声色4
すみません、作者からなんですが『』が美遙がノートに書いている文章で、「」が美遙以外の人物が喋っている言葉です!
遅れて申し訳ありません。
まるでドラマや漫画のように、ブワッと風が吹いた。2人は目があったままその場に硬直していた。
「あれ、美遙ちゃんと秋也って知り合いだっけ?まあ、とりあえず中に入ってお茶でも飲みましょ。この前ご近所さんから美味しい紅茶もらったの」
『はい!ありがとうございます』
春海さんと先生の家に入ると、ふわっと花の香りがした。ガーデニングが趣味の春海さんが育てている花だ。種類はよく分からないが、赤色、黄色、桃色、白色など言葉では表せない様な色彩を帯びている。
「さあ、どうぞ」
春海さんが持ってきた紅茶と手作りだというチョコチップが入ったスコーンの甘い香りが漂う。
『いただきます』
スコーンを1つ手に取ってほおばると、バターの香ばしい匂いとチョコの甘さが口いっぱいに広がる。
一口目を、スコーンの美味しさを閉じ込めるように飲み込んでから、アンティーク調のティーカップに手を伸ばす。ご近所さんから頂いたという紅茶はいつも飲んでいる市販の物よりも少し赤っぽい。口に含むと、深い味わいと香りが鼻腔をくすぐる。
『とっても美味しいです!』
飲食の途中で何かを書くというのは行儀が悪いのかもしれないが、この香りと味に出会えた事の喜びを春海さんに伝えたかった。
「そーお?良かったー!」
無邪気に笑う姿は、昔野菜を頂いていた頃と変わらない。確か母さんも、この笑顔が好きって言っていた。
「あ、そうだ。美遙ちゃんの部屋、秋也の隣でいい?和室なんだけど、そこが一番綺麗だし」
『ありがとうございます』
「じゃあ秋也、案内よろしくね」
「ん、分かった。じゃあ行くか」
『はい!』
私の部屋は、階段を登ってすぐの所にある和室だった。
「まあ、ここは好きに使っていいから。隣に俺いるし、何かあったら言ってよ」
『ありがとうございます!』
先生はそう言うと自分の部屋に入った。私も用意してもらった部屋に入り、一気に力が抜けたようにペタリと座りこんだ。
これからどうなって行くのか。そんな事誰にも分かるはずが無いが、まずは先生との交流を、と思いノートとペンを握りしめて隣の部屋へと向かった。