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一番効率の良い愛され方
二人はありとあらゆる方法を考えた。しかし、それはどれも治癒を発動する程の愛には至らなかった。
「たくさんの人に愛してもらうのって大変なんだね……。私、今まで自分の大切な人たちだけに愛してもらえればいいと思ってたの。これは他人を大切にしてこなかった罰なのかな……」
「罰なもんか。そんなこと言ったらこの世界の全員罪人になるだろ。病気になることは罰じゃない」
「……そうだね」
同情でも憐れみでも、治癒は発動しない。愛情を感じないと治癒は行われない。
二人は心理学の本も読み漁った。人が赤の他人に愛情を与えるときはどんな場合か。一般市民である自分たちに可能な範囲で活用出来る知識はないか。
そこから派生して犯罪心理学や詐欺の本にも手を伸ばした。そしてようやく一つの可能性を見つける。
『ハニートラップ』
要は性的関係を利用して相手を懐柔する色仕掛けである。
古典的な方法だが、自分たちが実践出来る中で一番可能性が高いものだった。
恋人同士である二人には、残酷な選択肢だった。これ以外の方法ももちろん探したが、二人には見つけられなかった。