声色11
現在5時50分。私は自分の部屋で夏祭りに行く準備をしていた。
今は体操着を脱ぎ、外に出るにふさわしい服装をしている。要するにお出かけ用というものだ。上はさっきまで着ていたものだが、下に履いているのが紺色のホットパンツに変わっている。髪は兄が前にくれたゴールドのアメピンで留める。
コンコン、と部屋の扉がノックされた。
「あ、準備出来た?」
扉を開けると、そこに秋也さんが立っていた。スタイルが良いため、どんな服でも着こなせそうな雰囲気だが、まさにその通りだった。紺色のキャラクターシャツの上に白のYシャツを羽織り、七分のジーンズを履いている。スタイルは良いがそんなに背が高いというわけではないので少し子供っぽいと思われるキャラクターTシャツも難なく着こなす。
「あー、ねえ美遙ちゃんさ、ニーハイある?」
『ニーハイ?とりあえず黒でいいなら…』
「ある?良かった、それ今日履いていける?ほら、夜だし蚊に刺されたら良くないし。それに…足出しすぎ。いくらスタイルいいからってお兄ちゃん許しません!」
『はい、ちゃんと履きますお兄ちゃん!あとスタイルは良くないと思います!』
「履いたら出かけようか!あとスタイルはいいとお兄ちゃん思います!」
これまでのやり取りに「ぷふっ」と思わず吹き出してしまう。
部屋に笑い声が響く。
「ふふっ、じゃあ履けた事だし行きますか」
『行きましょ行きましょ』
遠くで祭りの声が聞こえた。