恐怖
朝、教室に入ると、クラスの女子たちの視線が私を避けているのを感じた。
「おはよう」
そう挨拶しても、返事は一つも返ってこない。
昨日まで笑い合っていた友達も、休み時間に何気なく話していた女子たちも、今日はまるで私の存在を無視しているかのようだ。
唯一、変わらないのは男子の態度だけだった。
この状況は昼休みに入っても続き、教室の空気は冷たく張り詰めていた。
午後の授業が終わる頃、隣の席の男子、赤崎大和が声をかけてきた。
「なぁ、石見?お前、何やらかしたんだ?」
「今朝から、女子と全然話してないんだぞ?」
「それが私にも、さっぱり分からないんだよね」
本当に分からなかった。まるで『誰か』が私と話すのを止めさせているかのようで──いや、もしかするとそうなのかもしれない。
私と女子たちは、誰かから「話すな」と命令でも受けているのだろうか。
「でも、気をつけろよ、石見」
「気をつけるって、なにを?」
「もしかしたら、相手は時崎かもしれないぞ?」
「そっか……」
私は途中で言葉を止めた。
時崎、時崎───。
「───ところで、時崎って誰?」
私には、時崎という人物の見当がつかない。
「クラス内カースト上位の、時崎真央だよ」
「そんなヤツ、いたわね」
「さっきまで忘れてたくせによく言うぜ」
「今、思い出したんだから、良いでしょ?」
「そういうことにしておこうか」
大和とやり取りしていると、突然、女子生徒が近づいてきた。
「話あるから、顔出して」
「その前に、あなただれ?」
「覚えてない?」
私は頷いた。すると彼女は何も言わず、ただ「着いてこい」とだけ告げる。
「愛想ない子だな……」
小さく、誰にも聞こえないように呟く。
少し緊張しながらも、私は彼女について行った。
行き先は、体育倉庫───その言葉を聞いた瞬間、背筋に小さな寒気が走った。




