第43話 憧れているだけで自由を獲得することはできない
ノアが氷馬に向って走り出す。
だが、氷馬はその途端一歩足を前に出し思いっきり地面に、ぶつける。
そうすると、里の地面が抉れ謎の地下が明らかになる。
ちとせを含め全員が、その地下に落ちてしまう。
勿論氷馬もだ。
「次のラウンドは、舞台変えるぞ……」
そう言って氷馬は、片手に持っていた武器を斧から短いナイフに変えた。
その地下は、血の池が辺り一面を埋め尽くし、
かなりの広さがある、遠くに見える壁は土の塊のような質感でおそらく、ほんとに地面の中なのだろう。
(なんだ、この違和感……この男と、俺、ちとせ、カルロ、ミル……その他にもまるで誰かいるみたいに……)
ノアはそう感じていた。
自分たち以外にも何かいるような、そんな気配がする。
「こっちからいくぞ」
氷馬がそう言うと、すごい速度でノアに向かってくる。
その速さは、音速を超え肉眼じゃ見えない。
見えたのは、氷馬が動き出した時に見えた衝撃波だけだった。
ノアがすぐに魔力感知で、氷馬を探すも、見つからないというか、変な気分だ。
(なんだ、何が起こってる?……)
そう考えている間に、ノアは氷馬に思いっきり蹴られ、宙を舞う。
「影遊走……」
地面にある血の池が、飛び散る。
そうして、空中で影を出し氷馬にぶつけようとするも、氷馬に触れた瞬間、影の形が乱れだし消えてしまった。
「なに?……」
「終わりだな……」
そうして、ノアは持っていたナイフで身体中を滅多刺しにし、倒れてしまった。
「ノア!」
(なんだ,見えなかった……)
カルロがそう言うと、氷馬は既に目の前にいた。
「くそ!」
地下には、銃声が響く。
氷馬はすかさず回避して、カルロをノアと同じように刺す。
「終了……面倒かけやがって……」
そうして、その場から出ようとしたその時、
氷馬の目の前に白い髪の男が立っていた。
それは、猫の耳を生やし、尻尾を生やす。
その男は少年のように見える。
人型に一時的に戻った、ミルであった。
「はぁ、またかよ……」
そう言って、だるそうに歩き出すと、いきなり自分の胸がすごい速度で凹んだ。
そこから、内出血を起こす氷馬。
(ん?なんだ……)
氷馬に向かってミルが蹴りを喰らわそうとするも、片手で塞がれてしまう。
だが、そんな事をお構なしにミルは自分の足の骨を折る勢いで、捻らせて氷馬の顔に向かって、拳をぶち込む。
血の池に膝をつける氷馬。
「やり過ぎ……犯罪者はこの手で粛清だ……」
そう言ってミルが歩き出すと、氷馬が喋る。
「なんか、勘違いしてるな……いつからお前有利に進んでいると思ってるんだ?」
氷馬がそう言った途端、ミルの後ろから何か生物の呼吸音が聞こえる。
すぐさま後ろを向くと、
10メートルほどの巨大な鬼がミルを見つめている。
手を見てみると、工藤のおっさんの胸を貫いた腕と同じであり、犯人はコイツだ。
おそらく里の人でさえも鬼について触れてはいけないのだろう。
斉藤は里の外から引っ越して来た身体のため、鬼についての呪いは無かった。
ミルは全ての謎が解けた。だが、鬼の拳により、一気に壁の方まで吹き飛ばされて、めり込む。
「規格外だな……でも、時間は稼げた。」
ミルはそう言って目を閉じる。
子猫の姿に戻った。
「まったく、大変だなー」
氷馬がそう言うと、次に目の前に現れたのは、1番最初に確実に葬った人物であった。
「……亡霊か?……いや、マジもんだな………」
頭から血を流し、服にも血が大量についたちとせが立っていた。
「おっす、まだちゃんと戦ってねぇだろ?」
ちとせが言った。
そうして、直ぐに氷馬は武器を槍に変え和服の上を脱ぎ捨てる。
下に着ていた動きやすそうな服が顕になる。
ズボンは和服の時と同じズボンだ。
「……本気で来い……継承者……!」
その言葉を聞き、ちとせは氷馬に向かって本気で走り出す。地下にはチャプチャプと血の池の音が響き渡る。
ちとせの速さは、まるで氷馬と似ているところがあった。
どちらも音速を超えていると言うこと……
ちとせは槍を回避し、拳を氷馬にぶつける。
氷馬は吹き飛ぶも、すぐにバク宙をし、なんとか着地。
(これが、今の継承者か……俺の時より、身体的パワーが上がってるな…)
氷馬はそんな事を考える。
氷馬は生まれつき最恐だった。
喧嘩なんて売られることはほぼ無い。それは、里の人々は彼に喧嘩を売れば、負ける。
そんな事を理解していたからだ。
だが、氷馬は自分のこの強さの事はいわば、呪いだった。
強過ぎたのだ。そのせいで、普通の生活が送れなかった。
そんな事を考えていた時、ある大罪スキルを継いだ。
その後、その能力を使い切り、そうして次に自分と戦い楽しかったサムソンという男に受け渡した。
それで、終わったものだとものだと思っていた。
だが、能力は無くなったのに、さらに驚異的な身体能力がついたまんま。
(……次期当主……馬鹿馬鹿しいな、ほんと……)
そう思い、槍を握りしめる氷馬。
「魔力妨害……厄介だが、何も考えず殴り続ければ終わる……」
「使いこなせていないな……?なら、問題なし!」
そう言って、氷馬はちとせに向かって走り出す。
ちとせも氷馬に向かって走り出す。
氷馬は、槍を回しながらちとせに向かって攻撃を仕掛ける。
だが、ちとせはすかさず避ける。
槍は地面を抉り、ちとせに血が飛び散る。
「どうした!?逃げてばっかか?」
「……舐めんなよ、」
ちとせは手を伸ばした、すると氷馬は吹き飛ばされる。
(念動力を限界まで細めて吹き飛ばし、斥力を発生させた……?…無意識か、、)
氷馬は地面を蹴って、一気に距離を詰める。
またしても、衝撃波が辺りに伝わる。
そうして、槍をちとせに向かって投げ飛ばし、槍はちとせの肩を掠めた。
「………」
筋骨隆々な氷馬の腕は、ちとせに向かって振り下ろされる。
すぐにちとせは受け止めて、蹴りを喰らわすも氷馬は直ぐにちとせを投げ飛ばす。
そんな時、ちとせの目の前には先ほどの鬼が現れた。
ちとせに向かって攻撃を仕掛ける。
だが、その時一つの銃弾が鬼の頬を貫いた。
カルロである。
それに続き、一つの影も腕に攻撃を与えなんとか鬼の片腕を切り落とすことができた。
「ふぅーあぶね!」
カルロがそう言ってリロードをする。
「生きてたのか……」
氷馬がそう言うと、ある人物が脳裏に浮かぶ。
ミルである。
ミルが、時間稼ぎをしている間に3人を蘇生したのだ。
「あのクソ猫か……」
氷馬はちとせ達を睨む。
「しかし、鬼の正体も、ノートについても大体わかった。あとは、アンタを倒して帰るだけだ。
だよな?」
「ああ、そうだな……さっさと終わらすぞ!」
カルロとノアがそう言って会話を交わす。
「ちとせ、鬼は俺らがやる、そっち任せた!」
ノアがそう言って、2人は鬼の方へ向かう。
そうして、ちとせは氷馬と対峙する。
「ファイナルラウンドだな……」
「殺す。」
「「バケモノが……」」
そうして、戦いは最後を迎える。




