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第97話 豪快に破壊※挿絵有り

追加した挿絵はホクトの成長ぶりからするともう少し後の時間ぽいけど二人の親子イメージはこんな感じです。

【ホマレ視点】


「おりゃぁぁぁぁぁっ!!」


 伸縮する鼻を鞭の様にしならせ振るうガネシアン。

 高速の動きに対応しながら刀で捌いていくが傷はつかない。

 この調子だとあの脚を叩き斬るのは無理だよな。

 それならば!!


 鼻の攻撃をかいくぐり懐へ飛び込む。

 【ブレードモード】から【ノーマルモード】に素早くチェンジすると片脚に組み付く。

 叩き斬れないなら持ち上げて脳天から叩きつける!!


 だが組み付いた瞬間、脚から無数の棘が生え俺の身体を貫く。


「ぐあああっ!」


 手を離し後退した所に鼻の薙ぎ払いを受け地面に倒されてしまった。

 そこへその巨大な脚での踏みつけ。

 俺は強烈なスタンピングを転がりながら回避して距離を取った。

 攻守ともに中々隙が無いな。ここはランペイジで……いや!!

 こういうデカくて硬い奴ならおあつらえ向きのがあるじゃないか。

 先日、リムが俺に託してくれた能力が!!


 頭の中でその力をイメージして腕をクロスさせる。

 ランペイジとは別の、メカメカしい鎧が出現して宙を舞い全身に装着されていく。

 その名もデュランダル【ソリッドモード】!!

 男のロマンが詰め込まれた戦闘モードだ。


 ガネシアンが鼻を振るい薙ぎ払おうとする。


「カッター!!」


 俺は右腕の装甲を変化させカッターアタッチメントを装着。

 鼻を挟み込むと一気に切り落としてしまった。

 突然宙を舞う自分の鼻に焦るモンスター。


 次は巨大な杭打ち型アタッチメントに変化させ背面にあるバーニアを吹かしながら加速して堅牢な脚へ狙いを定める。


「インパクトブレイカー!!」


 叩きつけられた杭が防御の為に生えた棘を砕き脚に穴を開けた。

 リムは小さな頃から『大きくて』『硬い物』を叩き壊すのが好きというちょっと物騒だがかわいい妹だった。

 ゴーレムなんか出てきたら歓喜し率先してメイスで砕きに行っていたからな。

 この【ソリッドモード】はそんな風にただひたすら『破壊』に特化した形態。

 攻撃を正面から受け止め、超パワーで破壊する。おおよそヒーローらしくは無い戦い方だ。


「!!!」


 後退しかけたところを更にバーニアで上昇し追撃。

 狙うのは額の目。見ると透明の膜で保護されているが俺の前では無意味。


「インパクトブレイカー!!」

 

 加速と共に叩きつけられた杭が膜をぶち破り額の目を破壊。

 激痛で暴れまわるガネシアンから離れ胸の装甲を展開させ砲を露出させる。


「レッキングクラッシャァァァァ!!」


 破壊の為のエネルギー弾が額の傷目掛け放たれ着弾。

 着弾箇所を中心にはじけ飛びガネシアンの巨体が地面へとゆっくり倒れて行った。


 倒れたモンスターの口から何かが零れ落ちた。

 それは目を回しているゲソボットの首だった。

 こいつ、食われてやがったな。何処までもお騒がせな奴だ。


 変身を解いた俺は捕縛用のロープでゲソボットの首とガネシアンの亡骸を結んだ。

 馬車を横転させてるし、とりあえず逮捕だ。


 さて……

 俺は大切な家族達へと駆け寄って行く。


「お前達、大丈夫だったか!?」


「ジェス君、あたしの必殺技弾かれちゃったんですよー」


「よし、大丈夫そうだ!」


「酷いっ!いつもだけど!!」


 ナギはアルを抱いて『うんうん』と頷いていた。

 隣に一般人の女性が居るな。確か姉さんの職場で見た事がある娘だ。

 とりあえずあちらも無事そうだ。ならば……


「フリーダ、お前その」


「ああ、安心しな。セシルが身体を張ってくれたからわたしは無事だよ」


 その言葉にセシルが歓喜していたがとりあえず後で撫ででやるとして今は放っておこう。


「えーと、それで医者の方は……」


 フリーダは満面の笑みで微笑む。


「勿論、確定。おめでただよ。まだどっちかはわからないけど」


「よぉぉぉっし!!」


 思わず叫んでいた。

 いかん。一応職務中だった。 

 いやでもなぁ、こんなの叫ばずにはいられないぞ? 

  

「ふふっ、アルも良かったねー。お兄ちゃんになるよー?」


 これはますます色々と頑張らなきゃいけないな。


「さて、ここであんたにひとつ問題だ。さっきから気づいてはいると思うがナギの横に女の子がいるよな?あれ、誰かわかるか?」


 フリーダが示した娘がビクッと緊張した表情で俺を見る。


「え?ああ、あの娘か。確かサウスベリアーノのギルド受付嬢だよな?新人の子」


「うん。それもあってますけど具体的に『誰』かわかりますか?」


 セシルの言い方だと俺の知り合いって事か。

 はて、記憶力はいい方だが誰だろう?

 じっと見つめると顔を赤くして俯く。正直かわいい反応だと思うがこんな娘知り合いに居たか?


「えーと、俺はお嬢ちゃんとどこかで出会ってるんだよな?誰だろう?まさかあれか!親父の隠し子、つまり新たな妹的な!?」


 自分でも割と頓珍漢な答えだと思う。

 妻達と息子、そして受付嬢の娘が明らかに失望の色を見せた。

 やがて彼女はスケッチブックを取り出すと何か書き始める。


『そうやってまた子ども扱い。がっかり』


 んんっ?

 このやり取りの仕方って……ひとりだけ知ってるぞ?


「あれ?え?だけど……」


『最近孤児院に来なくなったね。まあ、もう出てるけど』


 間違いない。これはあいつしかいない。


「まさか、クリス!?」

 

 すると彼女はうんうんと頷く。

 この娘がクリス!?え?だってあいつは……ぇえっ!? 

 妻達の方を見るとニコニコ笑っていた。


「まさかお前…………女装趣味があったのか!?」


 直後、フリーダに足を踏まれ、セシルにでこチョップをされ、ナギに脳を揺らされた。


□□

 

 まさかクリスが女の子だったとは。

 しかも本名は『クリスティーナ』。完全に女の子じゃん。

 てっきり『クリストファー』とかだと思ってた。


「とりあえず。二人目おめでとう。順調に幸せみたい」


 そういや普通にしゃべることも出来る様になってたんだな。

 素直に礼を言うとクリスはチラチラと俺に視線を送る。えーと…… 


「それで、どう……かな?私。その……この格好」


「あ、ああ」


 髪を伸ばしスカートをはいたクリスはすっかり女の子だ。


「そ、そうだな。良く似合っている。可愛いと思うぞ。実際よく口説かれてるもんな」


「あっ、見てたんだ……」


「ああ。その度に姉さんが出て来て威圧していたな」


 基本的に業務中の受付嬢を口説くのは禁止だからな。


「マスターにはいつも助けていただいてるから……まあ、いくら口説かれてもなびく気は無いけど」


「そうなのか?まあ、それでも今のお前なら本気出せば彼氏くらいすぐできるさ。保証するよ」


 クリスが口をへの字に曲げ俺を睨む。

 いかん。もしかしてこういうのってセクハラになったりするのか?


「まあ、予想以上のダメっぷりでしたが、第1段階はクリアですね」


「確かに。ホマの鈍さは筋金入りだからねー」


「わたしなら今ので蹴りを入れてる所だけどクリスは大人しいな」


 何やら妻達がよくわからない事を言っているが俺がいけない事をしたのは伝わった。


「その。なんかごめんな。怒らせちゃったなら……」


「はぁ、別にもういい。これくらいの方が努力のし甲斐がありますから」


 言うとクリスは俺を指さし宣言した。


「今後、時々お邪魔させてもらいます。フリーダさんやナギさんのお手伝いをしながらいろいろ学ばせていただくんで」


「え?」


「いいですよね?」


 クリスが妻達に視線を送る。

 

「ああ。そうだな。私は動きにくくなるし」


「ナギもリスティが来てくれたら助かるねー」


 何だ、あだ名をつけてもらってるなんてもうナギと『仲良く』なったのか。


「あの、クリスちゃん。あたしの事忘れてません?」


「もちろん、セシルさんからも色々学びます。それに、フリーダさんの次はあなたなんでしょう?私が居たら、色々都合がいいですよね?」


「ふふっ、その意気や良し!ですね」


 何だか大人びてきたなクリス。


「それじゃあ、色々と助けて貰うかもしれないが、よろしく頼むよ、クリス」


 手を差し出すとクリスは急に顔を真っ赤にしてスケッチブックコミュニケーションに切り替えた。


『こちらこそよろしくお願いします』


「いや、そこは元に戻るのかよっ!?」


 こうして、事件は解決した。

 ゲソボットの身体は無事回収され、危険行為の罪で首と一緒に逮捕。

 色々な余罪が出てきたブロームと仲良く監獄へ送られる事となった。


 第2子がフリーダのお腹にいることが確定し喜びも束の間、俺は膨大な報告書に忙殺される事となったのだった。

 くそ、あの転売ヤーめ!!


□□□

 そして季節は巡る。

 厳しめの冬を越え、陽気な春を終えて夏が始まったある嵐の夜。

 フリーダが子どもを出産した。


 今回はクリスも手伝いに来てくれて前回よりもさらに万全の態勢で挑んだ。

 俺も2度目となると訳が分からなくなったりはなく、冷静に彼女の手を握って傍に居た。

 途中何度か雷が暴発して俺がしびれたが想定内だ。


 フリーダは呼吸を整えながらセシルに笑いかけ言った。


「次はあんたの番だけど……無茶苦茶痛いぞ?」

 

「ひぃぃっ!?」


 いつかの意趣返しを喰らい、セシルは思いっきりビビッていた。

 まあ、その辺は自業自得だ。

 

 生まれて来てくれたのは男の子で生まれた時のアルよりも大きかった。


「生まれて来てくれてありがとう。ようこそ、この世界へ」


 二人目の息子に祝福の言葉を贈り、今度はアルを抱きかかえて弟を見せる。


「ほら、お前の弟だぞ。兄貴になったんだぞ?」


 アルはじっと弟を見つめていた。

 よしよし、きっと色々と感じるものがあるんだろうな。


「ホマレさん、アル君、うんち漏らしてます」


「なっ!?」


 感慨にふけっていたらクリスのツッコミで現実に引き戻された。

 クリスは俺からアルを受け取るとおむつを替える為に別室へ連れて行っていた。

 流石俺の息子、一筋縄ではいかないな。

 喜びが全身を包む中、座っていたおふくろを見てふと妙な違和感を覚えた。

 だがそれは一瞬の事で、新しい孫の誕生に親父と一緒に顔をニヤけさせるいつものおふくろがそこにはあった。

 何だったんだ。今の違和感……

 

 

 レム・ホクト

 生年月日:星歴1244年7月9日

 肩書:レム分家次男・第三世代

 母親:フリーダ


挿絵(By みてみん)

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