第37話 諸君、喝采を。喜劇の終わりだ
氷馬は、ちとせに向かって走ってくる。
速すぎるスピード、目には追えない。
ちとせは、ミルを下ろしてリアムと合流するように言った。
「いいのか?」
「ああ、今のミルの魔力量じゃミカエルの姿に戻るのは無理だし、人の身体を借りるにしても数分しか持たない。温存しといたほうがいい。
いけ!」
そうして、ミルは直ぐにリアムの方へ走った。
(さて、どうするか……)
ちとせは一度この男に勝っている。
色んな奇跡が起こってこそだが、恐らくちとせが1番最初にこの世界で戦った者だろう。
「……どこだ?」
ちとせがダメ元で魔力感知を発動させ、場所を見つけようとするが、すぐにそれは弾かれてしまった。
「やっぱ、無理だよね!……」
ちとせの頬に拳がめり込む。
魔力妨害。
四道氷馬の厄介なところの一つはこの魔力妨害であり、これによって場所が感知できない。
ちとせは、直ぐに氷馬に向かって攻撃を仕掛ける。
「獣王剣・……」
だが、出現してくる火は全て氷馬を掠めたり、直ぐに散っていってしまう物ばかり。
魔力妨害によって、氷馬と戦う相手は魔力が乱れ魔法や能力が上手く打つことができない。
(本物じゃないのに、それも再現されてるのか、
再現度高えな、おい、)
ちとせの腕を氷馬は引っ張り大きく高くジャンプをする。
高く飛び上がり直ぐに急降下、ちとせを地上へと叩きつけた。
「……別にアイツに付いてるわけじゃねぇが、そんな程度か?」
「馬鹿げてるな、アンタ……」
幸いちとせは氷馬の能力を知っている。
超人的な身体能力、規格外のパワー。圧倒的にフィジカル系であり、厄介な魔力妨害と高い戦闘IQ
そして、
氷馬は片手からある刀を出した。
「お前の得意でやってやるよ……」
出てきた物は、ちとせの前の愛刀である、天下五剣の一本、鬼丸国綱であった。
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「ありゃ、武器強化の上位種、神器錬成か?」
ライリーが高台から、望遠鏡を使いセレスタリアの街の様子、氷馬を見ていた。
「神器錬成?どんな能力だ?」
レイがライリーに聞く。
その後ろにはルーナがおり、悪魔達が何体も倒されていた。
レイ達の仕業である。
「神器錬成……階級は1番上のミシックであり、歴史上や神話の能力。自分の作りたい武器が一瞬で作れる。武器商人達が目ん玉飛び出す能力だ。
昔の映画のマスクみたいに……ハイルの創造神の武器版みたいな所だな……」
「ふ〜ん、やばいな……大体わかった。
マスクの説明は要らないけど。」
そうして、座っていたレイが立ちあがる。
「行くの?」
ルーナが,聞くと、レイが頷く。
「あの王玉……今フリーだ。
他の奴らと一緒に戦えば勝機あるかも、、来るか?」
「行くだろ、」
「行くわよ!」
ライリーも剣を持ちルーナも剣を持ち、3人は街に向かった。
レイが言った王玉はバアルの事である。
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ちとせはケルベロスで氷馬の鬼丸国綱の攻撃を何とか凌ぐ。
「お前、誰なんだよ!」
ちとせがそう言って、鬼丸国綱を弾く。
四道氷馬は死んだ。
はず、なのに自分の前には瘴気で身体が構成されたそいつが立っており、能力もそっくりだ。
「……ちとせ、俺はあんたを憎んでいない。
むしろ、尊敬している面もある……」
そう言って、鬼丸国綱を片手に斬りかかる。
(答えになってねぇな!)
「獣王剣・煉獄!」
ちとせの周りを高火力の、熱が籠る炎が辺りを覆うが、氷馬にはそんなの関係ない。
なんの耐熱耐性も無いのに、素肌で飛び込むそのイカれっぷり。
生まれつき最強の氷馬にはそんなの関係ないらしい。
ちとせの腹部を殴り、脳天を殴る。すぐに蹴りで吹き飛ばす。
ちとせは思った。
氷馬はまだ本気を出していない。
「……俺は何なんだろうな……ちとせ、お前を殺してお前の護っている小娘も殺すぞ。」
氷馬はそう宣言した。
「は?やれるもんならやって見ろよ……
僕はあの子の護衛だ。何としても護るし、その前にお前を葬る。」
氷馬は少し微笑んだ。
2人が高スピードで、それぞれの刀が交差する。
40%憤怒の力をちとせは無意識に引き出していた。
魔法などの能力がほとんど氷馬には使用できない。
なら、ちとせは魔法以外の物を使う。
「臨兵闘リン、ピョウ、トウ、者皆陣シャ、カイ、ジン、裂在前レツ、ザイ、ゼン……」
そう言ってちとせは手を出して、縦横無尽に九回振って唱える。
陰陽道に備わる九字切りである。
その衝撃、魔法とは少し違う不思議な力で、魔力関係なしに氷馬が吹き飛ばされた。
直ぐに、ちとせはそれを追い討ちする。
が、氷馬はすぐに起き上がりちとせの背後を取って蹴り上げる。
「………惜しいな、」
「怒天破斬……」
そう言って、ちとせは蹴り上げられた瞬間地上、氷馬に向かって手を伸ばす。
次の瞬間、地面が割れるような巨大な揺れが起こる。
周りにあった建物はほぼ全部壊滅状態、生えていた木々も周りのものは全て折れてしまった。
「憤怒の力、獣王剣じゃねぇのか……」
氷馬は血を流す。
ちとせのケルベロスが氷馬の腹部を貫いたからだ。
「……ふ、柄でもねぇ………優しさが出ちまったな……」
そう言った氷馬は一時的になのか、赤黒い瘴気の見た目ではなく、普通の人間の見た目をしている。
白髪に、オレンジ色の瞳。
「……強かった…けど、昔の方が強かったぞ……」
「言っとけ……我を忘れるなよ………」
そうして立ったまま、氷馬は塵になって消えていった。
ちとせは、近くにあった鬼丸国綱を拾い上げる。
刀身にはちとせが、折ってしまった傷が薄く残っていた。
紛うことなき、ちとせの物である。
だが、それも塵になってちとせの手から消えていった。
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「四道も、か……引き上げるしかないか……」
そう言って、指輪に触れるバアル。
直ぐに後ろから槍を持った白虎が飛んできたが、
バアルはそれに気づき、避け自分の剣で、白虎の胸を貫いた。
「我は魔王だぞ?四神獣の1人が、こそこそやっていることにも気づいているわ……」
「クソ……野郎、」
白虎の首を締め上げるバアル。
そこからさらに矢が飛んでくる、カリンの物だ。
だが、バアルにはそんなの関係ない。
当たる直前、矢は空中で停止。矢の先端はカリンの方に向け再度発射させた。
絶対追尾が負けた。
「やば、」
矢が折れる音が響く。
リアムがカリンを抱えて避け、念の為玄武が矢を全て叩き折った。
「ほぅ、玄武か!コイツよりかは楽しめるか?」
「白虎を離せ、それにそいつは怒ったら誰よりも強いぞ?」
そう言って,白虎の方を見てみると、白虎は直ぐに口から雷撃を放った。
慌てて、白虎を放り投げ首を上に逸らし回避する。
バアルは指輪に傷がついていないか確認をし、
付いていないことが分かり安堵したようだ。
「崖の上から後3人、我の配下達はやられたようだが……まぁいい、かかって来い!皆殺しにしてやるぞ。」
そう言って、バアルに向かいリアムとカリン、白虎、玄武が襲いかかるのだった。




