七夕みたいな恋したい
「七夕って良いよな」
「突然何言ってんのよ」
幼馴染未満の腐れ縁、小、中、高となぜか一緒の大河。背も高いし見た目は贔屓目なしにまあまあ整っているから、そこそこ女子人気はあるが、デリカシー皆無だから話さなければ、という条件付きである。
そんな大河でもロマンチックな憧れがあったなんて――――正直意外だ。
「でもさ、滅多に会えないんだよ?」
年に一度しか会えないなんて辛すぎる。まあ、今の時代なら直接会えなくてもなんとでもなるけれども。
「まあな、でも――――滅多にないからこそ価値があるっていうか嬉しいじゃん」
「ふーん……まあ、わからなくはないけど」
なるほど、大河が私にあまり興味を示さないのはあまりにも近すぎるからってことか。
「ねえ大河、もし私が遠くに引越しするって言ったらどうする?」
「はあ? なんだよ突然」
「いいから答えなさいよ」
「はあ……そうだな、まあ……姫花が居なくなったら……ちょっと寂しいかな」
「ちょっと?」
「……まあ……それなりには」
あれ? 思ったよりも効いてる?
「そっかあ、そんなに寂しいんなら年に一度くらいなら会いに来なさいよ」
「それはちょっと面倒くさいかな」
「……殴るわよ」
なんだこいつ、七夕に憧れてるくせに行動力ゼロかよ、なんてワガママな奴だ。
「なら、私が会いに来てあげてもいいけど」
「っ!? って、おい、マジで引越すのかよ?」
ふふ、そんなに慌てちゃって……可愛いところあるじゃない。
「そんなわけないでしょ、でも――――大河に遠距離恋愛は無理みたいね」
「遠距離恋愛? 何の話だ?」
「はあ? だって七夕に憧れてるんでしょ?」
「お前性格だけじゃなくて耳まで悪いんだな、俺は――――たなぼたって良いよな、って言ったんだが」
「なによ、たなぼたって!! 七夕当日に紛らわしいこと言わないでよ、餅のどに詰まらせて死ね!!」
本当に最っ低!! だいたい性格ならあんたの方が悪いでしょうが!!
「ははは、まあまあ、そんなに怒るなよ、かわいい顔が台無しだぞ」
もう、そういうところが、もうっ!!
「……今日、河川敷で七夕イベントやってるんだって、連れてってくれるなら許してあげる」
「どうせ七夕限定短冊すあまが目当てなんだろ? お前昔っから、すあま好きだもんな」
……バレてる。
「……たなぼたでかわいい彼女がゲット出来るかもしれないよ」
「……なら、仕方ないな、たなぼたは逃せないし」
そ、それって……私と付き合いたいってことだよね?
「す、すあまは、その場で食べる用とお持ち帰り用買うんだからね」
「へいへい、織姫さまがお太りにならないように俺も食べるのお手伝いしますよ」
――――大河の鳩尾に拳が叩き込まれた。
「おおっ!! 結構本格的なんだな」
「うん、そうだね」
七夕イベントは大盛況、ライトアップされた数百の笹に数えきれないほどの短冊が揺れている。あれ全部に皆の願いが書かれているんだよね。なんだか不思議な気分。
「ねえ……大河は短冊に何て書いたの?」
「え? 一億入ったカバン拾いますようにって」
「たなぼた狙いにも程があるでしょうが!! そこは可愛い彼女が出来ますようにって書きなさいよ」
「ん? だって姫花が彼女になってくれるんだろ? なら書く必要ないじゃん」
「ば、馬鹿じゃないの? そんなこと言ってないし!! で、でも――――どうしてもっていうならなってあげても良いよ――――彼女」
「じゃあ決まりな」
ノリが軽い!! 嬉しいけど!! 嬉しいけど、なんか私だけ意識してるみたいで悔しい。
「姫花はなんて書いたんだ?」
「私のは別にいいでしょ」
「なんだよ俺だけ教えたら不公平だろ――――へえ……好きな人とずっと一緒に居られますように――――って、見かけによらず乙女なところあるんだな」
「な、何勝手に見てんのよ!?」
「――――書かなくて良い」
「――――え?」
「俺はずっとお前の側に居るから――――だから書かなくて良い」
「…………大河」
ヤバい……なんか今日の大河――――ちょっとカッコイイ――――かも。
「そんなのより宝くじ三億円当たりますようにって書いとけ」
「前言撤回――――!!!!」
まったく……そういうところだぞ。
どうせ私くらいしか好きになってあげないんだから――――絶対離れるなよ、バカ大河。
見渡せば幸せそうなカップルだらけ。
見上げれば満天の星空が広がっている――――
私たちも――――ちゃんと恋人同士に見えるのかな――――?
「ね、手繋いでいい?」
「すあまの粉が付いてるから手洗って来い」
大河の制服で思い切り手を拭いてやった。