
「ガキって! 私はもう12歳です! それに、なんでッ貴方は冷静なんですか! 貴方が全裸にしたんですよ! このままだと人に見られるから貴方の家に案内してください! どうせここから近いんですよね! そこで『退廃』が効かない理由も言いますから。早くッ‼」
少女が裸のままどうなろうと、刹那としてはどうでもいいが、自分の『退廃』が効かないのは気になる。あと、自分の家が近くにあると、何故知っている。
「ハァ~。付いてこい」
ため息を吐き、自分の家に少女を案内しようとするが。
「全裸のまま付いてこいって、ふざけているんですか! この変態‼ 貴方が着ている上着を貸してくださいよ!」
普通の人なら少女に自分が着ている上着を貸すが、刹那は普通ではない。少女の文句に鼻で笑う。
「フンッ、誰もてめえのようなガキの裸に興味はねぇよ。まあ、一部の紳士は興味しんしんだろうがな! 良かったなガキ。だが、俺には関係ねぇ……、ほら、早く行くぞ」
刹那の言葉を聞いた少女は顔を真っ赤にして、大声で叫ぶ。
「そんな紳士に興味を持たれても嬉しくありません! というか私、本当に裸のまま付いて行かないといけないんですか!?」
刹那は少女の叫びを無視して振り返りもせず、歩いていく。
「待ってくださーい‼」
慌てて刹那を追いかける少女。ここに居ても、本当に紳士に会うだけだ、もはや少女には刹那を追いかける道しかなかった。
「んうぅぅ、後で覚えとってくださいよ!」
人に見られないように、物陰に隠れながら刹那の後を付いていく少女だった。
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