疑惑
「ねぇ、石見さん。最近、お昼ご飯の時に教室で見かけないけど、どこに行ってるの?」
同じクラスの南武さんが、私にじっと目を向けながら尋ねてきた。
「先輩にお昼ご飯誘われてるから、一緒に食べてるの」
そう答えると、彼女の表情が少し険しくなる。
「あのねぇ、先輩は人気者なの!だから、あなた一人が独占していいようなお方じゃないのよ!分かる?」
どうやら、この女子生徒は先輩の熱狂的なファンらしい。
「ごめん、気を付けるね」
そう言うことしか、私にはできなかった。
先輩はアイドルじゃない。誰と仲良くするかくらい、先輩自身が決める権利はある。そう言いたかったけれど、私が言ったところで、火に油を注ぐだけのような気がして黙っていた。
「ほんと、気を付けてよ?」
そう何度も釘を刺される声が、心のどこかで重く響いた。
どうしたら、誰にも邪魔されずに先輩と一緒にいられるんだろう──。
考え込んでいると、外では突然の大雨が窓を叩きつけていた。
「あ、今日も傘持ってきてないな」
なんでこんな時に限って、予報が外れるんだろう。私は本当に運が悪い。
この日は、雨が止むまで学校にいることにした。
放課後になっても、雨は止む気配を見せない。
「課題でもしますか」
そう自分に言い聞かせながら、18時頃、仕方なく帰ることにした。
濡れるかもしれないけれど、こればかりは仕方がない。
帰宅すると、玄関からママの声が聞こえた。
「ただいま!」
「舞!こんな雨の中で風邪ひかなかった?」
「大丈夫だよ」
どうやらママは、雨の様子を見て早めに帰宅していたらしい。
「お風呂沸いてるから、入ってきなさい!」
「分かった」
入浴を済ませ、夕食を食べたら、早めにベッドへ。
学校で課題を終わらせてきたおかげで、明日の朝はいつもより長く眠れる。
9時15分頃、私はようやく布団の中で目を閉じた。
雨の音が窓を打つ中、静かに眠りに落ちていく。




