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殺戮學園逝徒會畸譚  作者: 坐久靈二
第四章 殺戮學園と一つの大事業

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第八十話 或る青春の感傷的な追憶

Pereat tristitia, Pereant osores, Pereat diabolus, Quivis antiburschius, Atque irrisores! (悲しみを遠ざけよ。憎しみを滅せよ。憎しみの悪魔を滅せよ、私達学生に徒なすものを、私達学生を嘲るものを!)


(中略)


Alma Mater floreat, Quae nos educavit; Caros et commilitones, Dissitas in regions Sparsos, congregavit; (私達を育てる学びの園は栄える。教えの源。学生よ、仲間よ遠方より集まる者達よいざ旅立ち、又、いざ集え!)


――学生歌『ガウデアムス (Gaudeamus)』より。

 その後、華藏(はなくら)學園(がくえん)假藏(かりぐら)學園(がくえん)を三週間に(わた)って混乱の渦に巻き込んだ騒動は収束を迎えた。公には両學園(がくえん)生徒(せいと)會長(かいちょう)が共謀して起こした、常軌を逸した學園(がくえん)の占拠及び暴動として華藏(はなくら)假藏(かりぐら)學園(がくえん)事件の名で世間の耳目を集め、記憶される事となった。

 又、華藏(はなくら)月子(つきこ)には隠された双子の姉妹がいた事は隠せず、華藏(はなくら)生達にとって親しんだ生徒(せいと)會長(かいちょう)と一連の事件を首謀した悪女は別人として認識され、処理されるに至った。


 華藏(はなくら)學園(がくえん)に侵入していた假藏(かりぐら)生 (多数:紫風呂(しぶろ)来羽(くるは)等)、並びに假藏(かりぐら)學園(がくえん)に攫われていた華藏(はなくら)生 (一名:仁観(ひとみ)嵐十郎(らんじゅうろう))は教師陣や裏理事会の介入の下でそれぞれの學園(がくえん)に返された。特に、假藏(かりぐら)生には素直に従わない者も多かったが、仁観(ひとみ)嵐十郎(らんじゅうろう)と裏理事会の脅し、『弥勒狭野(ミロクサーヌ)』のトップ二人の死亡、そして、分離措置に巻き込まれて死ぬ可能性が基浪(もとなみ)(けい)を例に出して説明された事などがどうにか功を奏し、皆元の所属へと戻っていった。


 そして竹之内(たけのうち)父娘によって(ほこら)の解析が行われ、二つの學園(がくえん)は三週間の融合に幕を下ろした。


 事件の後、華藏(はなくら)學園(がくえん)假藏(かりぐら)學園(がくえん)が被った批難は当然のものとはいえ凄まじかった。特に、多くの生徒を死なせ、教師二名と理事長、更には経営者たる華藏(はなくら)家をも喪った華藏(はなくら)學園(がくえん)は存続の危機に立たされた。

 戸井(とい)宝乃(たからの)を中心とした当の生徒達が存続に向けて運動を起こしたのは、真里(まり)愛斗(まなと)華藏(はなくら)月子(つきこ)と対峙した時に語った言葉が皆の誇りと愛着を守ったからだろう。結果として、経営は竹之内(たけのうち)灰丸(はいまる)が理事長となった事で、どうにか事態は終息に向かった。


 平穏を取り戻した學園(がくえん)では約三カ月、生徒會(せいとかい)が機能しない時期が続いた。残された仕事は愛斗(まなと)が教師や親しい友人と協力して(こな)したが、その忙しさは憑子(つきこ)の下で働いていた時と然程(さほど)変わらなかった。戸井(とい)等は、この状況で大して変わらないとはあの頃どれだけ扱き使われていたのか、と呆れていた。九月に新任の生徒會(せいとかい)役員が選ばれる迄、それは続いた。


 そして更に半年の時が流れ、三年生は卒業式の時を迎えた。




☾☾☾




 三月、卒業式。出席する事になっているのは三年生のみだが、中には二つの意味で例外も存在する。

 先ず、三年でありながらこの日を迎える事が出来なかった者達。生徒會(せいとかい)副會長(ふくかいちょう)基浪(もとなみ)(けい)、前会計・砂社(すなやしろ)日和(ひより)。彼等は華藏(はなくら)月子(つきこ)とその分身である『學園(がくえん)の悪魔』によって殺害され、『闇の眷属』として利用され、操り人形にされていた。そして、前生徒(せいと)會長(かいちょう)華藏(はなくら)月子(つきこ)として學園(がくえん)を導いてきた憑子(つきこ)も又、名目上は姉の名で二人と一緒にそこに並んでいる。


 そして、式場となっているホールでは、入學式(にゅうがくしき)と同様に現生徒會(せいとかい)副會長(ふくかいちょう)が司会進行を務める事になっている。此方(こちら)は、三年生ではない者の中で出席しなければならない数少ない例外である。

 現生徒會(せいとかい)は、昨春に発生した大事件と、それに伴う學園(がくえん)存続の危機に率先して立ち回り、事態解決に大きな貢献を果たした事で全校生徒の信任を得た二人の生徒を中心としている。


『続きまして、在校生を代表し、生徒(せいと)會長(かいちょう)による、祝辞を卒業生に送ります。』


 次の式目を読み上げる小柄な少女は、現生徒會(せいとかい)副會長(ふくかいちょう)戸井(とい)宝乃(たからの)である。そして、壇上に上がろうと前に出るのも又、小柄な男子生徒である。


『高等部生徒(せいと)會長(かいちょう)真里(まり)愛斗(まなと)君。』

「はい。」


 愛斗(まなと)は緊張しながら壇上へ歩を進めた。雁首を並べて椅子に(すわ)る卒業生達へ祝辞を送る、その状況に愛斗(まなと)は一つの事を思わずにはいられなかった。


(五年前、この場所の生徒(せいと)會長(かいちょう)祝辞から全てが始まったんだ。あの時は(ぼく)彼方(あちら)側で(すわ)っている一人で、言葉を送ったのは華藏(はなくら)先輩だったけど……。)


 これ程の緊張、中学生の身で卒無く(こな)した彼女は敵(なが)矢張(やは)り凄いと、愛斗(まなと)は感心せざるを得なかった。こんな中で大欠伸(おおあくび)をされたら腹を立てる気持ちも解らなくは無いと思った。そして、そんな彼女の不興から始まった青春、運命に決着をつけ、終わらせるのにはこれ程絶好のシチュエーションもあるまい。


 愛斗(まなと)は自身を落ち着ける様にゆっくり吐息を吸い、そして吐き出した。目の前の席に並ぶ卒業生の中に、居ない筈の三人が見守っている様な、そんな錯覚がした。


(ええ、大丈夫。ちゃんと出来ますよ。基浪(もとなみ)先輩、砂社(すなやしろ)先輩、そして、憑子(つきこ)會長(かいちょう)……。)


 心が凪いだ愛斗(まなと)は、ゆっくりと語り始めた。


「卒業生の皆様、おめでとうございます。皆様が今日この日を迎えられました事、心より御慶(およろこ)び申し上げます。特に今年は、春先から理不尽で傷ましい、大変な事件が學園(がくえん)を襲いました。その際、誠に残念ながら命を落とされ、この場に顔を揃えられなかった先輩方もいらっしゃいます。」


 三人分の席が敢えて空けられている。


(いず)れも、前任の生徒會(せいとかい)役員として皆様の、(ぼく)達の學園(がくえん)生活をより良いものにする為に尽力された良き先輩方でした。學園(がくえん)生活という(ぼく)達の人生の一(ページ)には、確かに彼等が居ました。それは人生百年時代と言われる現代に()いて、僅か数年という極一部に過ぎません。皆様の、(ぼく)達の人生はこれから何十年と続く事になろうかと思われます。一方で、彼等の人生は余りにも短かった。果たして、十数年で終わってしまったそれらは無駄なものだったのでしょうか。」


 愛斗(まなと)が思い起こしているのは卒業生となる筈だった前生徒會(せいとかい)役員三名だけではない。彼と同じ学年の級友、親友であった西邑(にしむら)龍太郎(りょうたろう)も又、この一件で命を落としている。それを踏まえ、愛斗(まなと)は力強く言い切る。


「決してその様な事は無い、と(ぼく)は信じます。短ければ無駄だというのなら、(そもそ)もこの學園(がくえん)で送った時間そのものが無駄だという事になってしまいます。しかし、そうではないからこそ(ぼく)達はこの華藏(はなくら)學園(がくえん)の存続を願いました。彼等と過ごした日々が、彼等の人生の最後の一時が、掛け替えの無いものだと信じたからこそ、今日迄歩んで来られたのだと思います。」


 卒業生の中で一人、愛斗(まなと)が噛み締めているものを理解している人物が居る。仁観(ひとみ)嵐十郎(らんじゅうろう)はただ黙って愛斗(まなと)を見守っていた。壇上の愛斗(まなと)もその視線に背中を押された様な気がして、思い出や悲しみに負けずに話しを続けられている。


(ぼく)達が學園(がくえん)で過ごした日々は彼等が生きた証です。世間には、彼等が華藏(はなくら)學園(がくえん)に殺されたのだという人も残念ながら居るでしょう。それを否定するのは困難かも知れません。しかしそれでも尚、華藏(はなくら)學園(がくえん)の生徒として過ごした日々は(ぼく)等の誇りに成り得ると信じます。誇りを胸に、堂々と社会に出て行く事が彼等に報いる道だと信じます。」


 愛斗(まなと)華藏(はなくら)月子(つきこ)に対峙した際に言われた言葉を思い出していた。彼女が言っていた言葉は一遍の真実である。華藏(はなくら)學園(がくえん)は元々、人材育成とは無関係な神秘主義的で歪んだ目的の為に設立されているし、教育機関としてその目的を果たす事を目論んでいた面もある。

 だがそれでも、學園(がくえん)が自分達に施したものは誇りとして良いのだと、彼女の言葉に改めて反駁(はんばく)しておきたかった。


「卒業生の皆さん、皆さんは(ぼく)達の先陣を切り、彼等と共に過ごした華藏(はなくら)學園(がくえん)を胸に社会へと出て行かれます。どうか(ぼく)達の手本として道標を築いてください。同じ學園(がくえん)を旅立つ(ぼく)達に、素晴らしいこれからの人生を先んじてください。皆様の将来に幸多き事を願い、祝辞に変えさせて頂きたいと思います。御清聴、どうもありがとうございました。」


 スピーチを終えた、愛斗(まなと)は一歩下がり、深々と頭を下げた。最初に仁観(ひとみ)が手を叩き、続いて司会進行の戸井(とい)、それらに触発される形で割れん許りの拍手が巻き起こり、式場に反響して愛斗(まなと)を包み込んだ。愛斗(まなと)はその群れの中に、再び前生徒會(せいとかい)役員の三人、基浪(もとなみ)(けい)砂社(すなやしろ)日和(ひより)、そして憑子(つきこ)の幻を見た。更には彼の背後から、二人の男がそれに加わっている様な気がした。


(ありがとう、西邑(にしむら)。ありがとうございます、聖護院(しょうごいん)先生、基浪(もとなみ)先輩、砂社(すなやしろ)先輩、そして、憑子(つきこ)會長(かいちょう)……。)


 鳴り止まない拍手を背に、愛斗(まなと)は壇上から降りて行った。戸井(とい)から無言の内に労いの微笑みを送られ、愛斗(まなと)は少し照れ臭くなって微笑(ほほえ)み返した。


 戸井(とい)に次の式目が読み上げられ、卒業式は続く。




☾☾☾




 同日、假藏(かりぐら)學園(がくえん)でも卒業式が()り行われた。(ほこら)による繋がりが断たれた今、華藏(はなくら)學園(がくえん)とは七十キロを隔てた遠くの學園(がくえん)であり、姉妹校が御互いどの様な式であろうが本来は特に関係が無い。しかし、一部の卒業生や生徒には華藏(はなくら)學園(がくえん)愛斗(まなと)がスピーチを行ったという話が伝わってきていた。


「嗚呼、(おれ)愛斗(まなと)君に見送られたかった……。」

「お前は卒業生じゃねえだろ。てか、何で居るんだよ。」

「まあまあ……。」


 二年生の紫風呂(しぶろ)来羽(くるは)に、卒業生の相津(あいづ)諭鬼夫(ゆきお)が突っ込みを入れ、、将屋(しょうや)杏樹(あんじゅ)(なだ)める。三名共、両學園(がくえん)の融合騒動が元で愛斗(まなと)と交流を持った假藏(かりぐら)生達だ。


愛斗(まなと)君……(おれ)の心の天使、御主人様……。仮令(たとえ)二度と会えなくても、(おれ)の心は(きみ)の物だからね……。」

紫風呂(しぶろ)、すっかり変っちまったな……。」

「もう頂点(テッペン)を獲ろうとかいう気は更々無さそうだね……。」


 実際、事件が終わってからの紫風呂(しぶろ)は大人しいものだった。假藏(かりぐら)學園(がくえん)では『弥勒狭野(ミロクサーヌ)』壊滅の隙を見て頂点を巡る争いが(むし)ろ激しくなったが、彼はそれに一切関わろうとしなかった。(もっと)も、それは相津(あいづ)も変わらなかった。


「なんつーか、(おれ)もそうだが思う所が有ったんだな、真里(まり)ちゃんと関わり合いになって。」


 染み染みと語る相津(あいづ)と、上の空で自分の世界に浸り込む紫風呂(しぶろ)。一方で、将屋(しょうや)はふと一つ思い立った。


「そう言えば、あいつと関わって生き方というか、運命が変わったのは(わたし)達だけじゃないんだよね。」

「ん?」

「いや、後から聞いた話なんだけどさ……。」

「ああ……。」


 假藏(かりぐら)學園(がくえん)に居た相津(あいづ)将屋(しょうや)がそれを聞いたのは全てが終わった後の事だった。一応、事件に関わった者として事の顛末を知る権利が有るという事で、竹之内(たけのうち)灰丸(はいまる)から大まかな話は聞かされていた。


「ある意味、真里(まり)愛斗(まなと)に関わって人生が狂った、その最たる例が華藏(はなくら)月子(つきこ)だったのかも知れないね。」

「そうだな。あの女も真里(まり)ちゃんに関わらなければ今でも華藏(はなくら)家の御嬢様として好き勝手に他人を傷付けてたんだろうな。」

 「(くろがね)の奴も、(もと)(ただ)せばあいつに思わぬ敗北を喫してから破滅へと急降下して行った感じがするよ。」


 相津(あいづ)紫風呂(しぶろ)の方へ目を遣った。(かつ)ての凶悪な為人(ひととなり)からすっかり変わり果てた彼を見て、心に去来する奇妙な(もや)は何なのだろう。


「果たして、本当の魔性は華藏(はなくら)月子(つきこ)だったのかな?」

「怖え事言うなよ、将屋(しょうや)……。」


 答えが何れにせよ、恐らくもう彼等が愛斗(まなと)と関わる事は無いだろう。




☾☾☾




 華藏(はなくら)學園(がくえん)は立ち入り禁止の山道、その最奥の(ほこら)の前で、卒業式の式目を終えた愛斗(まなと)は一人黄昏(たそがれ)ていた。


「いけませんねえ、この山道は今も立ち入り禁止ですよ、真里(まり)君。」

「理事長先生……。」


 背後から竹之内(たけのうち)灰丸(はいまる)が話し掛けて来た。


「すみません。ただ、何か呼ばれた様な気がして……。」


 愛斗(まなと)(ほこら)をじっと見詰めている。春の連休を利用した生徒會(せいとかい)の合宿で憑子(つきこ)と共にこの場所を訪れてから、あの一連の事件は始まった。


「おー、居た居た。愛斗(まなと)君、こんな所で何やってんだ?」

「やっぱり此処(ここ)だった。真里(まり)、この一年何度も此処(ここ)へ来てるって、皆噂してるよ。」


 仁観(ひとみ)戸井(とい)まで現れた事に、竹之内(たけのうち)は呆れた様に溜息を吐いて微笑んだ。


「全く、問題児だらけですね。」


 そうは言いつつ、三人は愛斗(まなと)と共に(ほこら)を囲む。


「この(ほこら)、どうするんですか?」

「力そのものが失われた訳ではありませんからね。引き続き、學園(がくえん)で管理する事になるでしょう。大幅に人数を減らしたとはいえ、『裏理事会』の役目は未だ終わりそうにありません。」

「そうですか……。」

真里(まり)君、それと仁観(ひとみ)君。()し宜しければ、卒業後は『裏理事会』の一員として協力しては頂けませんか? 副業として、で結構ですので。」


 愛斗(まなと)にとって、それは予想していた申し出だった。


(おれ)はパス。(りょう)君の分まで、全身全霊で己の生き方を全うしなきゃなんねえからよ。」

(ぼく)は……。」


 仁観(ひとみ)が断った理由を聞き、愛斗(まなと)は少し考えた末に答えた。


「お受けします。何だか、誰かがそうしろと言っている様な気がするんです。」

「また? 真里(まり)、何か変な物でも食べたの?」


 呆れる戸井(とい)だが、愛斗(まなと)の答えは変わらない。


「それは良いけどよ、そっちは飽く迄副業だろ? 人生の本道、本命の進路はもう決めてあんのか?」

「少し考えたんですが、西邑(にしむら)と同じ道を(ぼく)も歩んでみようかな、と……。手始めに、今回の事件を一寸(ちょっと)書いてみたいなとも思っているんですよ。あ、勿論、人物や出来事等々、その(まま)では決して書かないですけどね。」

「小説家か。ま、いいんじゃね? 一度切りの人生なんだから、生きたい様に生きれば。」


 仁観(ひとみ)愛斗(まなと)の背中を強く叩いた。彼としては軽くのつもりなのだろうが、相変わらず力が出鱈目に強い。


仁観(ひとみ)先輩、真里(まり)の背骨が折れたらどうするつもりですか?」

「んな大袈裟な。」

「いや、先輩の場合あながち余計な心配じゃないので気を付けて貰えると有難いです。」

「ちぇ、何だよ……。」


 四人は(ほこら)を後にしようと、(きびす)を返して歩き始める。

 ふと、一陣の風が愛斗(まなと)の後ろ髪を引いた気がした。不思議な感覚を抱いて(ほこら)の方へ振り向いた愛斗(まなと)だったが、そこには変わらず何処(どこ)か妖しげに、小さな(ほこら)が立っているだけだった。


「……また来ますよ。」

「ん、今何か言いましたか?」


 示露裡(ジロリ)愛斗(まなと)に釘を刺すように視線を向ける竹之内(たけのうち)には小さく笑って誤魔化し、愛斗(まなと)は帰路に就く。


『いい子ね、(わたし)真里(まり)君……。』


 立ち去る背中の向こうに、一人の美少女を模った(もや)が立ち込めていた事に愛斗(まなと)達は誰一人として気付く事は無かった。

 否、愛斗(まなと)は何となく察していたのかも知れない。


(また、来ますよ。屹度来ます。来年の春に……。)


 或いは、単なる彼の妄想、願望に過ぎないのだろうか。

 

 最後まで御読みいただき誠にありがとうございました。

『殺戮學園逝徒會奇譚』、どうにか完結まで漕ぎ付く事が出来ました。

 元々、終盤の展開が書きたいが為に衝動の赴くままに好きな人物造形を詰め込んで書き始めた本作ですが、中々に物語を動かすのが思っていた以上に難しく、コントロールに苦労が絶えない作品となりました。

 そのせいか、前作以上に苦しい事もありましたが、その分書きたかった終盤はとても楽しく、また序盤から中盤の展開を書く途上でも自分の中で何かを見付ける事が出来たとも思っています。

 

 もしお気に召して頂けましたら、フォローや評価、感想等頂けますと感無量であります。

 また、過去作や次回作にも目を通して宜しければ感謝に言葉も御座いません。


 では、改めまして、最後まで御付き合いくださいましたことに心より御礼申し上げます。

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