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夜
…最悪だ。
擦り合わせた歯がギリ、と鳴った。
暗い部屋の中でひどく響いた。
月明かりさえ入らない廃墟は、自らの輪郭と黒く溶け合う。
この胸に今あるもの、それは安堵と美しさだ。
だがしかし、胸くそ悪いこの事実がある。
…勝手なことをしてくれるな、また歯を鳴らした。
似合わないからやめなさい、
そう言って何度自分の行動を咎められただろう。
堪らず俯けば、汚れていない靴の爪先があった。
誰も自分の顔を選べない。
誰も親を選べない。
誰もが、与えられるだけだ。
ニュースを告げる電子音。
低俗な娯楽番組。
チカチカと、点いては消える緑色の街灯。
…眩しいものは、嫌い、だ。
光に怯え続ける光。