one afternoon
私は葉ばかりの桜の並木道を歩く
わさわさ生い重なる濃い緑の葉は降り注ぐ日差しを抱きとめるから
道はひんやりとして心地よい
桜の幹に寄り添う紫陽花は薄れゆく花色を悲しむかのように俯いている
美容室帰りの私の髪を大人しい風がふわっと揺らせば
桜の葉 紫陽花の葉 つつじの葉 ひまわりの葉
それぞれの葉の緑の濃淡が瞳の中に押し寄せてくる
日差しが緑をこんなに鮮やかに染め上げるのは
太陽が緑を愛してしまったから
緑が太陽の愛を享け入れてしまったから
それなら私は両方に恋をして
今だけはこの自然のハーモニーの中に溶けてしまおう
去ってゆく紫陽花の花は不意に回りだす”さようなら また来年会いましょう”
それぞれの花たちは口々にそう言い合っているのだろうか
私は葉ばかりの桜の並木道を歩く
美容室でのマッサージが効いたのか緑の神秘の力なのか
からだはすっきり軽くなり青蛙になって跳ねてみたくなる
ある日の午後ーー