第9話 やれといわれたことを、可能な限り実行したまでだ。
「じゃあ、どうする?」
ちとせが言った。
皆ホテルに帰り3日目の朝。
今の所呼び出しはなく、今日の夜に帰ることになっている。
「観光しよう!ちとせ、1日目居なかったから!」
そう言うことで、商店街に来た。
1日目と同様人が賑わっている中、マリー達他の召使の人たちのお見上げを買うため、やって来た。
「私達はお見上げを見ていきますが……」
「妾とちとせとミルで観光してくる。」
そう言って二手に分かれることになった。
呼び出しの連絡があればアーロンに行き、
ちとせの携帯で連絡をとり合流すると言う事になった。
一応アーロンも携帯を持っています。
「ちとせ!あそこ行こ!」
手を引っ張られ色々なところを回った。
ゲームセンターや、服屋、電気屋、武器屋、とにかく色んな所に回っていた時。
「どこ、ここ?」
ルナとちとせは迷子になった。
両方とも方向音痴なのが致命的であった。
「アホかお前ら」
ミルが冷たくそう言う。
どうやら、裏路地のような狭い通路に迷い込んでしまった。方向音痴だから仕方がない。
と、その時見るからに怪しい三人が声をかけてきた。
「大丈夫ですか?可愛い美人なお二人さん。」
そう声をかけてきたのは白いパーカーに梟のお面を被った男と、黒いパーカーに烏のお面を被った男。
そして、鷹のお面を被ったパーカーではなくスーツの男。
「えっと、どなたで?」
ちとせが聞いてみると陽気に梟の男が話してくれた。
「おっと、自己紹介しないとですね。梟です。」
………
(((いや、それはわかんなよ。)))
2人と一匹がそう思っていると、烏の仮面を被った男が改めて説明してくれた。
「それでは、分からないでしょう。
すみませんね。私が説明しましょう。今日この日仮面祭りと言うのがあり、この王国の伝統なんです。それに私達は参加する為この様な格好をしています。私は烏、あちらが梟で、スーツを着ているのが鷹。まぁ、勿論偽名ですがね。」
そう丁寧に話してくれた。
「仮面祭りか、楽しそうだな!」
ルナがそう活き活きとしている。
「でも、今日はこの後……」
「仮面祭りは今日の夕方から行われます。時間的には多少なら参加できると思いますよ?」
「でも、」
「いざとなればちとせがどうにかしてくれるだろう?」
ルナがちとせの持っている鬼丸国綱を指差しそう話す。
「そうですよ……では行きましょう。」
そうして、鷹の男がちとせの手……いや、指輪に触れようとした瞬間、ミルが手を噛みついた。
「ん?おや、ペットですか?」
冷静に鷹の男が状況を把握する。
「ちとせ!こいつ怪しいぞ!」
そう言った瞬間、
「ノックバック!」
鷹の男がそう唱えた瞬間、噛みついていたミルが簡単に壁の方に吹き飛ばされてしまった。
「ミル!」
すぐさま刀を構えようとするが、場所が場所だ、狭く上手く構えるのに手間取ってしまったその時、
「鷹……またか」
烏の男がそう言い頭を抱える、どうやらなんかの計画があり、それが今の一瞬で潰れてしまったようだ。
「もういいだろ?」
そう言って梟の男がちとせの腹部を蹴り顔をパンチし、吹き飛ばす。
「クソっ、」
「鬼丸国綱……名刀か…まさか、まだあったとは……」
烏の男がちとせの刀を触りそう解析した。
「触るな!ちとせのだぞ!」
「どうせ、無能力者、勝てねえだろこんな小さい子1人で俺たちには」
梟が調子こいている。
ルナが必死に言うが、もはや3対一護衛までもダウンしてしまった。しかも、相手はおそらく全員能力者。勝てるわけがない、とその時。
路地の曲がり角から腕が出てきた。
すぐさま、その腕は梟を殴り飛ばし、落ちていた木の棒で残り2人の足を叩き体制を崩した。
「しょうもねぇ事すんのな。無能力者?この子には勇気って言う能力がもう持ってんだろ。」
男がそう言って出てきた。
服の上からでも鍛えられた筋肉、肉体そう言うのがわかる程にしっかりとした体だ。
「痛っ……だれ?あんたいい度胸持ってる……じゃん!」
梟が辺りにあった花瓶や瓶などを念動力で男の方に向かわせるが、男は落ちていた石一つを手で弾き、反射などを使って瓶や花瓶に命中させ、当たる前に割ってしまった。
「バケモンかよ……」
「……梟一旦撤退だ。捕まれ。」
烏がそう言い、鷹と梟が烏に捕まり次の瞬間消えてしまった。
「瞬間移動……能力をしかも複数所持か……あの人かよ…で、大丈夫?君たち。」
ミルとちとせはどちらも一応軽傷で、ミルはちとせのフード、ちとせは男に肩を貸してもらい少しここから移動することにした。
広い噴水のある広場に仮面の男3人は現れた。
「だから、俺が行くと言ったんだ。」
「ごめんって、烏。ついね、」
「まぁ、仕方ないでしょう次のチャンスを待つしかなさそうですね。」
烏の男は仮面を外し怒りを露わにしている。
その男の顔は短髪に黒髪、大人っぽい印象のハンサムな男だった。
――公園――
ベンチに,座り話す。
「ありがとう。助けてくれて。」
「かっこよかったぞ!」
「ハハ、どうも。けど、俺は俺の名誉を守っただけだからな。俺の名前はワイアット・ブルース、元兵士だ。」
男はそう頬えんだ。
「近くにバーがある。これ、俺の電話番号。なんかあったらいつでも呼んで。」
そう言って、ワイアットは去ってしまった。
と、その時、ちとせの携帯が鳴った。
「ちとせさん。お嬢様を連れて今から合流できますか?」
アーロンからそう電話がかかってきた。
合流場所は、グリットハッタ城の目の前。
そこに行ってみると、アーロン達、それに加えて他の候補者たちも集まっていた。
「どういうこと?全員呼ばれたの!?」
ミアが護衛の人にイラつき怒鳴り散らかしていた。
「では、皆様お入りください。」
門が開き、昨日の老執事がそう言い城にまた案内してくれた。
いつもの部屋に入ると、すでにロイ国王が座っていた。
「よし、よくぞ皆きてくれた。妾の中ではもう決まっている。だから、言わせてもらうぞ。」
「「「「…………!」」」」
候補者たち全員が驚いた。
もう決まっている。なら、なぜ皆んなを集めたのかそう疑問が出ていた。
「妾が推薦する候補者は、すばり……ルナ・エリオット。君だ!」
そうルナに指をさし自信満々でそう答えた。
「え、妾!?」
自分でも自分に指を刺し今の状況を信じられていない様子。
「ああ、君だ。理由としては他の2人も良かった。だが、ミアは論外だ。まず、出された紅茶があったろ?あれは全て味が違うが君はすぐさま自分が飲みたいのを選んだ。強欲すぎる……無しだ。」
「ちょっと待って!それだけ?」
机を叩きそう抗議するが、それもまたロイの作戦だった。
「やはり、強欲だな。妾もそれだけでは決めん。だから、お前にチャンスを与えた、ルナをお前の目の前で,推薦して納得すれば考え直すこともできたが、お前は2人のように納得せず抗議した。その時点で姫としての器は、皆無だ。まぁ、他で頑張りたまえ。」
「なにそれ……」
そう言って、その部屋を後にした。
この推薦のおかげで、ルナは大きな一歩を踏み出し他2人はそれに納得という形。
だが、これで決まるわけでは無いのでミア含めて選ばれなかった3人もまだ、チャンスはある。
最終的には国民投票のため、まだこれだけでは勝敗はわからない。
「妾でいいのか?」
「ああ、君の正直な所、信頼できる仲間。とくに護衛の君、ちとせって言うんだろう?エリザベスという女を助けてくれたろ?。」
そう言われきょとんとするちとせ。
だが、すぐに思い出した1日目の時、自分の財布のお金を奪った詐欺師の小娘だ。
「あいつじゃねぇか?」
「あ〜、そんな奴いましたね。それが、なにか?」「その子は私の義理の妹でね。助かるよ、訳あって今はあんな事をしてるんだけどね。
ルナ、君は人に恵まれている。そんな君と今後も仲良くして行きたいんだ。」
そう言われて照れるルナ。
その様子をカメラでパシャパシャ撮るアーロン。
「フラッシュは禁止です。」
「おっと、失礼。」
老執事に注意されている。
「あいつ、面白いな!」
「ミル。うるさい。」
「ということで、君を選んだ。
2人は納得かい?」
「ええ、あの子になら負けてもいいわ。」
「私も。」
エマと、イザベラも納得してくれたようだ。
そうして、無事に会談を終え、お土産を買いちとせたちはセレスタリア城へ帰った。勿論、帰りの汽車はとくに警戒をしていたがそれといった事件は起こらず、案外今期は平和な王位継承戦の第一幕だった。
―――――――――――――――――
グリットハッタ城のバルコニーで、ロイが夜空を眺めていた。
「よかったんですか?推薦した者を変えてしまっても。」
老執事がそう問いかけたきたが、ロイは心が晴れたような気分になっていた。
「まぁ、大丈夫だろう。あの子なら、本当はイザベラの予定だったが………あの子で大丈夫。あいつが選んだ奴だからな。
それに、あの指輪…そっちの方が俺は心配だ。」
輝く星たちのその下で、ロイ国王は何かに思いを寄せていた。
――――――――――――――――――――
「いや〜お嬢様、よくやりました!これは大きな一歩です!」
「はいはい、もう、分かったってアーロン。」
「アーロンさん。大はしゃぎだね。」
「そりゃあな。」
アーロンがはしゃぐ様子をシャーロットとハリーは後ろから見届けていた。
「ただいま!って……」
城に戻ると、
「ああ、ごめんごめん。つい、散らかしちゃって……」
城の中が、足場が見えないほどにガラクタで散らかっていた……