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≪連載版≫ 男だけど、双子の姉の身代わりに次期皇帝陛下に嫁ぎます 〜皇宮イミテーションサヴァイヴ〜  作者: ユーリ
第2部 弟だけど姉の代わりに婚約者として皇太子殿下をお支えします。
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第14話 男の嫉妬は見苦しいていうけど、嫉妬されたい女心。

「ドレス……これで変じゃないかしら?」


 鏡の前でクルクルと体をひねり、おかしいところがないかチェックする。

 薄いブルーのドレスは、スッキリとしたマーメイドラインでこちらの気候に合わせています。

 もう肌寒くなってきた皇都と違い、ここポートランドの首都ドーバーはとても暖かい。

 一年中温暖な気候で、この時期でも水着で過ごせるほどである。


「とっても素敵ですよ、エスター様」


「ありがとう、アマリア」


 今日のドレスとグローブは、この地域で織られた生地を使っています。

 偶然にもこのドレスを先に作っていた自分を褒めたい。

 首元から胸元にかけてはチュールで透け感を出し、ドレスの裾の部分と首元には砕いた宝石を散りばめた。

 アクセサリーの宝石を邪魔しないことは勿論の事ですが、月を彩る星空のように、身に付けた宝石を引き立てるように配置するために随分と試行錯誤したものです。

 これを作るのに結構なお金がかかりましたが、今の私にとっては問題ありません。

 なぜなら今の私には、公爵家に関係なく自分で稼いだお金があるからです。

 そもそもお金があるから、このドレスを製作したと言っても過言ではありません。


「それでは髪をセットしてもらえるかしら、ケイト?」


「おまかせください、エスター様」


 何故私にお金があるのか、それは婚約の儀にさかのぼります。

 婚約の儀の時に私が着たドレスが流行り、ヴェロニカの商会はとても潤いました。

 その中でも特別なお客様には、デザイナーであるエステルがデザインしています。

 つまりは私が空いてる時間でデザイン画を送ってるのですが、これのデザイン料が私の懐が潤った理由のまず一つ。

 そしてもう一つは、私がデザインした下着の売り上げです。

 私がデザインした下着は革命的なヒットを起こし、ヴェロニカの商会では生産が追いつかないほどでした。

 そのせいで最近はデザインを真似る所もでてきましたけどね。

 先程私が着た水着も、おそらくは下着のデザインを流用したものでしょう。

 まぁあの時は、私に余裕が無くて気がつきませんでしたが……。

 私はそれらの定期収入を更に投資しているので、今の私はそれとなりに金持ちなのです。


「御前を失礼します、エスター様」


 前に回り込んだオリアナが、私の顔に化粧を施す。

 私は基本的に今回のような晩餐会では、意識的に大人びて見えるような化粧を施している。

 化粧とドレスは女性にとっての戦闘服であるとは、言い得て妙だと思います。

 相手に舐められないためにも、年齢の若い私は多少こういう部分で上積みしないといけません。

 これが普通の令嬢が夜会に参加するのであれば、幼さを売りにするのもありでしょう。

 でもエスターは、ウィルの婚約者であり将来の皇后です。

 幼さよりも高潔さを売りにして、公的な場所では威厳を出した方が良いでしょう。

 逆にもっと少人数の場、プライベートな場面など距離感の近い場所では、自然体に近い幼さの残った感じの方が親近感を与えます。


「ありがとうケイト、オリアナ、素晴らしい仕上がりです」


 私が二人に礼を述べると、白い手袋をつけたエマが私の首にネックレスをかける。

 財産の一つである宝石の管理は、侍女の中でも最も信頼がおける者が担当する事になっています。

 ちなみに私の資産はエステルとの共同口座になっており、セドリック・スチュアートという初老の男性の侍従が管理している。

 セドリックは今回の私の旅にも同行しており、私がお金を使う際には彼を介さなければなりません。

 元は平民でありながら近衛騎士に上り詰めた方で、リッチモンド公爵の紹介で私の侍従に加わりました。


「これにて完成でございます、エスター様、ご確認のほどよろしくお願いします」


「ありがとうエマ、今日も完璧です」


 今日のアクセサリーは、パールの髪飾りとイヤリング。

 そして首元につけた、セレスティアルブルーに染めた磁器を用いたネックレスの三つ。

 ドレスの首元で周囲の砕いた宝石の微かな煌めきが、磁器の中央に配した大きなダイヤをより輝かせ、青に染めた台座がドーバーの夜空と美しい海を連想させる。

 姿見の前でもう一度全身を確認しましたが、思った通りの出来栄えです。


「エスターは準備が早いな。まだ時間はあるし、もっとゆっくりしてもいいんだぞ?」


 部屋を出るとリビングでは、一足先に準備を終えたウィルが待っていました。

 今日のウィルの格好はスーツの上から、皇族の紋章が刻まれた薄手の深紫のマントを羽織っています。

 今晩の晩餐会は比較的カジュアルなものなので、儀式的な服装や軍服を着る必要はありません。

 マントも会場となる部屋への入場退場の時のみ必要であり、それ以外の場面で使うことはないでしょう。


「それは私の優秀な侍女達のおかげですよ。褒めるならば私よりも、侍女達に労いの言葉をかけてあげてくださいませ」


「そうだな」


 私の前にたったウィルは、足のつま先から頭のてっぺんにかけて視線を動かす。

 うっ……そんなまじまじと見られると、流石にちょっと恥ずかしいんですけど……。


「なるほど……婚約の儀の時も演奏会の時も、いや、いつだって君は美しいが、今日の君にはまた違った趣の美しさがある」


 ちょっ、ちょっと、そんな真正面から褒めても何も出ませんよ!?

 わ、私はそんなにちょろくないんですから!

 私はにやけそうになる頬の筋肉を必死に抑える。


「ドーバーは人魚のお姫様の物語の舞台でもあるが、今の君をみたら人魚姫も尻尾を巻いて逃げ出すだろう」


 私の手を取ったウィルが、グローブ越しに私の手の甲に口づけを落とす。

 その行為が先ほどの海岸でのキスを思い出させ、思わず恥ずかしくなった。

 うわぁぁぁあああああ。

 みんながいたのに、なんであんな事をしてしまったんだろう。

 さっきも海岸から部屋に戻った直後に、ベッドの上で足をジタバタさせたばかりです。


「エスターの侍女たちよ。今日も私の婚約者を美しく着飾ってくれた事、感謝するぞ」


 ウィルの言葉を受け、エマ達も少し誇らしそうだ。

 ドレスは1人では着られません。

 それは他の事に関しても同じなのだと私は思う。

 私たちの仕事は一人で完結するものではなく、どの仕事にも少なからず他の人が関わっている。

 だからこそ私は、たとえウィルが遠く皇帝という立場となっても、そういった自分を支えてくれる人たちの事を思いやれる人になってほしいと思う。

 王という立場は、時として人あらざる決断を下さねばいけない時もあるでしょう。

 しかしそういった時、ウィルを人として押しとどめてくれるのは、自らの周りを支えてくれる人達なのです。

 まぁ偽の婚約者の私にとっては、出すぎた真似かもしれませんけどね。

 

「だが、そうだな……これは少し、俺以外の男性陣にもサービスしすぎではないか?」


 え?

 一歩前に距離を詰めたウィルは私の腰に手を回すと、胸元に輝くネックレスに指を置く。

 ネックレスにつけたトップが、ほんの少し私の胸の谷間に沈んだ。

 ちょ、ちょっと、あうあう、そこから先はダメですよウィルさん!?


「このドレスのデザインも、エステルがしたんだろう?」


 どこか気にくわない場所があるのでしょうか。

 婚約の儀の時のドレスも肩出しですし、そこじゃないとして……どこ?


「エステルの兄として、あいつとは少しお話ししておく必要があるな」


 うっ……。

 あまりボロは出したくないから、エステルの時には会いたくないんだけどなぁ。

 でも事あるごとにウィルはお父様を自室に呼び、エステルを連れてくるように命じた。


「え、えっとどういう……」


「わからないのか? 男が女性を巡って他の男に抱く感情など一つしかないだろう?」


 もしかして……嫉妬?

 で、でもウィルはかっこいいしそんな事心配しなくても大丈夫ですよ。

 それに私、元は男ですし……あ、でもそれは、知らなければ他の男の子には関係ないのか。

 エステルは女の子にモテなかったけど、エスターは男の子にモテたしなぁ。

 ちらりと窓ガラスを見ると、エスターにそっくりな自分の顔が映る。

 そっか、エステルの時の感覚で気がつかなったけど、エスターはモテるのか……。


「ふふん、それにしてもこれが嫉妬という奴か、初めて抱く感情だ」


 ウィルは私のネックレスから指先を外すと、自らの羽織ってたマントを外して私の肩にかける。

 すると、マントの紐をキュッと結んで胸元を隠しました。

 あっ……このチュールの部分の透け感が気になったのか……。

 でもこの地域では胸の開いたドレスが主流だし、それに比べるとマシだと思うのだけど。


「これ以上俺に嫉妬心を抱かれたくなかったら、部屋に入るまではそれを羽織っておくことだ」


「ち、ちなみに参考まで聞いておきたいのですが……嫉妬心を抱かせるとどうなるのでしょう?」


 ウィルはニッコリとほほえむ。


「そうだな……」


 手を伸ばしたウィルの指先が、私の頬をかすめる。


「男を煽るとどうなるのか……エスター、その時は君の体にちゃんと教え込む必要があるようだ」


 私のイヤリングに触れたウィルの指先から熱が伝わる。

 直接耳たぶを触れているわけではないのに、まるでウィルの掌が私の頬を優しく包み込んでいるようだ。

 それでいていつもと違うウィルの視線に、思わず体が硬直してしまった。


「……すまない、少し怖がらせてしまったみたいだな」


「あっ……」


 ウィルは手を引っ込める。

 しかし私の顔は、まだウィルの熱で火照ったままだ。

 もう! 私のバカ、馬鹿!!

 あの指先が、私の体をどう触れるのだろうと一瞬でも想像してしまった。

 そのせいで私の心臓はまだバクバクと大きな音を立てている。

 自分の心臓の鼓動があまりにも煩くて、誰にも聞かれてはいないのだろうかと心配になった。

 そんな私の状況を見たウィルは再び手を伸ばすと、私の頭の上で踏みとどまる。

 えっ? どういう事!?


「むっ、エスターを落ち着かせるために頭を撫でてやりたいが、それではせっかくのセットが崩れてしまうな」


 ほっ……。

 これ以上触れられたら……もうお嫁にいけなくなっちゃいます。


「大丈夫ですよ坊っちゃま、時間はまだありますし、セットは私達におまかせくださいませ!」


 ケイト〜!

 頼むから私に追い打ちをかけないで!!

 ウィルは思わずフラついた私の手を取り体を支える。


「おっと……やはり長旅で疲れたか?」


 いやもう長旅とかそういうのじゃなくてですね……。


「よし! 今日はこのままずっと俺が、エスターの手を握って体を支えるから、安心してもたれかかっていいんだぞ?」


 そんな破廉恥な事、できるわけないでしょう!!

 さっきの生々しい感覚がまだ体の中に残っている。

 手を握るウィルの指先の感触が、服を着ているのにそれを強く意識させた。

 丸裸にされた自分の肌を、ウィルの熱い指先が全身を触れているみたいに。


「殿下、失礼を承知で申し上げます、それ以上はエスター様が限界でございます」


 さ、さすがですエマ。

 これ以上はもう耐えられません。


「ふむ、そうだな……まだ時間がある、ソファにでも座って休んでるといい」


「は、はひ……」


 と、とんでもない目にあいました。

 ようやく解放された私はソファに腰を下ろし、胸をなでおろす。

 興味本位で下手な事は聞いてはダメなのだと、私はこの日を境に学習しました。

 お読みいただきありがとうございます。

 ブクマ、評価、感想等ありがとうございます。

 今回ちょっと短めだったかも、しかもストーリー進んでない。

 ……申し訳ありません。

 しかも来週は幕間やるかもしれない……。

 あと毎週金曜更新だけど、年末年始はちょっとどうなるかわかりません。

 遅れるか休載する時は活動報告にて記載いたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 防御力0の殴り合い、攻撃側ウィルってところでしょうか(笑) ウィルはもっとエスター(エステル)に押せ押せでいったほうがいいと思います!w 年末年始は忙しいですよね。 無理せず休む時は遠慮な…
[一言] メイド達や家族はは今の乙女なエスt……を見てどう思っているのか……
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