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プロローグ

「よお、アリサ、そしてガル、いつもの大将さんはどうした?」


「死んだ、狼に斜めに持ってかれた。」


「ガッハハ、そうか、これで5人いたクソガキチームも今じゃバディだな。」


「チッ、相変わらずだなオッサン、アイツと結構仲良くやってただろ。」


「そいつはお前、俺がこの歳になるまで何人知り合いが死んだと思ってる。こう見えても兄貴とか結構良い仲いった女とかいたんだぜ?全員アイツらに食われたがな。」


「チッ、これだから慣れた大人は嫌いなんだ。」


「ガルダ、どうせ私達もそうなるのだから今は気にしない。」


「俺は嫌だぜお前らの死んでも平気そうな自分はよ。」


「ガル、私はお前より先には死なない。」


「そうだと願ってるよ。」


「ガッハハ、いいねえ、俺の婚約者の言ってたセリフと一緒だぜ。」


「流石にうるさい。」


「ガハハ」


「依頼はどうする。」


「アイツの死を理由に停止する。この理由なら罰則諸々は無視出来る。」


「そうだな。」


「ちなみにこれからどうすんだよ。二人でやっていけるのか?」


「私はどっちでも良い。いや嘘、最後まであのメンバーだけでやりたい。」


「そうか、わかった。」


「ちなみにどうする、アイツの死体。未だ24時間経ってねえ」


「猶予は?」


「あと4時間、移動抜けば3時間」


「行こう。」


「アイツは眠らせてやりたい、私たちの大将だから。」


ーーー

「結局俺が最後かよ。」


 行くべきじゃなかった。止めるべきだった。


 死者の安息より生者の五十年の方が大事なのはわかってたのに。

 思ったより進行が早かった。

 俺たちが近づいた時にはもう変わってて、アイツは近づいたアリサの心臓をぶち抜いた。


 俺が動く前にアリサは手榴弾をアイツの傷口に押さえ込んで死んだ。


 俺は死体に火をつけて帰ってきた。


 そのまま昔の俺たちの拠点だった廃墟に。

 この廃墟は何も知らなかったころ、俺たちが無鉄砲だったころ外に拠点を作って一ヶ月生活した場所だ。


 一ヶ月過ごしては1日とも安全だった日はなかったし、実際最後は仲間の断末魔で目が覚めてその日からここには来なかった。


 だが今の俺には少なくともあのオッサンみたいな奴らがいるあそこよりはここにいたかった。


「ははははっ」


 誰だ笑うのは。 


「ははははっ」


 笑うんじゃねえ


「ははははははははっ」


 誰がここで笑ってやがるクソ野郎は。


「はははっ」


 俺かよ。クソ野郎は。


「はははははっ」


 信じられるかよ、昨日まで3人だった、今は一人だ。

 あのおっさん見てて俺は違うと思った。

 でも笑わずにはいられない。


 テリー、アリサ、ニッケ、カナフ、カズ。

 全員死んじまった。


 もう何も考えたく無いな。


 結局のところ俺も最後までこのチームでやりたい。

 これからどうするか、あの映画館で死ぬのもアリだなやるなら派手にやりたいな。

 一人で簡単な依頼をずっとこなしていくのもありだ。

 アイツらを覚えてやれるからな。

 でかい犯罪をして名を轟かせるのもいいかもな。

 いやよくねえこれはカナフが悲しむな。アイツは最後までいい奴だったからな。だから偽神父に頭ぶち抜かれたんだが。

  

 そんな過去を思い出してるうちにどうやら奴らが来たらしい。


 二匹だ。山羊と狼。

 仲良くやってんじゃねえよ。


「「ゴルグルルルルギャャギャ」」


 反射的に仲間を呼ぼうとした、それがアリサかテリーだったかは自分でもわからない。でも俺は知ってる。俺は一人だ。


 基本悪魔との戦闘奇襲以外は二体一、テリーみたいな才能のある奴は一対一でやり合えるが生憎俺にそこまでの才能はない。それに相手は二体だ。多分テリーでも裸に逃げ出すレベルだ。


「ははっ」


 俺はすごく怖い、一人ぼっちが怖い、誰もいない中一人で戦うのが怖い。今までずっと誰か隣にいてくれた。


 死ぬ、でもここで派手にやれば、テリーでもやった事ない二体同時相手にすればよ、天国で胸張ってアイツらに自慢できるな。


 俺は人生で最高と思える駆け出しで敵の懐に潜り込む、俺の足はアイツらの中でいちばん性能良かったんだぜ?


 そして奴の足に力の限り棍をぶち込む。

 手に伝わる骨がバキバキに折れる音。そして俺は真っ先に距離を取る。狼が崩れ落ちる。崩れ落ちる際も目はこちらを見続け爪でこちらにかすり傷を負わせてきた。



 そして距離を取り少し離れたところでもう一匹と向き合う。

 奴の片方が油断していて助かった、殆ど奇襲に近い形で足を奪うことができた。


 足を奪っても奴らが恐ろしいことには変わらないが、少なくとももう一匹と距離を離させることができた。


 相対するのは山羊だ、強力な脚力と鉄を曲げる突進力、喰らったら即死だ。

 だが比較的動作はわかりやすいと言われている。

 少なくとも狼ほど読みづらくは無い。


 突進を避け頭に一撃を加えるが角が邪魔で強く入らなかった。山羊はそのまま壁をぶち破って部屋を連結させる。


 気が付くと狼が片足と両腕で這ってきている。

 俺は段差を飛び越し建物の外に出る。


 山羊が壁を破ってくる。そして俺を見つける前に首に一撃ぶち込む。折った。首があらぬ方向に曲がった。


 もう満足に突進は出来ない。


 それでも脚の一撃を喰らえば一撃でお陀仏だから油断できない。だが奴は頭を楽に使えない今までのようには視界の確保ができない。


 俺は素早く回り込み奴が振り向く前に心臓に持ち手の布を取り払い棍の尖った根元を突き刺す。テリーと被るのが嫌だったから俺は槍を棍にした、実際棍は俺の性に合っていたが、確実に殺しておきたい。引き抜きもう一度突き刺す。


 首が折れても大量に出血しても大丈夫なのに心臓を人差しされたらすぐに力を失うのは化け物にしては呆気ない。


 山羊が倒れ伏したのを見てすぐに狼に元へ向かう。奴はこちらに来ようとしていた。だが足のせいでうまく段差を超えられないようだ。俺は容赦なく頭を何度も槍で突き刺し腕を突き刺し、背中を突き刺した。まだ死なない。


「うはははは、おい、まだ死なねえのかよクソ化け物が。」


 俺は腕を何度も刺し脆くなったところを引きちぎった。

 それでも奴は悲鳴をあげない。殺意だけだ。


 もう片方の腕も足もやったが悲鳴ひとつあげない、唸り声だけだ。


「くそが」


 期待したものが得られなかった俺は狼の心臓を突き刺して殺した。


 やり遂げたが、釈然としない。満足感もない。


 ただ虚しい。



 そうだ、一人は虚しい、やはり仲間がいる。


 一緒に死ぬ仲間を探そう。


「ははっ、ははははははは」




 ガル・プナパラル

 生涯戦果421、複数のチームに入り毎回彼のみ生き残る、よって死神と呼ばれた。

 最後は映画館での老衰で人生に幕を閉じる。

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