プロローグ(1)(2)
めっちゃ面白い作品を皆さんに届けたい!!この一心で書かさせて頂きます!!
プロローグ1
「シン」
「どうしたの?母さん」
優しい声音が耳をくすぶる。いつも母さんが俺を呼ぶ時の声は芯がありとても穏やかな声だった。俺は母さんに名前を呼ばれるのが好きだった。
「ふふっ、なんでもないわ。ただシンが何処か遠くへ行ってしまいそうで……駄目ね心配性かしら」
そんな母さんの表情は何処か遠くを見つめ何を危惧しているのか不安気な表情だった。しかし幼い自分にはこの時の母さんの表情の意図が分からなかった。
「大丈夫だよ母さん。俺はここに居るよ」
「そうね、シンは確かにここに居るわね」
幼い自分は無邪気に笑って言葉を残した。それに応じるように母さんも穏やかな笑みを浮かべる。何気ない毎日の一ページ。思い出の欠片。幼い自分はこんな幸せな毎日が続くと愚かにも思っていたのだろう。
──そう。何もかも失って無慈悲にもこの残酷な世界を知ってしまったあの日。もう戻ってはこないと現実を知ってしまったあの日を。
プロローグ2
《システムコール》《コード転送》《認証完了》《転送準備開始》《転送まで六十秒》
「ベルローゼ大将……いえ、お父様」
《59》
「どうした、我が娘よ」
《58》
威圧感のある低い声が式の間に響き渡る。ここは『転送の儀』を行う為の部屋だ。壇上に立つ男、額に傷跡があり肩幅が広く体長が二メートルを超える大男、歴戦の戦いを示すかの如く顔は強面で雰囲気のある佇まいだ。
「無事、帰還してみせます。そして私たち神族の繁栄の為にも」
《49》
「……。立派になったものだな。こちらの情勢は見ての通り不利な状況だが……あの忌々しい悪魔の事は任せろ。……ラフィア」
《48》《47》《46》
「はいお父様」
少し間が空いたタイミングでお父様の低い声音が私の名前を呼ぶ。いつぶりだろうか。お父様に名前で呼ばれたのは。久々に名前で呼ばれどこか嬉しい気持ちになるがこの嬉しい感情は一つの不安に掻き消される。見ず知らずの世界に放たれるのだ。身が震える程の恐怖で足が竦む。そして、もう当分お父様のこの低い声が聞こえないと思うと悲しくなる。
「本当は我もついて行きたいのだが立場上、この戦場を抜け出すことは叶わない。それに『転送の儀』は十年に一度しか執り行うことが出来ない。だから……我の愛しのラフィアよ。無事に帰るのだぞ」
《30》《29》《28》
《転送プログラム遂行まで残り30秒を経過しました。直ちに対象者以外は魔法陣からの退出を願います》
機械仕掛けの音声データがどこか鬱陶しい。最後の最後まで行きたくないと思う自分をお父様に悟られない様に震える声を必死に抑えて私はこう言った。
「大丈夫だよパパ。絶対に帰ってくるから。だからパパも悪魔なんかに負けないでよ!」
「あぁ、お互いに。今度会う時はたくさんの土産話をお互いに言い合おう」
「うん!」
《13》《12》《11》《転送プログラム遂行まで残り10秒。これより特級転送魔法を展開》《対象者を世界線Xに転送》
《3》《2》……
お父様。行ってきます……。
《1》
目の前に広がる夜空の星が視界全体に広がってゆく。一筋の流れ星を彷彿させる様な光が地上に降り立った。
面白そう!!これから期待!!って思ったそこの人!ブックマークや感想お待ちしております!!