2話
1話と同じく回想自分語りで2話を書こうとしていましたが、残念ながら自分にはその技術がなかったようです・・・。そのうち1話も見直さないと駄目かもしれませんね。
図書館の司書であるケイシーは、目の前で絵本を読んでいる少年エドに声をかけた。
「その本は面白いですか?」
その言葉に、こちらへ顔を向けたエドは「うん!」と返事をして、再び絵本に目を向けた。
エドが今読んでいる絵本は、元は大人向けに書かれた小説を子供向けに編集しなおした創作だ。勇者の末裔が国王の命により龍の王にとらわれた姫を助けに行くという話で、最後は龍の王をも倒し、姫と結ばれる結末になっている。
原作では、国王が龍の王を討伐した後に勇者の末裔を処刑することを考えていたり、それを知った姫とその側近が国王の暗殺を計画したりするのだが、その辺は勿論子供向けの絵本には描かれていない部分だ。
作者はユージンといい、龍と勇者の話を数多く執筆している。
それはさておき、先程までケイシーはエドに時計についての説明をしていた。
というのも、開館時間にもなっていない図書館に、朝食後早々走ってきたらしいのだ。
出勤してきた際には、慌ててエドを追ってきたらしい母親が門の前で大声で叱っており、自分達に気がついた母親には騒いでいたことについて申し訳なさそうに謝られた。
さて。時計は1日で1周する、2つの環状部材を組み合わせた魔術具によって動いている。
真円の板に書かれた16等分した線の先には1から16まで数字が書かれており、日の出にはおおよそ1時、日没時にはおおよそ9時を指し示す。
そして図書館の開館は3時だが、エドは2時に来てしまっていたらしく、来てすぐに母親に捕まったようだが暫くダダをこねていたようだ。
その母親は先程帰宅した。
お昼・・・6時に一度自宅に戻る事と、暗くなる前に帰宅する事という約束をエドにさせて、一人で図書館に来ることを母親に許可してもらったのだ。
ちなみに、その仲介をしたのはケイシーではなく館長。
図書館を訪れる人がまばらになって久しいご時世、開館前に来る子供を見た館長が喜んであれこれと世話を焼いた結果である。
「図書館勤めを30年くらいやっておるが、こんなに朝早く来た子供を見たのは初めてだ」
という事らしい。
母親は、エドの年齢くらいになれば一人で遊び歩くのも普通だ、という館長の説明で一応納得したようだが、普通の子供が行く先は図書館ではなく公園や友人宅であろう。
実のところ、エドの自宅近辺には近い年齢の子供がいなかった。
そして、エドはあまり外で遊ぶことをしていなかった。
そんなエドが朝早く家を飛び出してしまったら、母親も焦るというものだろう。
母親との約束事には「家を出るときは行き先を母親に告げること」というものも含まれている。当然といえば当然であるのだが。
さて、そうして図書館に通えるようになったエドだが、目的を早々に忘れていた。
2冊目に手を出す頃には、絵本を読むことが楽しくなってしまったのだ。
彼が当初の目的を思い出すのは、10冊以上読んだ後である。