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変わったもの、変わらぬもの

 一ヶ月後……。


 バンッ! バンッ! バンッ!


「クライヴ! そっちに行きましたよ!」


 オーリが両手に持った拳銃で茂みの中へと発砲すると、そこから二匹のオオカミオメガが飛び出して駆け出す。


「おっしゃあ! 俺様に任せな! ……オラァ!」


 ズッドーン!!


 岩場の上で待ち構えていたクライヴがそこからオオカミオメガへ向かってジャンプし、機械のような物が装着された左手で思いっきり地面を殴る。その瞬間、殴りつけた地面が爆発して一匹のオオカミオメガが宙へと弾き飛ばされた。


「チッ、一匹は外したか……。まぁいい。こっちの方は落ちて来た所をぶん殴れば……って、なに!?」


 大きく宙へ飛んだオオカミオメガの落下ポイントで待ち構えていたクライヴの頭上に、一つの影が動いた。

 シエルだ。

 シエルがクライヴの居た岩場の上から飛んで、空中に居るオオカミオメガへ近付く。


「ナイスアシストだ」


 シエルはその腰に剣があるように手を添える姿勢をすると、攻撃の瞬間に体が微かに光り、その手に現れた剣を凄まじい速さで何度も切りつけていく。そして、剣を腰の鞘に納めるかのようにして消すと同時に、オオカミオメガの体はバラバラになった。


「テンメェー! 人の獲物をー!」


「一匹逃がしておいてよく言う。……シュウリア行ったぞ!」


「ああ! 分かってる!」


 シエルの声が聞こえると同時にオオカミオメガが俺の方へと走ってくる。俺がその場から動かず両手へ意識を集中すると、俺の体が僅かに光りその両手に短い棒のような物が現れた。


「一ヶ月前の俺だと思うなよ!」


 短い棒を持った両手を胸の前でクロスさせて構えると、その棒から赤い光が伸びて短剣のようになった。そしてオオカミオメガへ向かって駆け出す。


「うおぉぉぉぉ!」


 右手の逆手に持った赤い短剣でオオカミオメガに斬りかかると、オオカミオメガは体勢を低くしてそれをかわす。

 俺はそのまま回転して左手の逆手に持った赤い短剣を振り向き様に突き刺すように攻撃するが、オオカミオメガが今度は高くジャンプしてそれをかわした。


「くっ!」


 ジャンプしたオオカミオメガが、そこから俺に向かって落ちながら攻撃して来た。俺はまた赤い短剣を構えて待ち受ける。

 狙うはヤツの攻撃の瞬間にその首を斬り落とす!

 ……今だっ!


「おりゃーー!」


 俺の渾身の攻撃!

 だが、それはタイミングが遅れ失敗した。


「どわぁー!?」


 オオカミオメガにのし掛かられるように転倒し、オオカミオメガがそのまま俺へ噛みつこうとしてるのを何とか食い止める。

 ……何か前にもこんな状況があったな。

 しかし、これはマズイ状況だ。


「ヘ、ヘルプミ~!」


 俺が情けない声を上げると、強い衝撃の後にオオカミオメガが脇へと吹っ飛んでいく。そして横たわる俺の上を高くジャンプしている姿が見えた。


「ユユハ!」


 ユユハが大剣を片手で振り上げると、吹き飛ばされたオオカミオメガへ落ちながらその大剣を振り落とす。


 ズシャア!


 ユユハの大剣がオオカミオメガの首を切断するとオオカミオメガは動かなくなり、少し経って黒い霧へと変わり消えていった。


「……大丈夫?」


 ユユハが横になったままの俺を見下ろしながら、いつものように首をかしげる。俺もそうだが、ユユハもフォウルとの戦いで負った怪我は既に完治していた。ここの治療はなかなか凄い。


「ああ。助かったよユユハ。サンキュー」


 俺が体を起こして礼を言っている時に、何処からともなくフォウルが飛んできた。


「まだまだだな、シュウリア。もっと励むがよい」


「はい。すいません……」


 この一ヶ月で多少は戦闘レベルが上がったと思いたいが、そんなに変わってない気もして少しガッカリする。

 まぁ、まずはストックを覚えようとそればっかりやっていたから無理もないかもしれないけど……。


「でも、ストックはマスターしたみたいですから凄いですよ」


 そう言いながら奥からオーリが笑顔で歩いてくる。

 相変わらず良いヤツだなぁ。


「あまり甘やかすなオーリ。俺達に一番必要なのは戦闘レベルなんだからな」


 オーリの隣で歩いているシエルが溜め息混じりで冷たく良い放つ。それはごもっともな話だから俺はまたガックリとする。


 カーン。コーン。キーン。


 そんなやり取りをしていると、何処からかチャイムが鳴り響いた。どうやら今日の訓練は終了らしい。


「もう終わりかよ! まだまだやれるってのに! ……ま、今日の俺様の活躍で俺様はランクアップしただろうな」


 クライヴがクックックッと笑いながら出口へと歩いていくと、俺達もそれに続いて行く。

 俺達が今居る所は『エボルヴ』内にある広大な訓練所という場所だ。森や高い崖や川などが設置されていて、何処からか捕まえて来たオメガも放し飼いにされているちょっと危険な場所だ。

 だから訓練の時は、基本的にグループで行動するように言われている為にこのメンバーで行動していた。他のグループも大体俺達みたいに最初集められた人達でグループを組んでいるようだ。

 因みにクライヴが言っていたランクアップというのは、別の場所で訓練を見ているアンナ教官が自身の独断で訓練生達の強さをランキング化しているモノの事だ。そういうのがあれば訓練にも力が入るのではないかという事で、一位は食費が免除になるらしい。


「俺はランクアップしてるのかな……」


「心配すんなって! ランクダウンする事はないんだからよ」


 俺の呟きにクライヴが笑いながら俺の肩をバンバン叩いてくる。

 そう、とりあえず俺はランクダウンの心配はない。何故なら俺こそが不動の最下位なのだから……。

 そして、訓練所を出て少し歩いた通路の途中で人だかりが出来ている。俺達と同期の訓練生達だ。そこにあるモニターにランキングが表示されるから、恐らく皆ランキングが気になっているんだろう。

 俺達もその人だかりに紛れてモニターを見てみる。すると、今回の訓練結果を加えた最新ランキングが表示されて、小さな歓声が上がった。


 一位 ユユハ・フローレス

 二位 シエル・エル・ラディック

 三位 ジェイク・ブラッド

 四位 ルティア・アーヴィング

 五位 オーリ・ベルシュール

,六位 クライヴ・ダース

 ……

 二十六位 ナイマン・フォース

 二十七位(最下位) シュウリア・ストレイヴ


 ぐふっ。やっぱり俺は不動の最下位だったか……。

 皆が色々騒いでる中で一人の訓練生が俺の元へ来て手を握る。


「シュウリア君のおかげで僕また最下位じゃなかったっす! ありがとうっす!」


 ランキングが始まって、常に俺の一つ上にいるナイマンが笑顔で手を振りながら言う。


「ハハ……。次は二人とも上に行けるように頑張ろうな。マイナン!」


「ナイマンっす!」


「くっそー! 俺全然変わってねーじゃねーか! 先生ちゃんと見てんのか!?」


「まぁまぁ。六位って凄い事だと思いますよ。クライヴ」


「オーリてめぇ! 俺の上に居るヤツに言われたくねーよ!」


「でも、一位はまたユユハさんなのね~」


「アイツ、ランキング始まってからずっと一位じゃねえ?」


 そう。ユユハはランキングが始まってから俺とは真逆の一位を貫き通している。確かに訓練でも相変わらず強いが、恐らくドラゴンオメガを倒した実績が高く評価されているんだろう。という事は、この一位の座を狙うのはかなり難しい気がする。


「二位も変わらずシエル君ね~」


「キャー! シエル様すごーい!」


「アイツ無口だけどやっぱ凄いんだな。一位も無口なヤツだし…… 俺も無口になればランクアップするかな?」


「そんなわけないだろ!」


 シエルもずっと二位のままだ。ランキングには関係ないけど、シエルは淡麗な顔立ちとミステリアスな雰囲気とその強さで女子達には人気があるらしい。当の本人は人気にもランキングにも興味がない様子だけど。


「おい! スカシエル! てめー、俺よりちょっとランクが上だからっていい気になるなよ!」


 クライヴがシエルに噛みついていく。因みにスカシエルっていうのは、スカし野郎とシエルをくっ付けてクライヴが呼んでいる名前だ。


「こんなのは教官のお遊びみたいなものだろう? あまり真に受けるな」


「お遊びでも何でもテメーの下ってのは我慢できねぇー!」


「ふぅ……。やれやれ……」


 相変わらずの二人を見ていると、俺以外にも二人を見ている人物が居た。

 ルティア・アーヴィングだ。

 よく見ると二人っていうよりシエルを見てるような気もする。そんな俺の視線に気づいたルティアと目が合うが、彼女はプイッとそっぽを向いた。

 ……あの子も相変わらずみたいだな……。

 しかし、オーリとクライヴを抑えて四位に入ってるって事は、その戦闘レベルは思った以上に高いらしい。


「そして最下位は相変わらずのシュウリア君なのね~」


「あの人ドラゴンオメガと契約してるのに何で最下位なの?」


「いや~。とりあえず不動の最下位がいるっていうのはちょっと安心するな~」


 まったく……。

 皆好き勝手言ってくれちゃってるなぁ。

 まぁ、これは正当な評価だから文句なんて無いんだけども。それに最下位のペナルティーというモノも特に無いし。

 暫くモニターの前で話しをしていると、そこにいた訓練生達が徐々にその場を離れて行く。さっきのチャイムで今日の俺達の訓練は終了して自由時間になったから、これからは皆自由に行動するんだろう。

 すると、俺の服がグイグイと引っ張られる。その方を見ると、それはユユハだった。


「お腹空いた……」


「そうだな。それじゃあシャワー浴びてからご飯にしようか。お前達も一緒に食べようぜ」


 オーリ、クライヴ、シエルにも声をかけて皆頷く。

 それからシャワールームへ向かっていると、前からルティアとその取り巻きが歩いていきた。


「ん? あんた達もシャワーなの?」


「ああ」


「ふーん。それじゃあ一緒に入りましょう」


「へ?」


 一緒に入りましょう……。

 いっしょにはいりましょう……?

 イッショニハイリマショウ……??


「い、一緒に入りましょうって…… 俺達と?」


「あんたじゃないわよ! ユユハに言ってんの!」


 ああ、そうか。そりゃそうだよな……。びっくらこいた……。


「うん……」


 ユユハは頷くと、フォウルを抱えてルティアの方へと歩いていく。シャワーの時はフォウルはいつもユユハと一緒だ。


「フォウルをちゃんとキレイにしてくれよ」


「我が汚いみたいな言い方をするな!」


 俺の言葉にユユハは頷き、ルティア達と一緒に女子用のシャワールームへと入っていく。

 エボルヴでは訓練生の部屋が二人一部屋になっていて、フォウルにユユハと一緒に居ろと言われてはいるが、流石にそれは無理だったからユユハはルティアとルームシェアをしている。意外と仲は良いようだ。

 因みに俺達の場合は俺とシエル、オーリとクライヴでルームシェアをしている。


「ずっと疑問に思っているんだが……」


 俺の後ろにいたシエルが突然そんな事を口走る。


「ん? どうしたんだ?」


「フォウルは…… メス…… なのか?」


「フォウル?」


 そういえばアイツの性別は全くの不明だ。いつもユユハと一緒にシャワールームへ入って行くが…… そもそも性別なんてあるのかな?


「うーん……。俺もよく分からないんだよな~」


「そうか……。まぁ、少し気になっただけなんだけどな」


「そんな事よりさっさとシャワー浴びちまおうぜ。腹がへって来たぜ」


 クライヴに促されて、俺達も男子用のシャワールームへと入って行った。






 だいたい二十分後……。


 シャワーを終えた俺達はゾロゾロとシャワールームから出て行く。


「ふぅ~。訓練した後のシャワーは最高だぜ~」


「ええ、汗を流すとサッパリしますね」


 俺達はさっきまで着ていた制服ではなく、普段着に着替えていた。因みに着替えはどこから出てきたかというと、事前にストックしていたのだ。制服は洗濯箱へおいて置けば翌日洗濯済みで戻ってくる。しかし、こういう時にストックは便利だなぁとしみじみ思う。


「まだユユハは来ていないようだな」


 肩に掛けたタオルで頭を拭きながらシエルが言う。


「ったく。女子は長いから嫌になるぜ。腹が減ってるっていうのによ」


「俺が待ってるから先に行って食べてていいよ。その代わり、席の確保はヨロシク~」


「分かったよ。んじゃ先に行かせてもらうぜ。オーリ、行くぞ」


「え? 僕もですか?」


「俺一人で席を確保すんのは面倒なんだよ。いいから行くぞ」


「分かりました。それじゃ申し訳ありませんがお先に行かせてもらいますね」


「ああ。構わないよ。シエルは?」


「あっちは二人いれば十分だろう。少し熱も冷ましたいから俺もここで待ってるよ」


 そうしてクライヴとオーリは食堂の方へと歩いて行った。俺とシエルはシャワールームの近くの壁に寄っ掛かってユユハを待つ事にした。

 それから少し経つと、女子用のシャワールームから声が聞こえて来てユユハとルティア一行が出てきた。


「おっ! 出てきたな!」


「お待たせ……」


 ユユハも普段着に着替えて俺達の方へと歩いてくる。その後ろからフォウルも飛んで来た。


「ふぅ~。湯に浸かるというのはやはり悪くはないな」


 満足そうな顔をするフォウル。前にユユハから聞いたが、フォウルは体が小さいからお湯を入れた桶の中に入っているらしい。


「それじゃあユユハ、また後でね」


「バイバ~イ、ユユハ」


「じゃあね~、フォウル」


 ルティアがそう言うと取り巻きの女子も手を振り一緒に食堂の方へと歩いて行く。するとその後に、小さいロケットが落ちていたのにシエルが気付いた。


「おい。ちょっと待て」


「え?」


 ルティア達を制止させると床に落ちていたロケットを拾い上げる。


「これを落としたようだが」


「あ……!」


 ルティアが小さく声を上げると、急ぎ足でシエルの方へと戻ってくる。


「大切なものなのだろう? 気をつけた方が良い」


 シエルがそう言ってルティアへロケットを渡した。

 大切なものって…… 俺は初めて見た気がするけど、シエルはそのロケットの事を知ってるような口ぶりだ。


「ありがとうございます…… シエル様。いえ、シエル…… さん」


「ああ」


 ロケットを手渡したシエルはそれ以上なにも言わず俺達の方へ戻ってくる。ルティアは少しシエルを見つめた後、取り巻き達と一緒に再び食堂へと向かっていった。

 ……聞き間違いかな?

 さっきシエル様って言ってなかったか?

 もしかしてルティアもシエルファンなのか?


「しかし、あのロケットが大切なものだってよく知ってたな?」


「前に大事そうにしていたのを見たことがあったからな。そうだと思っただけだ」


「ふーん。まぁいいか。よし! 俺達も食堂に行こうぜ!」


「ああ」


 俺達も食堂へ向かって歩き出し、それか、少し経って食堂に到着した。そして各自注文を受け取ったあと、クライヴとオーリに合流した。


「おう! モグモグ…… ようやく来たのか。遅かったな」


 結構な量の半分くらいを平らげているクライヴが顔を上げる。すると、その開いてる前の席の上にクライヴの量を遥かに超える量の料理が乗ったトレイがドンと置かれる。もちろんユユハだ。


「……相変わらず、スゲー量だなオイ……」


 今回は肉に魚に肉に寿司に肉にピザにクレープ数種類にプリンだ。相変わらず肉の多さに驚くが、この食堂のバリエーションにも驚かされる。


「ユユハは沢山食べますから、ランキング一位の食費免除はありがたいですね」


「うん……。いただきます……」


 ユユハは手を合わせると無言でパクパクと食べ始めた。こんな量がこの小さい体の何処に入るんだか……。俺はユユハの隣に座り、俺の隣にシエルが座る。そして俺とユユハの間のテーブルの上にフォウルが座った。


「さて、それでは我はダブルチーズバーガーとやらをいただくか。これは中々のボリュームだ」


 どうもフォウルはハンバーガーが好きならしい。大体はハンバーガーを食べている気がする……。


 それから大体二十分後……。


「ふぅ~。もうお腹一杯だ~」


 少し多めに注文した為に、満腹度が限界突破したようでちょっとキツい……。

 オーリとクライヴとシエルは既に食べ終えていて、オーリは何かの勉強、クライヴは食堂内にあるテレビを見ていて、シエルは読書をしている。ユユハは既にメインを食べ終えていて、フォウルと一緒にクレープを仲良く食べていた。

 すると、俺達の元へアンナ教官がやって来た。


「やっほー! 皆、調子はどうかしら?」


「あぁ! 先生! なんだよあのランキングはよぉ!? 俺はもっと上じゃねぇ?」


「ランキングに関しては一切おこたえ致しませーん!」


「おいおい~、そりゃないぜ先生!」


「おこたえ致しませーん! ……しかし、こうやって見ると、このグループは結構凄いわね~。皆ランキング上位者じゃない!」


 ウンウンと頷きながら俺達を見渡すアンナ教官。

 しかし、『皆』ランキング上位者なんて……。


「あのー、『皆』じゃないと思いますけどー」


 俺は少し嫌みったらしく手を上げながらアンナ教官に指摘する。


「もう、そんな顔しないの! シュウリアはイザとなったらフォウルの力を借りられるじゃない」


 うーん。だったらそこも評価に入れて欲しいところなんだけどな。第一、フォウルは今のところ力を貸す気はないらしい。


「冗談ですよ。俺の場合はあのランキングで合ってると思ってますから」


「うんうん。それでこそ最年長者。大人の考えよ」


「それで、一体どうしたんですか?」


「あなた達は明日は休日でしょ? 悪いんだけど、私に付き合って欲しいのよ」


「付き合う? 何処かに行くのか?」


 読書をしていたシエルが本をパタンと閉じるとアンナ教官に問い掛ける。


「ええ。ちょっとオメガを捕まえにね」


「……オメガを?」


「訓練所用のオメガよ。訓練所のオメガの数が減ってきたからその補充をね。微々たるものだけど、世界に溢れるオメガの数を減らすのも兼ねて。ただ今回ちょっと人手が足りないから、それに協力して欲しいの」


 へぇー。あそこのオメガは捕まえたのを放っているのか。

 それはそれで大変そうだな……。


「俺は構わないぜ! オメガと戦う機会もありそうだしな!」


「俺も構わない」


「僕も大丈夫ですよ」


「俺はあまり役に立ちそうにないんですが……」


 皆がやる気の中、俺はどうすればいいか悩む。


「大丈夫よ。強いオメガを捕まえに行くわけでもないし、この子達もいるし私もいるし。良い経験になるわよ。……因みにユユハは?」


「……シュウリアが行くなら……」


 フォウルと一緒にプリンを食べながらユユハはこたえた。


「ほら決まり! あなたも来なさいシュウリア!」


「は、はぁ。アンナ教官がそう言うのなら俺は構いませんが……」


「なーに、俺様に任せておけば、お前の出番なんてねーから安心しろって」


 クライヴが得意気に笑いながら俺に言う。まぁ、このメンツなら本当に俺の出番はなさそうな気がする。


「それじゃあ、明日の朝十時にエントランスホールに集合しましょう」


「分かりました。あの、ちなみに何処に捕まえに行くんですか?」


 オーリが手を挙げてアンナ教官に質問する。それは俺も聞きたいところだ。


「ここからちょっと行った所に、オメガがうようよ居る良い場所があるのよ」


「ほう。そんな場所があるのか……」


「ええ。『ライールの樹海』と呼ばれる場所よ♪」


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