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≪連載版≫ 男だけど、双子の姉の身代わりに次期皇帝陛下に嫁ぎます 〜皇宮イミテーションサヴァイヴ〜  作者: ユーリ
第2部 弟だけど姉の代わりに婚約者として皇太子殿下をお支えします。
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第20話 実力が見た目通りとは限らない事はよくあるよね。

 今回の話は、エスター(エステル)の護衛騎士であるレオーネ視点になります。

「ふん!」


 私は剣をなぎ払い向かってきた敵を斬り伏せる。

 本当ならばこのまま追撃したいところだが……私は背中に気配を感じつつ敵と向かい合う。

 今は運転士を守りつつ戦っているために、彼らから距離を離すわけにはいかない。

 殿下の指示が早かったおかげもあり、先頭車両を抑えようとした敵の動きは何とか水際でくい止める事ができた。

 私は一瞬だけ反対側を守る騎士を確認する。

 ジェフリー殿とは、今までに何度かは顔合わせした事があるが、こうやって間近に彼の戦いを見るのはこれが初めてだ。


「はぁっ!」


 ジェフリー殿は二本の短剣を両手に持ち、片方の短剣で敵の攻撃を受け止めつつ相手の懐に潜り込み、もう片方の短剣で確実に仕留めていった。

 彼の戦闘スタイルは、列車内の決して広くはない空間の戦闘にも適している。

 ティベリア殿のような突き主体のスタイル、ローレンス殿のような外壁を障害ともしない馬鹿力。

 そしてカットラスを用いて狭い場所でも戦える私、おそらく殿下はわかっていて差配されたのだろう。


「やりますね、レオーネさん」


「あぁ、そちらこそなジェフリー殿」


 護衛騎士に選ばれたからとはいって、彼はまだ14歳だ。

 私はジェフリー殿に背中を預けていいか、信頼の置き所に悩んでいたのだが……。

 どうやらそれは杞憂に済んだようである。


「そんな畏まらなくても……ジェフでいいですよ、レオーネさん」


 戦いの最中だと言うのにジェフはこちらに向かってウィンクを飛ばす。

 護衛騎士の中でも一番年下に見える彼だが、そこはかとなく手慣れた感がするのは気のせいだろうか?


「それにしても、状況的に敵が魔法を使わないのは有難いですが……」


 敵が魔法を使わないのは、後部車両と違って燃料室の近いここでは爆発を起こす可能性があるからだ。

 そうなった時に巻き添えを食らうのは自分たちである。


「そうだな……しかし、このままここにとどまっていても意味はない。みな準備はいいか?」


 ジェフや運転士達は一様に頷く。


「よしっ、行くぞ!」


 私は前に出ると敵の喉元を掻き切る。

 呼吸ができなくなり苦しみだした敵兵の腹を蹴飛ばし、車両の入り口にいた兵士の方にぶつけた。


「サポートは任せてください!」


 敵をかき分け私達は車両の外に飛び出る。

 目的はただ一つ、この先頭車両から出た先にある腕木通信網を使うためだ。

 腕木通信とは、高台の建物の上に取り付けられた大きな木の腕を操作し、その情報を伝達する事ができるシステムである。

 私とジェフは味方を守りつつ追っ手を撃墜し、なんとか目的地へとたどり着いた。


「くっ! やっぱり全滅か」


 基地局の扉を開けると、中に居た通信兵達は襲撃者達によって殺されていた。

 運転士達は苦痛な表情を見せつつも気丈に耐える。

 ここで感傷に浸っている余裕はない。

 運転士達はすぐさまに操作盤の状況を確認していく。

 腕木通信は、運転士達であれば誰でも使える。

 そのためにも殿下は、たとえ戦力を分散してでも運転士の安全を確保しにいったのだ。


「ダメです、操作盤が壊されています」


 腕木通信の本体が壊されていれば不振に思うかもしれない。

 そう考えた襲撃者達は、目立たないように外にある本体は破壊せずにそのままに、中の操作盤だけを壊したのだろう。

 どちらにしろ使えなければ意味がないのだから、その選択は間違っていない。

 だがその選択は失敗だ。


「問題ありません、僕が魔法を使って操作盤を操作します」


 指先から魔法で紡がれた糸を出したジェフは、その糸の先端を壊された操作盤の隙間から、腕木通信の本体へと伸ばしていく。

 まるで本物の糸のようにしなやかなその動きに、運転士達も目を奪われていた。


「運転士の皆さん、今から僕の指先の糸がどれに繋がっているのか説明するので、どれを動かせばいいのか指示をください」


「っ、わかりました!」


 よし、こちらは問題ないだろう。

 問題は……。


「新たな敵です! くそっ、潜んでやがったか」


 外で警戒していた他の騎士が声を荒げる。

 私は騎士の一人の肩を叩く。


「お前達は入り口を守り固め中を死守しろ、外は私が一人で対応する」


 私は新たに現れた襲撃者達を迎え撃つために建物の外に出た。

 既に建物の外にはジェフによる魔法結界が張られている。

 これならば魔法によって壊される事もないだろう。

 建物の入り口も、ほかの運転士や車両内から拾ってきた騎士達が守っている。

 騎士の一人が建物の中から私に声をかけた。


「中はお任せください、どうかお気をつけて!」


 私は無言で頷くと前へと視線を戻す。

 辺りは平原、多数の敵に対し守るは私一人。

 あぁ、私にとってはもってこいの状況だ。

 感覚を研ぎ澄まし、自らの体に魔力を巡らせる。

 それに呼応するように、普段は見えない体に刻まれたタトゥーが赤く浮かび上がってきた。


「ここから先は通さんぞ」


 私の名前はレオーネ・ナイトレイ、父はカーナヴォン伯爵である。

 わたし達は今でこそ伯爵の地位を与えられているが、元々は帝国の北方に位置した部族の一つ。

 獣混じりなどと差別され蔑まれた我が民族を救ったのは、若かりし頃のサマセット公爵だった。

 公爵は私たちに地位を与え、教育を施し、そして対等に扱ってくれたのである。

 もちろんそれがただの好意や慈悲ではないのは知っているさ。

 彼は自らに利用価値がある、自分たちに有用だから私達に手を差し伸べたのだろう。

 しかし……しかしそれでも、そのおかげで我らが救われた事実は変わらない。

 故に、帝国でもない、皇族でもない、ナイトレイが忠誠を誓うのはこの世界でただ一つなのだ。


「くそっ! よりにもよって!!」


 こちらに駆けてくる襲撃者の一人が加速する。

 どうやら私が何をするのかわかっているようだが、もう遅い。

 私の筋肉質な肉体がより一層膨らむ。

 噛み締めた歯の先端はより鋭利に、眼球の瞳孔はより小さく。

 私は獣が威嚇するように、背骨から伸びてきた尻尾を振り回し、髪の上に生えた耳を前方にピンと立てた。

 これこそが私達の部族が獣混じりと蔑まれた所以である。

 私達は体に刻まれたタトゥーを媒介として魔力を捧げる代わりに、信奉する神獣様から力を得る事ができるのだ。

 

「化け物が! 誰でもいい、さっさとこいつを殺せ!!」


 そう命じた男の懐に飛び込むとその首を撥ねとばす。


「くそっ! 北部の獣混じりが!!」


 ふっ、わたしは笑みを零した。

 獣混じりとお前達が蔑むこの姿……だがな、過去に一人だけこの姿を見て美しいと言ってくれた人がいるのだ。

 まだ彼の方が幼い時だったし覚えてはいないかもしれない……いいや、覚えてはいないだろう。

 それでも私は、あの時のたった一言、その一言だけで心が救われたのだ。

 だから彼の方だけが私の事を美しいと言ってくれれば、他の誰にどう蔑まれようとも構わない。

 帝国? 皇族? それともサマセット家? そのどれもが違う。

 父がサマセット公爵に永遠の忠誠を誓うように、私はエスター様……いいや、エステル様だからこそ仕えるのだ。


「来るがよい()(とどき)(もの)どもよ、我が絶対の忠誠を見るが良い」


 そこからの事は(おぼろ)げにしか覚えてはいない。

 気がついた時には、周りには襲撃者達の死体が地面に転がっていた。


「はぁっ……はぁっ……」


 くそっ、私は右手の拳を握りしめる。

 また途中で意識を失って、過分な力に流されてしまった。

 父と違ってまだこの力がコントロールできない私は、1人で戦う時以外はこの力を使う事はできない。


「ぐはっ! ごふっ……」


 私は口の中に溜まった血を吐く。

 さすがにこれだけの人数と戦えば無傷では済まない。

 左腕は骨が折れているのか力が入らないし、体の至る所が傷だらけだ。

 ふん、我ながら情けない。

 この程度の事でふらつくなど……。


「レオーネさん!」


 後ろに倒れこんだ私の体をジェフが支える。


「……すまない、どうなった?」


「なんとか通信には成功しました。爆発の煙も確認してるでしょうし、直ぐにでも救援が来るでしょう」


 私はジェフに支えられ、一旦基地局のある建物の中へと引き上げる。

 ジェフは私の身体から離れると、顎に手を当て何かを考えているように見えた。


「……うん、何となくわかってきたかな」


 ジェフは何かに気がついたのか目を細める。


「どうした?」


「まず最初に、少なくともこいつらの目的が殿下達の殺害ではないと言う事です」


 確かにそうだと私は頷く。

 もし殿下達の命を狙うのであれば、最初の攻撃で進行方向の線路を爆撃するのではなくて、列車本体を狙えばいいだけのことである。


「しかし、その作戦が失敗した可能性もあります。だが、それならそれで遠距離から魔法を用いてボイラーを爆発させればいいのですが、襲撃者達はそうしなかった」


 幾ら魔法に対する耐性素材が用いられているからといって、幾十に重ねられた魔法を何度も防ぐのは難しい。

 室内でだって多少の魔法であれば問題ないとされているが、それでも襲撃者達は一切の魔法を使ってこなかった。


「……殿下達を殺す以外の目的があるのだろうな」


「はい、そしてこの者達はどうやら寄せ集めのようです」


「どういう事だ……?」


 ジェフはポケットの中から私もよく知っている焦げ茶色の紙切れを取り出す。


「これは……」


 独特な風合いの茶色の紙切れ、これはタバコの巻紙だ。

 何故私がこれに見覚えがあるかというと、これを作っているのが私の住んでいた北部一帯の領地で作られているものだからである。


「ええ、カーナヴォン伯爵領地でも作られている甘草の巻紙です。そして癖の強いこの紙を使うのは主に我が国の北部の人間が多いとされています」


「あぁ、それにどうやら敵は私の事を知っていたようだしな」


 カーナヴォン伯爵領地に、私の事を獣混じりなどという領民はいないだろう。

 いるとしたら北部の他の領地の者か……私の中に幾つかの貴族の顔が思い浮かぶ。

 これだけ大規模の襲撃、もはや我が国の貴族が関わってないとは言えないだろうな。


「そうなると説明がつかないのが空中にいる竜達です」


 上空を見上げるジェフの視線につられる。

 空ではウィルフレッド殿やラタが苦労しながらも戦っていた。

 流石はあの二人といったところか。

 他の竜騎士達は、竜を狂わせる異音により乗るのがやっとの状況だが、その中でもこの2人とレヨンドール様だけは何とか敵とやりあっているように見える。


「竜達は海岸のある方向からこちらに向かってきました。迂回した可能性も考えられますが、海岸には国境を隔てる壁がありません。私が他国の人間ならまずここを狙います」


 帝国が保有している竜は足裏に魔法紋が刻まれ、その全てが国によって管理されている。

 領地には定期的に視察が入り、届出をしている数と違いがあるのか、届出してある個体と違いがあるか、それらを徹底的に調査されるために、国に隠して保持するのはまず無理だ。

 そして敵が向かってきた海岸、その先にあるのは……。


「僕の予想では、彼らはおそらくクリミア公国の者でしょう」


 ジェフ曰く、空の戦闘に敗れて地上に落下してきた兵士の死体からは、証拠となるものは見つからなかったそうだ。

 しかし竜の向かってきた方向、そしてシエル様が乗車している事を考えれば一番疑わしいはクリミア公国だろう。


「では、敵の目的はシエル様か?」


 ジェフは首を横に振る。


「まだわかりません、それならば何もこのタイミングでなくても良かったはずです」


 確かにそうだ、よりによってこのタイミングで、これだけ手間をかけて狙う必要はない。

 それに我が国の貴族がクリミア公国の件に手を貸す理由も思いつかなかった。


「ともかく敵の目的はまだ不明ですが胸騒ぎがします。そういうわけなので、私は一足先に殿下の元へ戻ります」


「私も……と言いいたい所だが、これでは足手まといだろうな。すまないがエスター様達を頼む」


 私は自らの唇を噛みしめる。

 くそっ、これでは肝心な所で役に立たないではないか。

 私は自分の無力さに腹が立った。


「わかりました、あとは僕に任せてレオーネさんはここで休んでいてくださいね」


 最初は不安だったが、流石は殿下が護衛騎士に任命するだけの事はあるか……。

 年齢だけを見て判断しているようではダメだな。

 私は恥ずかしさから彼から一旦視線を外す。

 これでは私の事を獣混じりと言う者達と何ら代わりがないではないか。

 私は自嘲気味に笑みを零すと、再度ジェフの方に視線を向ける。


「……ジェフ、私の事もレオーネでいい」


 私がそう言うと、ジェフは屈託のない笑顔を返す。

 その表情は護衛騎士というよりも、ただの年相応の少年に見えた。

 ジェフは他の騎士達に私と運転士達を守るように命じると、殿下のいる車両へと向かっていく。

 その姿を見送った直後に、私は疲労からかその場で意識を失ってしまった。

 お読みいただきありがとうございました。

 一度消えて書き直しているので、内容に齟齬があるかもしれません。

 おかしなところがあったら後々修正します。

 ブクマ、評価、誤字修正等ありがとうございました。


 それと一つ問題があって、下書きに使っていたタブレットが充電できなくなったので、新しいタブレットに交換しなければいけなくなりました。

 こちらが届くのが遅れた場合、物理的に一週おやすみする事になります。

 その場合報告できるかどうか微妙なので、来週更新なかったら、あぁ、新しいタブレットがこなかったんだなって思ってください……。

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[気になる点] レオーネさんは最初の方の無理やりな入れ替わりについてどう思っているのだろうか
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