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使いまわしの愛
作戦は単純なものだった。
出来るだけ女性と交際経験のなさそうな男子を狙う。
交際をし、性行為を行い、愛情をもらう。
それが無駄がなく、なおかつ最速の方法だった。アカリの奇病がいつ悪化するかは分からなかったので、事は一刻を争った。出来るだけ安全そうな男選びはトオルが行った。
アカリは幸いにも、女性慣れしていない男子に好かれそうな外見をしていた。見た目だけでなく、性格も明るいほうではなかった。思春期で盛りがついた男子で、アカリの誘いを断るものはいなかった。作戦は面白いほど上手く進んだ。
だいたいの男子は、一回交わると好意を肥大化させてくれた。
行為中に甘い言葉も吐いた。本当ならトオルに使いたかった言葉は、何人もの男に使いまわした。言葉に意味は持たせないようにした。言葉を使うたびに、裏切っているような錯覚に陥る。
その度にアカリはトオルがくれた言葉を思い出していた。
そして「ごめんなさい」と呟くのだった。
誰にも聞こえない声は、中絶された命のようだった。