水の都サミュル
列車から降りた私達はすぐに驚愕した。小さい村で育ったから人の多さに腰を抜かしそうだった。レオはというと更に興奮している様子。
「す、すごい人の数……それに広いから迷子にならないように気をつけなきゃね」
「それより腹減った!なんか食べようぜ」
確かにさっきからレオのお腹が鳴ってうるさかった。でもここは広い、店を探すのは難しい。それにしてもさすが水の都と呼ばれる街だ。至るところに水のアートがある。例えば地面から水が出てそれがまるで意思を持つかのようにくねくね曲がる。ハート型になったり、星型になったり色々だ。
「食べるって言ってもなぁ…え、きゃあっ」
突然の地面の揺れで私はバランスを崩しそうになった。何事かと思っていると近くから悲鳴が聞こえてきた。
「に、逃げろー!!」
悲鳴が聞こえた方向から人が慌てて逃げてきた。一人か二人じゃない、何十人が転びながらも無我夢中で逃げる。
「おい待てよオッサン、何があった。詳しく聞かせやがれ」
レオが逃げてきたおじさんを捕まえた。少し強引な気もするけど今はそんな事言えない。非常事態なんだ。
「な、なんだお前たちは!」
「私達はナチュラルです。もしかしてアンナチュナルが出たんですか?」
アンナチュナルは殺戮機械。人が多い所を好み、いきなり出現する。どこで作られたのか、どんな仕組みで動いているのかは未だ分かっていない。
「な、ナチュラルだと?こんな子供が……お前達の言う通りだ…アンナチュナルが出た。少し前から頻繁に現れるようになったんだ」
おじさんは私達がナチュラルだと分かると話してくれた。おじさんの話だとここ最近でサミュルに現れるアンナチュナルの数が数倍になったらしい。
「ま、詳しい話は分かんねぇけど今はアンナチュナルを倒す方が先だよな」
そうだ。こうしてる間にも人が殺されてる…私達はナチュラル、アンナチュナルを倒せる唯一の存在。だからここの人達を助けなきゃ
「うん!ありがとうございました、あなたも早く逃げて下さい。アンナチュナルは私達が倒しますから」
「き、君達、待ちなさい」
おじさんが何か言おうとしてたけど今は急がなきゃ。一人でも多くの命を救うんだ。
逃げてきた人達の方向に急ぐと辺り一面が真っ赤に変色していた。そして地面に横たわる人。その中には女の人や年寄り、子供までいる。もう生きてはいないようだ。
「…チッ。何人の人を喰ったんだ」
数えてもきりがない。死体は様々で首を切り落とされた人や臓器を喰われた人、上半身と下半身をまっ二つにされた人。これで何人の人が亡くなったのか分からない。
「……アンナチュナルに殺された人達の為にも絶対に倒そう」
幾つもの死体が横たわる中、その中心にアンナチュナルはいた。アンナチュナルはその正体、構造は不明で何故人を襲うのか分かっていない。それに同じ型のものは無く、様々な型をしている。今、目の前にいるアンナチュナルはいも虫のような型をしていた。
「うしっ、行くぜっ!…求めるは力っ、全身全霊をかけてアイツを倒せ!出て来いクロ」
レオが言霊を唱えると足元に魔法陣ができる。そこから契約した魔獣を呼び出し戦う。そしてレオの契約した魔獣がでてきた。
『…噛み砕く』
レオの魔獣は虎。白の毛並みに黒い毛並み。立派な牙。大きさは大体十メートルぐらい。その大きさと牙でアンナチュナルを叩き潰し、噛み砕く。
「リディアは魔獣出すなよな、俺達だけで充分だぜ!行くぞ、クロっ……アタックだ!」
『……承知』
出た、クロのアタック。巨大な体でアタックされたらアンナチュナルだって吹っ飛ぶ筈。
「…あれ?」
いつの間にか私の後ろに女の子が立っていた。逃げる様子もなく、ただじっとクロを見つめている。そんな時だった。
「く、クロー!」
レオの叫びが聞こえた。女の子からレオへ目線を変えると地面へ横たわるクロの姿。一方、アンナチュナルは傷一つ付いてない。
「………あんな攻撃じゃ奴は倒せない。どうやら私の出番のようね」
女の子はゆっくりと歩き出し私の隣で止まる。この時私は気付いた。この子は私達と同じ赤色の制服を身に纏っていた。




