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二、意外と死ねないモンだね

まさか、十名も見ていただけるとは…………


では、本編どうぞ

 死に損なった。

 

 それが目が覚めたときの感想だった。

 既に自室以上に見慣れた天井は相も変わらず真っ白だ。鼻をつく消毒液の臭いもいつも通り。

 やれやれ、今回は本気で死ぬと思ったんだがな。

 

「目が覚めたようだな」

「─────ッ、ゲホッ!ゴホッ!」

 

 視界の端に出てきた赤毛に声をかけようとしたら咳が出た。つーか、全身が死ぬほど痛い。

 

「動かない方が良いぞ。お前は全身強打、骨折38ヶ所の重症だ」

「─────ゲホッ、だ、大隊長も生き残ってたんだな」

「…………戦乙女様に助けていただいた。お前も含めてあの場で生き残った者達はここに収容されている」

「そうかい…………」

 

 戦乙女。ヴァルキリーとか、俺達は女神様とか呼んでるな。

 全員が若い娘ッ子でな、どいつもこいつも美人ときてる。

 この子等だけが唯一、魔鉄ノ兵、そして魔族に対抗できる存在だ。何でも産まれたときから神様の祝福を受けてるらしくてな、超常の力を振るうんだ。

 ヤベェぞ?何回か見たことあるが、人間の胴体とおんなじ位のバカデカイハンマーで魔鉄ノ兵殴り壊してたからな。

 他にもバカデカイ剣でぶった切ったり、手からビーム撃ったり。

 酷い奴何て歌ったら、魔鉄ノ兵が砕けたからな。音痴過ぎるだろ。

 

「おい、お前」

「…………はい?」

「番号を言え」

「はあ…………雑兵番号3710ですが」

「3000番台、だと…………」

「かれこれ、5年は死にぞこなってるんでね」

 

 いや、ホント。

 俺達雑兵にはそれぞれに番号が割り振られてるのさ。だから名前はない。

 そんで番台は背中にデカデカと斜めに焼き印で捺される。超痛い。

 

 番台3000番台の生き残りは多分俺だけだな。今は若くても6000とかその辺だろ。

 え?肉壁なのに死んでないのかって?

 それは俺も不思議なんだよ。何故か死ねない。いや、別に不死身とかじゃねぇよ?

 ただ、死に損ない続けて今に至るのさ。

 お陰で俺の体はズタボロだ。

 

「─────失礼します」

 

 ボケッとしてると入ってくるのは、クリーム色の髪をした女の子。つか、顔見知りだ。

 

「よお、女神様。お久しぶり」

「ミナトさん!お怪我をされたと聞いたので…………」

「いやー、ハッハッ、怪我なんていつも通りだろ」

「戦乙女、クリーム様…………!」

「あ、はい。はじめまして、クリームです。えっと…………」

「第23代大隊長キャリコと申します!」

「キャリコさんですね。よろしくお願いします」

 

 女の子二人が居るとやっぱり騒がしいもんだな。ここは個室だが大部屋なら白い目で見られるところだ…………俺が。

 ん?ミナトは名前かって?

 俺の番号は3710番だろ?だからミナトだ。

 女神様とか、古馴染とかその辺が勝手に呼ぶだけだがな。

 

「おい、3710番」

「はい?」

「お前とクリーム様の繋がりが分からないんだが?」

「女神様とか?そうだな…………かれこれ二年、だな。相変わらず死にかけた時に助けられたのさ」

 

 な、と女神様に目を向ければ苦笑いされた。

 

「ミナトさんは無理をされる方ですから」

「それが仕事だ。無理とか無茶とか言ってたら俺達は生きてる意味がない」

「そんなことありません!!人は…………愛されるべくして、産まれてくるのですから…………」

「泣くなよ…………というか、マジで女神様泣かんでくれ、大隊長がスゴい目でこっち見てきてるから…………!」

 

 いや、ホント。なにこの目、怖。

 視線だけで魔鉄ノ兵ぶっ壊せるんじゃねぇの?

 

「3710番。傷が治りしだい、招集だ」

 

 死刑宣告キターーーーーッ!!

 

 

 ×××××

 

 

 王都。白亜の巨大な城を中心とし、その周りを城下町、城壁、街、城壁、という形となっている。

 

「…………………うっはぁ…………」

 

 街の一角、医院。ロの形をした建物の中央中庭にて、灰髪の男、ミナトは大きく伸びをする。

 祝福儀礼の医療によって骨の大半を戻され、彼はどうにか復調することができた。

 

「雑兵番号3710番!」

 

 そこにやって来るのはカッチリと軍服を着こんだ若い男。

 彼はこの王都を警備する、守護兵の一人だ。皆新緑の制服を纏い、揃いの規格帽を被っている。

 

「招聘だ!王城まで来てもらう!」

「へーい」

 

 ミナトは馴れた様子で片手をあげて、彼の後を歩んでいく。

 普通ならば雑兵の肉壁ごときが王城に呼ばれることなどありはしないが、彼は違う。

 ここ5年生き残っているしぶとい雑兵だ。覚えられていた。

 

 さて、彼等が王城に着くまでに暫くある。ここで一つこの王国について語ろうか。

 私かい?私は、そうだね…………この世界に干渉できない観客、かな。鑑賞はできるってことさ。

 

 この王国は王の一族をトップとしたカースト制度が敷かれている。

 その順番は生まれ、ではない。いや、生まれにより決まっているようにも見えるが厳密には違うのだ。

 

 『神の祝福』

 

 その度合いによって位が変わる。

 王族や戦乙女はその中でもトップクラスの祝福。最早神に愛されているレベルの祝福を受けている。

 逆に最下層である、ミナト達のような雑兵番号を刻まれた者達は神に見放されたレベルで祝福が薄い。

 そして祝福は一生を通して、変動する事はないのだ。

 この判断度合いは割りと直ぐに出来る。

 何せ王国の人間すべてに、体のどこかに印が刻まれているのだ。祝福の種類にもよるが、基本的に一人一つ。

 例外は、トップクラスの王族や戦乙女達。

 彼らは祝福が複数刻まれていることがある。

 そしてこの刻印。祝福の度合いによって濃さを変えるのだ。

 目を凝らさねば分からないほどにミナト達の刻印は薄い、逆に戦乙女や王族の刻印は光輝くんじゃないかと思えるほどに濃いのだ。

 

 どうだい?簡単な説明だが理解できたかな?

 まあ、つまりはこの世界に住む人間は祝福によって人生は変わるのさ。

 おっと、もう少し話していたいけどどうやら王城に着いたみたいだね、残念だ。

 ま、その内会えるから気にしないでね?

 

 

 ×××××

 

 

 あいっかわらず、ここは息が詰まる。

 

「ここで待て、直に戦乙女様と王様がご到着なされる」

「あいよー」

 

 いつも通り、通されたのは謁見の間だ。

 ふっかふかのレッドカーペットに、入り口扉の反対側には少し高くなった段と、その上には玉座が一対。

 王と女王の為の椅子だな。時々王子や王女が座ってるけど。

 俺?俺は立ってるよ。髭も剃らされて、髪も整えられて今は制服着せられてる。かたっくるしいから、嫌いなんだがな。

 

「王様のおなーりー!」

 

 とか、のんびりしてたら来たらしい。

 ピシッとしなきゃな。まさか戦場じゃなくて打ち首で死にたくはないし。

 

「久しいな、3710番。いや、ミナト、と呼ぶべきか」

「いえいえ、王様。私のような下賎な者はおい、とか、それで宜しいのですよ」

 

 いや、ホント。だいたいミナトってのも徒名みたいなもんだから、俺が名乗ってる訳じゃないから。

 王様に徒名呼ばせるとか、どんだけ不敬なんだよ。

 

「ふむ、では、3710番よ。此度の恩賞を貴殿にとらせよう。おい」


 恩賞、ねえ。最初はあんなに嫌だったのに、今では何とも思わねぇや。

 …………嘘です。お腹痛くなってきた。

 だいたい恩賞ッてなんだよ!死に損なっただけだから!無駄に生き残ってるだけなんだから!

 

「3710番、受け取れ」

「あ、どうも」

 

 渡されたのはボトル。中味は、酒だ。

 

「30年モノの葡萄酒だ。好きに使ってくれて構わん」

「はっ、ありがたき幸せにございます」

 

 葡萄酒か…………ま、くそな支給品よりはマシだわな。時々消毒用のアルコールでも飲んでるんじゃないかと錯覚するレベルで不味いんだよ、アレ。

 まあ、それでも酒浸りになる奴はいるがな。飲みすぎて最後には気が触れる。

 

「それから3710番」

「はい、何でしょうか?」

 

 まだ、何かあるのかよ。

 

「貴殿には暫く別任務を与える」

「………………………………はい?」

 

 

 ×××××

 

 

 くらいへやにおしこめられた

 

 へんなにおい…………さむい

 

 みんなどこ?

 

 わたしは、だれ?

 

 

 ××××××

 

 

 俺、やっぱり死ぬかもしんない。

 扉を前にして、手汗が止まらない。冷や汗が頬を伝う。

 口に溢れた生唾を飲み込んで、意を決してドアノブへと手をかけた。

 

「し、失礼しまー…………す?」

 

 中は真っ暗だ。だが、何となく気配で誰かが居ることは、分かる。

 一歩、二歩、都合3歩で俺は完全に部屋の中へと収まってしまう。

 途端に、急に扉が閉じられた。

 えっと…………確か俺は押し開けてここに入った筈だ。そして案内してくれた守護兵はこの前まで来ると速攻で帰りやがった。

 そして俺は扉を閉めてない。つまり

 

「お嬢ちゃんがやったのかい?」

 

 暗いながらも何とか振り返って声をかけてみる。

 つーか、暗いつっても窓に板張られてる訳でもないからぼんやりとは見えるんだよな。

 んで、驚いたなこいつは

 

「白い…………?」

「…………」

 

 俺の前でフリフリの白いドレスを着たお嬢ちゃん。

 彼女は、真っ白だった。

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