峠道
掲載日:2026/02/02
仕事帰り、バイクで峠を登りきった。
その瞬間、目の前に黄色く輝く月が現れた。
いつもは闇に沈む先まで、道は静かに照らされ、
ヘルメットの中で、息が少しだけ軽くなった。
何が変わったわけでもない。
ただ、進んでいい気がした。
新月の夜は、心まで暗くなる。
バイクのヘッドライトは足元しか照らさず、
道の先は闇に溶けていた。
夜は広がり、
何かが起きる気配だけが、不安としてついてくる。
いつも変わらない通勤ルート。
けれど帰り道は、月の形ひとつで別の顔を見せる。
誰にも語られない、日々のちっぽけな冒険。




