第52話 死を前にしたとき、人は本当に大切なものを知る。
「………ちと、せ…」
「リアム……」
目の前には上半身が切断され、ちとせを見あげるリアムの姿が、ちとせの目に映る、
だんだんと、リアムの目の光がスッと抜けていくのがわかった。
リアムの血液が、ちとせの顔に飛び散った。
リアムは息を引き取った。
「………殺す、」
そう言ってちとせは歯を食い締め、相手を見上げる。
「おや、すみません。
思わずあなたを狙ったつもりでしたが、、
まさか、庇うとは……」
男はちとせとルナに向かって範囲攻撃を仕掛けた。
それにいち早く気づいたリアムは、ちとせの目の前に現れちとせを弾き、巻き込まれて攻撃に当たってしまったのだ。
余りにもいきなり過ぎる仲間の死亡にルナ達は戸惑う。
だが、リアムは護衛として任務を全うした。
「お前……」
そう言ってちとせは、男に向かって突進する。
「ちとせさん!早まらないで!ここは何かおかしい、時間感覚といい、何かが!」
そう言ってネビュラはちとせを止める。
カリン、エリザベス、ルナは放心状態。
ちとせは怒りで我を失っており、ネビュラは冷静に判断している。
ネビュラは知っていた。
男の正体を、男の名前はクルー・アクロイド。
ハイルの父親である、アイザック・アクロイドの弟であり、強さは冥王級で剣技はこの世界で3本の指に入るほどの実力者。
デバートの右腕である。
「カリンさん!ルナさんとミルさん、エリザベスさんを連れてここから最上階に繋がる、外の非常階段から登ってください!ここは、私とちとせさんで食い止めます!」
そう言ってネビュラは腰にあるホルスターから、ピストルを取り出して窓に発砲し階段までの最短ルートを作った。
このビルは最新技術が使用されているが、だからこそ滅多に使わない非常階段は少し作りが甘い。
「わ、分かりました!」
そう言ってカリンはリアムを惜しみつつ、ルナとエリザベスの手を引っ張り非常階段から逃げた。
クルーは狙い通りだった。
ちとせは厄介、大罪系スキル持ちという事を知っている。
だから先に倒すつもりだったが、リアムに邪魔をされた。
だが、結果的に自ら来てくれて助かった。そう思っていた。
相手がちとせだけならば………
「ハリケーン・ブレイド・ストーム……」
そう言って近づいてくるちとせに向かい、クルーは刀を振り下ろす。
その時、広範囲に渡り斬撃が飛び交う。
その範囲と精度、威力はまさしく神業であり、発動すれば全方位から斬りつけられる。
刀が舞い踊り、相手はその壮大な刀舞に圧倒される程の強さだ。
ちとせの持っていたケルベロスが、地面に落下した。
ちとせに痛みはない。
斬れ味が良すぎて気づかなかったのだ。
ちとせの右腕が壁にぶつかる。
ちとせの右腕が切断されたのだ。
「おや、どうしました?
まだまだ、ほら、お仲間さんの仇……取るのでは?」
そう言って、クルーはちとせを挑発する。
その瞬間、銃弾がクルーの耳に貫通する。
「チっ、、、何が起こった?
………アイツか、」
すかさず、もう2発すぐに撃ち込むネビュラ。
クルーは避けつつ、刀で銃弾を斬り裂く。
(コイツとぶつかるのは、少々厄介か……
だが、指輪の所有者が亡くなるのは困る……)
指輪にはそれぞれ所有権がある。
所有権が無い指輪には1番最初に触れた人に、その所有権が渡り、所有者が亡くなった場合、指輪もこの世界から無くなってしまう。
そのため、その前に指輪の所有権の継承もしくは、所有権を破棄しなければならない。
サムソンが亡くなる直前、サムソンは自ら所有権を破棄し、ハイルが指輪をpove-2に隠して置いた。
その為、最初に触ったちとせに所有権があり、それに気づいていない、ちとせ。
所有者本人でないと、所有権はいじれない。
また、所有者でないと、指輪の力は半分も使用することができない。ちとせは今のところ指輪を使ったことはない。
因みに、所有権は指輪一つだけではなく、幾つも持つことが一応できる。
「アンタ、相当な強さ……何者だ?」
「あなたに言う権利は無い。」
そう言って、身体強化を使いネビュラは冥王級相手に素手で戦う。
「………」
ちとせは、クルーを睨み瞬きをする。その瞬間、ちとせの瞳は更に赤く光り輝いた。
(ん?動かない、体が、、、)
クルーの身体の周りに赤いオーラが出現し、数秒動きが止まった。
「使いこなせてんのかよ……」
ネビュラはそう思いつつ、クルーを蹴りで吹き飛ばした。
ちとせは、ハイルの強制解除と似た力を使いこなせていた。
クルーは窓を突き破り、カリン達のいる非常階段の方まで出る。
「エッホ、エッホ、」
「うわ!!なんか出た!」
「……おや、また会いましたね…」
そう言って、クルーは刀を使いカリンの腕に突き刺す。
「くっ、そ……が!」
カリンは腕の痛みに耐えながら、後ろに持っていた矢でクルーの右目を突き刺した。
ちとせは、ケルベロスを左手で拾いクルーに向かって振り下ろす。
「危な!」
「………殺してやるよ……」
「怖いこと言うなよ………」
余裕の笑みを浮かべるクルー。
互いの刀でぶつかり合い、火花が散る。
念動力でちとせがクルーを引っ張りネビュラの方へ飛ばす。
「………」
エリザベスは何かを持ち、カリン達と一緒に最上階を目指す。
「カリン、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫……早く、いこ」
ルナが心配するも、カリンは少し顔色が悪い。
「私、冥王なんですがね……」
「ちとせさん、腕は……」
そう心配するも、ちとせは上の空の様子。
「問題ない、、殺す。」
殺意に満ちたその言葉に、ネビュラも思わず怯む。
そうして、ネビュラ、ちとせ対クルーの勝負が再開する。
――――――――――――――――――――
「で、またネビュラ出勤?」
馬車に乗り、もう一つの指輪を目指して梟達はある場所を目指していた。
「……まぁ、アイツはあれでも楽しんでるし」
そうして、彼らはもう一つの指輪の隠し場所である、バミューダという都市の名門校である、エリート異能力者学校、ヴィクトリア学園に向かうのだった。
――――――――――――――――――――
「ねぇ、ワイアット……後何分で着くの?」
広い海の上をクルーザーで渡る二人組、
「アシュリー、まだ、あと2時間ぐらい?かかるぞ、」
船の中から、1人の男が出てきた。
その男は、グリットハッタで、ちとせとルナを助けてくれた元軍人、兵士のワイアットであった。
彼らもまた、訳あってあるところに向かう。
「ヴィクトリア学園、早いとこしないと、第三次厄災戦争の火種になる、それにアイツらも……」
ワイアットの手には一枚の新聞の記事が握られている、内容は、セレスタリアに魔物襲来という記事名だった。
そして、ワイアットが言うアイツらという言葉、
頭には黒服姿の、忌々しい奴らが浮かぶ。
「阻止しないとな………」
そうして、それぞれバミューダに向かうのだった。




