第42話 今日という日は、残りの人生の最初の日である
「……なんだ、案外勘が鋭いこっちゃね……お父さん、失敗だ……」
その時、何か上から物音が聞こえる。
「氷馬っち!僕が行く。」
そうして、屋根が破られちとせの真上から金髪の男。
響也が上から入って来た。和服の響也の服が靡く。
響也は高らかにちとせに蹴りをかます。ちとせは腕でガードするも、家の外に吹き飛ばされてしまう。
「……やっぱ、喪服動きにくいな。着替え持ってくりゃよかった……」
喪服の上の服を脱ぎ捨て、第一ボタンを外しネクタイを緩めながらちとせがそう言った。
その際に、中では次に響也はカルロを狙う。
カルロに近づこうとするも、カルロは銃を構えて発砲する。
「……!、厄介やな……それ、僕のなんですがね……」
一発目は外すも、二発目は響也の顎を撃ち抜く。
だが、その傷口はみるみるうちに塞がっていった。
「……おま、人間じゃねぇ!」
あまりにも速い再生速度は、人智を超えていた。
すかさず、響也はカルロを狙おうとするも横から妨害され、吹き飛ばさられる。
それは、ノアの影遊走によるものだった。
「好きにはさせねぇよ!」
「あんたも、能力者だったの忘れとったわ!影薄過ぎや!」
生身で、影と対等にやり合う響也。
その背後にはカルロがおり、更に後ろからちとせと肩に乗るミルが戻ってこようとしている。
流石の響也でも、3体1はきついその為、響也も能力を使う。
「はよこい!骸共!」
響也がそう言うと、先ほどの斉藤さん、そして死んだはずの何者かに腕で胸を貫かれた工藤のおっさんも、里の人々が姿を変え、3人と1匹に向かって襲いかかる。
その数は数えきれないほどだ、
その姿は醜く、顔が青い炎で燃えており、骸骨になっている、服は和服で3人に近づいて来た。
「おい!ノア!こいつら、撃っても死なないぞ!」
「ちっ!……2人!一旦退避だ!」
そう言って豪邸から出て、広い里の方へ行ってみるも、あたりには先ほどの響也が言う骸が大量に沸いていた。
「うじゃうじゃいるぞ!ていうか、あの響也とか言うやつ、人間じゃねぇし!」
「あのよく分からん方言、あれ、多分……色んなのが混じってる。もう本物の響也は死んで、中に入っているのは成りすましている人間じゃ無い何かじゃない?」
ちとせがそう言った。
確かに、もはや響也は人間では無い、里の人も最初からそんな"人"は居なかったのだ。
「外から来た人達をこんな感じで、嵌めていったのかな……斉藤もグルだったとは……オイラとした事が……」
「まぁ、そんな所だろう………じゃあ、とっとと帰るぞ、」
ミルの言葉に同情しつつ、ノアがそう言って2人を急かす。
「ああ、そうだな……とはいかねぇよ!!まだ、鬼見てない!!」
「鬼みたいな形相な奴はいっぱい見たけどね……」
カルロの言葉にちとせが告げ口をする。
確かに、と思ってしまったカルロであった。
すると、後ろから響也が迫って来た。
「こんな所におったんや!」
そうして、骸と一緒に迫ってくる響也。
「……あんた、ほんと厄介やな!」
「そりゃ、どうも。」
そうして、自分の影と一緒に、響也と戦うノア。
響也の拳をノアは回避し、ノアは蹴りを入れる。
すかさず、その後からノアの影自身も蹴りやパンチを響也に向かって喰らわす。
「妖狐!」
若干の苦戦を強いられていた時、響也がそう言った。
次の瞬間、辺りを大量の炎が埋め尽くす。
その形はまるで、狐のような形をしていた。
(妖術?なんだ、?アイツの魔力が感じれない……)
ノアが混乱していると、横から拳が飛んでくる。
火のせいで、影が大きくなり、影遊走も思うように操作が出来なく、ちとせとカルロは炎の外で骸の相手をしていた。
「不味いな……」
「そうやろ?」
そうして、ノアは一方的に響也に殴られていく。
「おい!ちとせ、ミル!ノアの様子は!?」
「しるか!ばか!」
「毒舌、クソガキか!」
「ガキだよ……」
ミルが2人のやり取りに呆れていると、奥からもう1人の男が歩いてくる。
メガネをしており、和服姿。少し短髪の男であった。
「……」
無言で、発砲するカルロ。
だが、首を傾げ対象の男は避ける。
ちとせは、持っていた木の棒を男に向かって、豪速球で投げる。
「……」
「当たんない……」
「なんで……」
2人と1匹が不思議がっている。
「私の能力は、、いや、無言で当て過ぎね!!?
お兄さん、びっくりしちゃった!」
そう陽気に話す、その男。
名前は、工藤龍馬。
先ほど死んだ男の息子だそうだ。
「親が死に特に怒りなどはない。
ろくな人では無かったからな……だが、命令なんだ、お前らを殺させてもらう。」
そう言って男は懐から仕込み刀を取り出す。
「悪いけど、死ぬ気ないよ……チャールズ・ディードリッヒ曰く、今日という日は、残りの人生の最初の日である。」
「名言好きだね……」
ちとせが呆れる。
「意味は?」
男が聞き返した。
すると、カルロは答える。
「ググれカス!」
そうして、またしても発砲するカルロ。
龍馬は、仕込み刀でその向かってくる銃弾を切り落とした。
すぐにリロードし、銃を撃ち続ける。
龍馬は少しずつ近づきながら、向かってくる弾を全て切り刻む。
すると、横からちとせが龍馬に向かって、蹴りを飛ばす。
「すごい強さですね……ほんとに、あの人みたいだ……」
そう言いながら、龍馬はちとせの瞳を見つめる。
そんな事をしている間にも、カルロは撃ち続ける。
そうして、龍馬は斬る。その繰り返し、だが、向かってくる弾を斬っていると、一つ速度が少し違う弾が向かってくる、龍馬は気づかずに斬ってしまう。
すると、辺りは白い霧に包まれる。
煙幕だ。
「あたり!」
そう言って思いっきり近距離で発砲する、だが、刀に妨害され、狙いを外し、カルロは頭ではなく、腕に向かって発砲する。
その弾は軌道通り、龍馬の腕を貫いた。
「クソッ、ここまで苦戦したのは約、50年前のあと男達以来、まぁ、殺したがね……1人逃したが……」
そう言って、ちとせに捕らえられた龍馬。
もはや腕からは血を流し、ちとせにボコられた為刀を握る握力も無い。
「何歳だよ、お前ら……お前らの能力、大体はノートに書いてあった。俺もじいちゃんとは、そんなに話してねぇけど、お前らはやりすぎだ。」
そうして、カルロは頭を撃ち抜いた。
激しい炎の中で、戦いは激化。
ノアは意識が朦朧としていた。
「あんた、そんな強さでこの里に飛び込んできたんですか?バカやな〜、」
倒れ込むノアに響也は笑う。
「うっせぇ、人間もどきが……」
そう言って、響也を嘲笑う。
「そんなこと言える口、まだ残ってたんですか……まぁ、ええわ。ほなな。」
そうして、炎が消え骸達がノアの周りに集まる。
だが、この時点で負けたのは響也だった。
影遊走を甘くみて、背を見せた響也の負けである。
ノアは自分の影と、骸達の影を操り始めた。
影遊走で操作する影達に魔力はない。その為奇襲にはもってこいなのだ。
「……!」
響也は何かを察したのかすぐに後ろを向くが、その時にはもう全て何十人もの影が響也に飛びつく。
そうして、その影は響也の体を埋めつき、蝕んでいく。
「なんや!こいつら、、離れろ!」
そうして、響也の皮膚は段々と無くなっていき、骨や臓器が露出する。
「その身体、お前のじゃねぇだろ……」
そうして、辺りに血の海を残して、響也は死亡した。
周りの骸達はその影でノアが仕留める。
そうして、3人は合流した。
「よし!じゃあ、これでひと段落だな……」
「あの目つきの悪い当主を探してさっさとずらかるぞ……」
そうして、3人と1匹はハイタッチをかます。
その瞬間、ちとせはその直前で手が止まる。
「……いつ…から……」
ちとせは胸が熱くなる。
ちとせの周りに血溜まりが出来ていた。
「ずっとさ……ほら、目つきの悪い当主のご登場だ。」
ちとせの背後を斧で切り付ける、氷馬。
ちとせは倒れ込む。
「ちとせ!」
「おい!ちとせ!」
カルロとミルがちとせに近づく、だが反応がない。
(なんだ、コイツ気づかなかった……魔力が感じ取れない……)
ノアが混乱する。
「おいおい、そんな警戒するなって……こっちも大量にやられてるんだ……なぁ?やろうぜ、殺し合いの続きを…第二ラウンドだ……」
氷馬は2人を見て微笑む。
まるで、獲物を見つけた肉食獣のように……
ミルの事について、誰も不審がらないんだな、、と思う今日この頃。




