別れる理由
そんな日々を過ごして気付けば一年が過ぎようとしていた。
桜の季節。桜の蕾は今にも咲きそうになっている。
テレビのニュースでは、全国各地で開花宣言が発表されていく。
「只今、電話に出られません。発信音のあとに……」
アカリがトオルの電話に出ることはもうなかった。
自宅を訪ねても、会えなかった。
当然のように噂話にもなっていた。噂話に尾ひれが付きまくり、耳に届く話は想像を絶するものもあった。
「お前まだあの女と付き合ってんの?」
と友人から聞かれるが、トオルはいつも同じ返事しかしなかった。
「アカリは俺の彼女だよ」
と。どれだけ笑われようと後ろ指を指されようと関係ない。
「連絡も会うことも出来ないのに?」
「連絡も会うことも出来ないことが、アカリを嫌いになる理由にはならないな」
「……バカだなお前は」
友人は失笑。でも、誰かが決めることじゃない。自分たちで決めることだ。愛し続けることも、見捨てることも、全部自分で決めることだ。
だからトオルは信じる選択をする。
「愛してるよ。これからもずっと」
あの日の言葉が嘘にならないように。
ピリリリリ。
ふと、トオルのスマホが鳴った。着信画面を見ると「山本朱理」と表示されていた。
ドクン、と胸が大きく揺れた。スマホの操作を間違わないように慎重に指を滑らせる。
画面が『通話中』の表示に切り替わる。
「……もしもし」
「もしもし」
「……アカリ……か?」
聞き間違えるなんてことはなかった。
何万回と聞いたその声が、何万回と聞きたいと願った声に変わったとしても、聞き間違えることは絶対になかった。
「トオル君?」
「あぁ……俺だ」
数ヶ月ぶりに聞いた声は、一瞬で時を縮めてくれる。
「トオル君……全部終わった。完治、出来たよ」




