実力
何故かお爺さんと戦う事になった。私達は魔獣を出して戦っていいらしいけど、簡単に勝敗がついてしまう。
「ははっ、本当に魔獣を出していいんだなじいさん」
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。構わんよぉ、いいハンデじゃ」
お爺さんの言葉に怒ったレオ。魔獣を出して攻撃を仕掛ける。
「行け、虎!」
『承知………む?』
虎が攻撃しようとした瞬間にはもうお爺さんの姿はなかった。そしてあの一瞬でレオの首筋に短剣を突き付けていたのだ。
「うぐっ!」
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。これが本当の戦いならお前さんはとっくに命を落としておったぞ」
お爺さんの言う通りだ。もし、アンナチュナルとの戦いで動きが早く、人間程の頭の良さを持つアンナチュナルならもうレオは死んでいた。
「やるね、あのお爺さん」
マナも関心していた。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。なにもアンナチュナルが相手とは言ってないがのぉ」
お爺さんの言葉にドキッとしてしまう。前もそうだけど心が読めてしまうのだろうか?
「…どういう事だ、それ」
解放されたレオが言う。レオは汗だくで疲労が溜まっているようだ。
「お主達も存在は知っておる筈じゃ…吸血鬼という化けもんを」
そう。突如アンナチュナルと共に人間を襲った吸血鬼。人間の血を吸う事からそんな名前が付けられた。吸血鬼を見た者はほとんど居ない。
「吸血鬼……見た目は人間だけど実態は血を吸う悪魔。吸血鬼を見た事がある人は、吸血鬼の目は血のように紅いって言ったらしいよね」
マナの言葉に私は思わず自分の目を触る。私の目は紅いから。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。そこのお前さん」
お爺さんは私を見て言う。人の心が読めるお爺さんは何を言おうとしているのか、不安になった。
「ワシの言った事で気分を悪くさせたらすまんのぉ…確かにお主の目は紅いがその目からは殺意を感じん。それどころか優しさを感じる。これから目の事で忌み嫌われるかもしれんが、その優しさを見失ってはいかんよぉ」
涙が出そうだった。私はこの紅い目と記憶が無い事で感情を無くしていた。そんな私に優しさと愛情をもって育ててくれた人がいる。例え忌み嫌われたって私は私で居ればいいんだ。
「…リディア」
レオが優しく肩を叩く。泣きたかったけど今は我慢した。
「お爺さん、凄いナチュラルだったんでしょ?吸血鬼と戦った事があるの?」
「…うむ。ワシがまだ現役だった頃に一度だけある…とても強大な力だった……その吸血鬼にこの傷を負わされた時は死ぬかと思ったがのぉ」
お爺さんは服を捲る。
「えっ…」
「ひ、酷い」
「…これが吸血鬼の力なのかよ」
お爺さんの服の下は凄まじい傷痕が残っていた。胸からヘソまでに大きな手術した痕。それは吸血鬼と戦った証拠だった。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。臆する事は無いぞ。ワシもやられるばかりじゃないわい…これは、吸血鬼から奪った物じゃ」
そう言って腰に掛けてた剣を取り出す。鞘に納められている。ずいぶん古い物らしく、傷が目立つ。だけど私はその剣に少し見覚えがあった。
「吸血鬼から奪ったって…すっげー!吸血鬼ってこんな剣を持ってるのかよ!なぁ、触らせてくれないか?」
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。よいぞ」
剣を手にしたレオはキラキラと子供のように目を輝かせていた。そんな中、私は考えていた。何故あの剣に見覚えがあるのかを。
「っと、やべっ!落としちまった。リディア、取ってくんねぇか!!」
「ちょっと、もっと大切せつに扱いなさいよ」
鞘に入ってない剣が目の前にある。全く、レオったら人の大切な物を雑に…しょうがないな 。少し甘いかなと思いながらしゃがみ、剣を掴もうとする。すると、
━━━━━━━━トッテハ、ダメ
そんな声が聞こえた気がした。それに私もこの剣を取ってはいけない気がする。




