声色1
ある休日。今日は休みだからゆっくり寝ていようと思っていたのに、案外目覚めが良く、平日より早く起きてしまった。平日がこの目覚めの良さだったら…なんて心の中で自分の目覚めに文句を言いながら寝癖で明後日の方向にハネた髪をゴムで縛り、朝食の支度を始める。
トントン、と野菜を切る音やジュワーとウインナーが焼ける音。パンが焼ける音、お湯がわく音。どれも朝のBGMになりそうだ。まだあさの5時だが。
朝食を食べ終わると、家事をしてもご近所さんに迷惑にならない時間まで手が空いた。私は物書きをするので、次の作品の情報収集として書家という職業について調べて見ることにした。
「沙田秋水」さん。私が今一番好きな書家さんだ。顔は直接拝見したことは無いが、かなりのイケメンという噂である。彼の作品は筆の毛一本一本に命が宿っているかのような脈動感と繊細さが入り混じっているように感じる。細かい所にまで感情を、そして美を表現していて、鑑賞する人の心を動かす力を持っていそうな作風だ。どんどん調べていくと、今日私の家の近くで書展を開くらしい。
これは行くしかない。私は何かに心を動かされた気がした。