第26話 人生は地獄よりも地獄的である
「君たち………次、何か王位継承戦を妨害でも何でもしてみろ。
その時は、お前ら2人とも相手をする、」
ロイはそう言ってハイルと琥珀を見つめ、眠ったロイスを運び闘技場へ戻って行った。
「「はい!もう何もしません!」」
ハイルと,琥珀は元気よくそう返事をし敬礼をしていた。
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エリザベスは考える、過去の事。
ちとせに会ったその時から、ある言葉が引っかかっていた。
"お前は悪くないよ、悪いのは環境だ"
(環境か、、ちとせはどんな所で育って誰と出会ったんだろう……)
エリザベスは貧困層の人々が集まる、路地で育った。
親の事は知らない。
知らないと言うか、忘れている。
それほど前に、エリザベスの親はエリザベスを置いて逃げたのだった。
金がなく育てられなかったのだろう。
よく、親に関することわざがある例えば
子は親を映す鏡。意味は、子供は親の影響を大きく受けることを指し、子供の様子を見れば、親の教育方針や性格がわかる。ということ。
だが、エリザベスは親を知らない。
だから、鏡や憧れというのはなく自分で生きていくために、盗みと言う技術を上げた。
勿論、そんなエリザベスの周りには信頼できる、してくれる友達なんていない。
毎日、盗み、騙す。その繰り返し。
そんな奴の周りなんて人は寄ってこないのは当たり前。だが、その日は違った。
いつも通り、エリザベスは人から金品を奪うため色々とメモをつけていた。
「今日は、あそこの家に行って適当な壺でも売りつけるか……」
足をバタバタとさせ、意気揚々としているエリザベスの前に一台の高級車が止まる。
「ん?なんだ………」
エリザベスがそう思うと、車が空き中から若いイケメンが出てきた。
「やぁ、君がここら辺で詐欺師をやっている犯罪者かい?」
お高そうなスーツに身を包む男。
帽子を取り貧乏人のエリザベスに挨拶をしてきた。
「妾の名前は、ロイ・アルベール。この王国の時期国王だ。」
流石のエリザベスでも自分のいる国の国王ぐらいは知っている。
「時期国王くんが何の要?」
そう聞いてみると、次の瞬間ロイが持ってきた要件、それはエリザベスの人生を変えるものだった。
「君、妾の王国の義理の妹として来てみないか?」
「あ?義理の妹……なんで?」
義理の妹、そんなのになってしまえば、王国で贅沢に暮らす事だって出来てしまう。
ましてや、エリザベスは詐欺師、犯罪者だ。
いいはずがない。
「君の盗みの才能は、まさにプロ中のプロ。
そして、国王という役職は人から命を狙われたり、特殊な事が多々ある。だから、そんな君をこの機に救ってあげようと……だから来ないか?人生が変わるぞ、、」
ロイは手を差し伸べる。
エリザベスはまともに人と関わるのは久しぶりであり、うれしかった。
こんな自分が頼りにされる。それだけでエリザベスはすでに満足していた。
そうして、エリザベスはロイの義理の妹として引き取られたのだった。
その中、ちとせと出会ったのは候補者を試すためロイに言われた通り、あの場所へ行き、そこへ偶然、ちとせが現れ、試した。そう言う事だ。
今でもたまに盗みを働くエリザベスのロイの出会いのお話だ。
(そういえば、あの人誰なんだろう……)
エリザベスは赤子くらいの時から捨てられているが、勿論その時なんて盗みなんてできない。
誰かに育てられたのだ。
誰なのか、女性……でも若い。
顔は分からない。そんな少しモヤがかかった記憶。
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「ここまで来ればいいでしょ……」
ちとせとイザベラはとにかく走り回りあるところに辿り着いた。
ただの行き止まり。
このゲームは制限時間20分を経過しても、1人も脱落しなかった場合,モンスターが迷路の中に出現する。勿論このモンスター達を倒せば点が貰える。
そして、制限時間は2時間、その内に優勝者が出なければ終了30分前にトロフィーが現れる。
そのトロフィーを手に入れた者こそ優勝者へとなる。
ちとせはこのトロフィーを狙い、よっぽどの時まで体力温存、と言う形だった。
「ふふふ、この作戦ならいける!」
「ホント?……」
そう思う、イザベラ。
そして、その間制限時間は20分を経過した。
そのため、その行き止まりであった壁からモンスターが出てきた。
「「でたー!!」」
2人共同じリアクションをし、直ちに逃げようとするが、ちとせは自分が護衛ということを思い出し、すぐに刀を抜き、戦闘の準備をする。
まず、相手は4メートル程のトロール。
木のバッドで大ぶりスイングをかますもすぐにちとせは避け、刀で上空から切ろうとするも……
「ちとせ!右!」
イザベラがそう言い、右を見てまると、もう一回のトロールがちとせに向かって走ってくるが、すぐさまパーカーの能力で糸を出し、相手を拘束。
そして、相手の首を跳ねそこの二体は倒れ、なんとか大事にはならなかった。
「……やるわね!私も疲れたわ……」
胸を撫で下ろし、すぐにグッドと指を立てるイザベラ。
「いや、あなた何もやってないですよね…」
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「どこへ向かうんだ?」
ルナがアーサーに聞く。
アーサーはそんなルナの声は届いていなく、ずっとエディと戦った時から疑問に思っていることを考える。
それは、あのルナの突然の魔力量、そして、威力。
かなりの大きさもあった。
それをそんな短時間で仕上げられるなんてしかも、8歳で、……不可能である。
「なぁ?、、、なぁ!ってば!」
ルナがもう一回言ってようやく、アーサーは気づいた様だった。
「ええ、トロフィーを狙いますが、それまでにもしも誰かと会い、攻撃を仕掛けられた場合、、私はそれを直ぐに戦闘不能まで追い込みます。」
アーサーは不気味に笑いそう言った。
「トロフィーか………アーロンからそう言った話を聞いたぞ!確かそれに掴めばクリアだよな?」
「ええ、その通りです。」
そうして、2人は逸れない様にルナの手を繋ぐ。
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何分経ったのだろう、、かなりの時間と距離を歩いた。
もう今が何時なのかも覚えていない。
数分が経ち、護衛達はこの広い迷路で最初を除きあんまり立ち会わない様だ。
だが、いきなり王位継承戦は進み出す。
「おっと、マジか……」
「あ、やったなこれ、、」
「…………」
「おお!また会いましたね。」
次は4人の護衛、候補者合わせると合計8人もの人が中央になぜか集まってしまった。
はたして偶然なのか、、それは分からない。
だが、王位継承戦はいきなり動き出した。
ここは、合計8人が集まったところ。
こんな出会い方は滅多にない。
そうして、黒子はすぐさま剣を抜き構える。
やる気満々だ。
「そうくるか、、」
そうして、黒子とアーサーがお互いにぶつかり、火花が散る。
そうして、エディとちとせも戦うことになり、お互いの候補者は直ぐに自分の後ろに移動させる。
「おい、ちとせ……恨みっこなし、、そんで、見てろよ、、俺のナイフ捌き」
そうして、ちとせに投げられるナイフ、
ちとせは直ぐに避けるが、思っていた以上に早くナイフがちとせの、右腕に刺さる。
(速、いざ戦うとなると、少し不味いな…………)
それに気づき、ちとせはパーカーで拘束しようとするも、すぐにその拘束が解かれてしまう。
「やるね………雷の力で糸を燃やし尽くしたのか……」
「ごめいとう、、」
2人は睨み合う。
「さあ!まさかのまさか、同じ迷路とは言え全員が一ヶ所に集まるとは!これは盛り上がってきましたよ!」
司会者がそう意気揚々としている。
会場はその瞬間、熱気に包まれる。
ここからが本番、王位継承戦である。