理想郷
Ⅰ
僕は夢を見た
それはどんな夢?
暗闇を進む怖い夢
灯が堕とされ、先行きも見えない荒れた道
躓いて、転んでを繰り返すごとに足は痛む
引き返そうにも道は消え
もう進みたくないと止まれば不安に押し潰される
それならボクにお任せ!
灯の種をパラパラと、凸凹道はえいっと平らに
足の痛みも心の痛みもどこかへ飛んでけ!
これで少しは進みやすくなったでしょ?
ちょっと休んで一緒に進もう!
小さな箱庭に灯の道が続いていく
僕は夢を見た
それはどんな夢?
君とにらめっこをする夢
俯きうずくまる僕の顔を
そっと両手で包み込んだ君の変な顔
べろべろばあと舌出す姿に思わずくすり
こちらの負けらしい
それならキミの顔もむにゅむにゅだ!
ついでにほっぺの涙もごしごし、バイバイ
おまけでもう一回べろべろばあ
何だかおかしくて笑っちゃった
ボクの負け!
小さな箱庭に笑顔の花がふわりと咲く
Ⅱ
僕は夢を見る
それはどんな夢?
時が順繰りに巡る夢
太陽と月と星が天を周り、季節が移ろう
何かに統治されているわけではなく
あるがままに流れていく
時間の便りを心待ちにする
それならボクからもお便りあげる!
桜の舟で空の旅
太陽の花と背比べ大会
お月様とお星様のおしゃべり会
銀の花の観察日記
小さな箱庭からのお届け便
僕は夢を見る
それはどんな夢?
ぶらんこを漕ぐ夢
迷いに迷い辿り着いた花園で
甘い香りの中を行ったり来たり
空まで飛べたらいいのにな
桃の花園が水彩画みたいに広がっていそう
それならボクが背中を押してあげる!
せーの! よいしょ! えいや!
空まで届け、天まで届け
地を見続けた眼が青空に向く
広がる天の青に恋い焦がれた
小さな箱庭にゆらゆら揺れるぶらんこふたつ
Ⅲ
僕は夢を見たい
それはどんな夢?
ささやかな幸せを享受する夢
日々の暮らしにちょっとの楽しみを
ほっと一息するおやつの時間
頬を緩ませる余白に安堵する
呑気に羊を数えて眠りに就く
それならボクにも願わせて!
ボクの小さなおててに合う幸い
それを分け与え、分け与えられ
分けっこできるほどのゆとりがあると嬉しい
皆が毎日楽しくいられるといいね
小さな箱庭に羊の群れが過ぎる
僕は夢を見たい
それはどんな夢?
詩を作る夢
別になくたって生きていける
命を救うわけではない
苦しい思いをしたこともあった
けれど、僕には必要なものなんだ
それならボクが残してみせる!
キミにとっての大事な宝物
消されることなく残してみせる
あってもなくてもいいと言われても
キミが生きた証を残したい
小さな箱庭に歌声響く
Ⅳ
ボクは夢を叶えたい
それはどんな夢?
皆が報われ、証を残せる夢
苦しいも、悲しいも、辛いも
向き合い、乗り越え、受け入れた
逃げた、目を背けたとしても
頑張った証は認められてほしいんだ
それなら君が認めてやってほしい
誰か一人でも認めてくれたのなら
それを支えに立ち上がる
一歩を踏み出す小さな星屑は
いつか一等星の輝きになるはずだから
小さな箱庭を神様が見つけた
ボクは夢を叶えたい
それはどんな夢?
夢を夢で終わらせないという夢
そっとこぼしたちっぽけなことでも
大きな壁が立ちはだかることでも
ゼロをイチへと近づけたい
願わくは形にしたいと思うんだ
それなら僕は応援しよう
躓き、転んで、傷だらけになった僕を
手を引いてくれた君への恩返し
僕が持てる知識を君に授けよう
君の夢の糧にしてほしい
小さな箱庭に神様が手を伸ばす
Ⅴ
箱庭にころりんと
欠片を神様がくださった
内にも外にも傷のある欠片
傷を撫でると欠片が震えた
欠片を光にかざしてみた
欠片に刻まれた傷も
欠片の中のシャボン玉も
シャボン玉の奥に眠る言の葉の影も
全てが合わさった綺麗な欠片
「その傷も大切な証だよ」
「そのシャボン玉は息をしている印」
「その言の葉はボクが残してみせる」
きっといいもの
ボクは欠片を持って走り出す
ボクらの幻想が源の小さな箱庭
ボクらの夢の原点の箱庭
名前は理想郷
琥珀の欠片が輝く理想郷




