表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/89

第56話 天使とは、美しい花をまき散らす者ではなく、苦悩する者のために戦う者である 後編

 5年前。

「本当にいいんですか!?こんな所で働かせてもらえて……」

 女性は心配そうに辺りを見回す。

 彼女の名前は優樹菜。苗字はない。捨てられた彼女、

 ここは、金獅子家の所有する最新科学技術ビルであった。

「構わん。最近従業員が足りていないんだ。」

 デバートは、この人を利用しようとした。

 最初は、道で倒れていた女性。だが、顔を見ればかなりの美女。

 次第にデバートの心は彼女の些細な言動、それにより虜になっていった。

 優樹菜がこのビルに来てから半年が過ぎた。

「おい、優樹菜。今後は働かなくていい。」

 デバートは優樹菜にそう告げた。

「え?」

 優樹菜は驚いた。

 何か自分はしてしまったのだろうか、そう思った。

 だが、実際は違う。

「今後は、俺の嫁となって嫁としての仕事をして欲しい。」

 デバートは頬を赤らめながらそう告げる。

 優樹菜はその言葉を聞いて、信じられなかった。

 だが、ものすごく嬉しかったのだ。

 それからと言うもの、お互い順調に進んでいった。

 幸せな生活。優樹菜はお金には困らないし、デバートも優樹菜もそれぞれ愛し合っていた。

 だが、そんな幸せな生活は長くは続かなかった。

 徐々に優樹菜の体はおかしくなり始めた。

 触覚という、何かを触った際に感じる感覚が無くなっていたのだ。

 おかしいと思い、2人は病院に向かった。

 すると、それは優樹菜の能力であった。

 能力は"加速"身体の何かを一時的に早く動かすことができる。

 だが、能力というのは生まれつき備わることがほとんどで、血液の輸血や優樹菜のような突然勃発することがある。

 その場合、血液は医師の指導のもとやれば大抵は大丈夫だが、突発的に起こる場合、通常魔力のない人がいきなり能力を使うのは困難だ。

 そのため、大抵うまく使いこなすことはできず

大きな力に身体は耐えきれずに亡くなってしまう。

 ましてや、優樹菜は能力をうまく使いこなせず、勝手に加速してしまっている。

 加速しているのは、身体的一部の加速。それは五感の老化であった。

「このままだと、徐々に五感を失っていき、最終的に亡くなるか植物状態に………」

「何パーだ?」

「え?」

「何%だって聞いてんだよ!!」

 デバートは医師の胸ぐらを掴む。

「ちょっと、!」

 優樹菜が割って入る。

 デバートが唯一愛したその人が、病気、亡くなるとまで言われ、冷静には居られなくなっている。

「そう全てなくなる確率は、90%です、もって一週間、、」

 医師はそう言って淡々と告げる。

 優樹菜はすぐに入院になった。


 ――――――――――――――――――――


「私も能力者か……」

 苦笑いをし、ベッドに横たわりながら優樹菜はデバートに笑顔を見せる。

 デバートを少しでも励ましたかったから。

「優樹菜、大丈夫。

 確率なんて、俺にかかれば問題無しだ。俺の能力でお前を助けるから。」

 デバートはギャンブラー。そんなギャンブラーにとって、確率なんてよく見る数字に過ぎない。

 それを覆すのが、真の勝者.

 そんな、デバートの能力は確率だ。

 自分の能力の命中率は1から100のうちのどれか。

 それを決めるのはデバートの運だった。

 だが、どんどんその時の戦いで能力を使うと、確率は下がる。

 ギャンブラーのデバートにあったそんな能力。

「お前の90パーセントを俺が,俺が覆してやる!

科学の出した%なんて、能力にかかれば余裕で覆せるから!」

 そう言ってデバートは優樹菜の手を握る。

「ありがとう……期待してる……」

 デバートを涙を浮かべて見上げる。

 だが、2日後。

 デバートが病室に入った時、何やら探し物をしている。

 手探りでベットの上を探す優樹菜。

「どうしたんだ?」

 デバートが聞くと、優樹菜は答える。

 どうやら、デバートといつも着けていた結婚指輪を探しているらしい。

「デバートさん、居たんだ……なんか、気づいたら無くなってて……」

 そう話す優樹菜。

 デバートは顔を暗くした。自分の能力では変えれなかったと、そう後悔した。

 何故なら、その指輪は優樹菜の目の前にあったのだから。

 優樹菜は気づかなかったのではなく、気づけなかった。

 何故なら、おそらく、優樹菜の目は見えなくなっているのだから。

「優樹菜………」

 それから、1ヶ月。

 優樹菜の五感は徐々に失われていき、嗅覚、次に味覚、が失われていった。

 窓から雨音が鳴り響く。

「……優樹菜、俺は、、君が居ないと……」

 デバートは顔を曇らせる。

 五感が無くなったところで死にはしない。

 だが、優樹菜は安楽死を選んだ。

 ここでずっと閉じ込められるぐらいであれば、デバートの生涯を見届けたいと思ったからだ。

 優樹菜にはデバートの暗い声が聞こえた。

「そんなに暗くしないで、無くなったからこそ、あなたの私を想う温かみに気付けた。」

 涙を浮かべる優樹菜。

 部屋の外には医師達が待機していた、

 今日が、最後の日だからだ。

 デバートのいつもの賭け、確率は今回ばかりは覆せなかった。

「……優樹菜……」

 デバートは優樹菜の弱いけれど、どこかに見える強いそんな姿に惚れた。試しにデバートのビルで働かせてお金を多く上げても見たが、欲に溺れることもなかった。

「……あなたと出会えて、最後までこうして目の前にいられて私は嬉しい!」

 目を瞑り、デバートの方をできるだけ向いてそう元気よく言った。

「優樹菜………俺は………」

 デバートの手の中で、優樹菜の手の力が無くなるのがわかった。

「優樹菜……?」

 優樹菜は反応をしなくなった、目には涙が浮かんでいる、外界から優樹菜は孤立してしまった。

 部屋の中に医師達が入ってくる。

「……では、」

 そう言って、医師達は優樹菜の身体を優しく触れ車椅子に乗せる。

 優樹菜が望んだこと、デバートは止めることはできない。

 デバートの前に1人の医師が立つ。

 それは、最初に診察をした医師であった。

「驚きました。ここまで、"加速"の能力を抑えられるとは……予定よりも、遥かに長く……」

「救えなかった……所詮、能力、万能じゃない、、賭けに過ぎなかった……」

 デバートの脳裏に優樹菜の笑顔が浮かぶ。

 デバートは、自分の救えなかった能力を恨むのだった。

 デバートは初めて賭け事に負けた。

 亡くなってから2年後、

「……!!嘘だ………」

 物を過去の状態に戻す、指輪を発見したのだった。

 デバートは絶望した。この世の中の残酷さに。

 そんなデバートに追い打ちをかけるように、優樹菜に能力のついた原因がわかったのだった。


タイトルは優樹菜の事です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ