表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琥珀おじさんとゲンの詩の時間  作者: 真鶴 黎
企画展――琥珀おじさんとゲンの詩の時間――
31/34

理想郷

 Ⅰ

 僕は夢を見た

  それはどんな夢?


 暗闇を進む怖い夢

 灯が堕とされ、先行きも見えない荒れた道

 躓いて、転んでを繰り返すごとに足は痛む

 引き返そうにも道は消え

 もう進みたくないと止まれば不安に押し潰される


  それならボクにお任せ!

  灯の種をパラパラと、凸凹道はえいっと平らに

  足の痛みも心の痛みもどこかへ飛んでけ!

  これで少しは進みやすくなったでしょ?

  ちょっと休んで一緒に進もう!


 小さな箱庭に灯の道が続いていく



 僕は夢を見た

  それはどんな夢?


 君とにらめっこをする夢

 俯きうずくまる僕の顔を

 そっと両手で包み込んだ君の変な顔

 べろべろばあと舌出す姿に思わずくすり

 こちらの負けらしい


  それならキミの顔もむにゅむにゅだ!

  ついでにほっぺの涙もごしごし、バイバイ

  おまけでもう一回べろべろばあ

  何だかおかしくて笑っちゃった

  ボクの負け!


 小さな箱庭に笑顔の花がふわりと咲く



 Ⅱ

 僕は夢を見る

  それはどんな夢?


 時が順繰りに巡る夢

 太陽と月と星が天を周り、季節が移ろう

 何かに統治されているわけではなく

 あるがままに流れていく

 時間の便りを心待ちにする


  それならボクからもお便りあげる!

  桜の舟で空の旅

  太陽の花と背比べ大会

  お月様とお星様のおしゃべり会

  銀の花の観察日記


 小さな箱庭からのお届け便



 僕は夢を見る

  それはどんな夢?


 ぶらんこを漕ぐ夢

 迷いに迷い辿り着いた花園で

 甘い香りの中を行ったり来たり

 空まで飛べたらいいのにな

 桃の花園が水彩画みたいに広がっていそう


  それならボクが背中を押してあげる!

  せーの! よいしょ! えいや!

  空まで届け、天まで届け

  地を見続けた眼が青空に向く

  広がる天の青に恋い焦がれた


 小さな箱庭にゆらゆら揺れるぶらんこふたつ



 Ⅲ

 僕は夢を見たい

  それはどんな夢?


 ささやかな幸せを享受する夢

 日々の暮らしにちょっとの楽しみを

 ほっと一息するおやつの時間

 頬を緩ませる余白に安堵する

 呑気に羊を数えて眠りに就く


  それならボクにも願わせて!

  ボクの小さなおててに合う幸い

  それを分け与え、分け与えられ

  分けっこできるほどのゆとりがあると嬉しい

  皆が毎日楽しくいられるといいね


 小さな箱庭に羊の群れが過ぎる



 僕は夢を見たい

  それはどんな夢?


 詩を作る夢

 別になくたって生きていける

 命を救うわけではない

 苦しい思いをしたこともあった

 けれど、僕には必要なものなんだ

 

  それならボクが残してみせる!

  キミにとっての大事な宝物

  消されることなく残してみせる

  あってもなくてもいいと言われても

  キミが生きた証を残したい


 小さな箱庭に歌声響く



 Ⅳ

  ボクは夢を叶えたい

 それはどんな夢?


  皆が報われ、証を残せる夢

  苦しいも、悲しいも、辛いも

  向き合い、乗り越え、受け入れた

  逃げた、目を背けたとしても

  頑張った証は認められてほしいんだ


 それなら君が認めてやってほしい

 誰か一人でも認めてくれたのなら

 それを支えに立ち上がる

 一歩を踏み出す小さな星屑は

 いつか一等星の輝きになるはずだから


 小さな箱庭を神様が見つけた



  ボクは夢を叶えたい

 それはどんな夢?


  夢を夢で終わらせないという夢

  そっとこぼしたちっぽけなことでも

  大きな壁が立ちはだかることでも

  ゼロをイチへと近づけたい

  願わくは形にしたいと思うんだ


 それなら僕は応援しよう

 躓き、転んで、傷だらけになった僕を

 手を引いてくれた君への恩返し

 僕が持てる知識を君に授けよう

 君の夢の糧にしてほしい


 小さな箱庭に神様が手を伸ばす



 Ⅴ

 箱庭にころりんと

 欠片を神様がくださった

 内にも外にも傷のある欠片

 傷を撫でると欠片が震えた

 

 欠片を光にかざしてみた


 欠片に刻まれた傷も

 欠片の中のシャボン玉も

 シャボン玉の奥に眠る言の葉の影も

 全てが合わさった綺麗な欠片


 「その傷も大切な証だよ」

 「そのシャボン玉は息をしている印」

 「その言の葉はボクが残してみせる」

 

 きっといいもの

 ボクは欠片を持って走り出す


 ボクらの幻想が源の小さな箱庭

 ボクらの夢の原点の箱庭

 名前は理想郷


 琥珀の欠片が輝く理想郷

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ