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第93話 恋愛相談と生首

【ホマレ視点】


 朝に収容した首についての報告を聞くべく俺とイザヨイは遺体安置所へ歩みを進めていた。


「なぁ、ホマレ。実はちょっと相談があるんだがな」


「何だよいきなり」


「実はな。今、ある女性の事が気になっているんだ。まあその事でちょっと……な」


 まさか俺がこいつから恋の相談をされるとはな。

 確かに俺には嫁が3人居るからなぁ。

 と言っても結構全員特殊な状況で結ばれた相手だから、参考になるかは正直怪しい。


「うーん。それで、相手はどんな娘だよ」


「すごく素敵な女性なんだ。ただ、その何というか色々と事情が込み入っていてな……」


「まさか人妻か?それだけは止めとけ。マジで社会的に死ぬぞ?」


 ナダ人は一夫多妻については文化的背景もあり受け入れられているものの他方で不倫に関しては非常に厳しい。

 前世では『不倫は文化』とか言われていたらしいがその言葉はまず受け入れられない。

 また、演劇の演目などでも不倫を題材としたものは幾つかあるが非常に受けが悪い。


「いや、安心してくれ。そういうのじゃない。まあ、その何というかその女性は最近恋人と別れたばかりらしくて」


「何だ。それならフリーじゃ無いか。何の問題がある?」


「そうなんだが、でもデリケートな問題だろう?」


 確かに、ウチのリムなんかがそうだが未だに元カレの事を引きずっていてあんまり恋愛に関する話題なんかは振れない。

 やはり最終的には元カレを討った俺が面倒を見てやるしかないのかもしれん。


「まあ、確かに引きずってるかもしれんからな。だけどさ、相手はお前のことどう思ってるんだよ」


「正直わからん。怒っている時もあるし楽しそうに笑ってくれる時もあって。それで、俺の方からその、告白とかしても大丈夫だろうかと」


 お前は中学生か。


「相手は……ナダ人だよな?」


「ああ、生粋のナダ女性だぞ」


「知っているとは思うがナダ女にとって告白、プロポーズは女性側から行うのが粋とされているものだぞ?ウチだってそうだ」

 

 フリーダにしてもセシルにしても割とあっちからグイグイ来た。

 ナギは日本人だが自分からグイグイ攻めるタイプなのでナダ女と同じ様な気性だ。

 おふくろ達にしたってプロポーズは全員女性側からだった。

 男からの告白はこの国じゃ『ダサい』のだ。

 まあ、そのダサさも極めればユリウス義兄さんみたいに超カッコよくなるんだがな。

 何せ10年近くリリィ姉さんに愛を告白し続けて落とした猛者だ。普通の男ではマネできない。


「デートを重ねて好感度を上げて、後は流れに身を任せろ」


「デートか……その、どんなところに行けばいいのだろうか」


 世話が焼ける奴だな。


「その娘、趣味は?」


「えーと……園芸とか占いとか」


 いい趣味だな。ウチの可愛い末妹であるリムも似たような趣味だ。


「それなら植物園にでも誘ってやれ。後はスターマインの占い通りにでも行って相性をとか占ってもらえ」


「なるほど、参考になる」


「頑張れよ」


 リムも立ち直って良い男性に出会えたらいいんだがな。


 遺体安置所ではセインという男が待っていた。

 ここの責任者でありケイト姉さん達の幼馴染だ。


「やぁ、遅かったね君達」


「お前と違って俺達は忙しいからな」


 敵意剥き出しでイザヨイが返す。

 二人は仲が悪い。理由は何かと言えば『ケイト姉さん』だ。

 このセインもイザヨイと同様、ケイト姉さんに好意を抱きアプローチをしていた男のひとりである。

 そして当然の如く、挫折している。


「とりあえず喧嘩は止めてくれ。セイン、この生首について何が分かった?」


 台の上に置かれたV字状の特徴的な髭をした男の生首を眺めた。


「それは本人に聞いてみるといいよ」

 

 何言ってんだこいつ?

 次の瞬間、生首が目を見開いた。


「吾輩の身体は何処に行った?」


「ぬおおおおっ!?な、生首が喋った!?」


 やべぇ、怪奇現象だ!

 ケイト姉さんに言わせれば『モンスターの仕業』!!


「落ち着いてくれ。彼は生首じゃない。紹介しよう。『デュラハン』のゲソボット氏だ」


「え?デュ、デュラハン?」


 そういう事か。地球(いせかい)では首のない男性の姿をした妖精として伝わっている種族。

 有名どころなんかは『首無し騎士の亡霊』でゲームなんかで出てくる時は大抵これだ。

 ちなみにこの世界のデュラハンは『首を取り外しできる亜人』だ。まあ、『オーク』や『ドワーフ』みたいなものだな。


「なるほど。デュラハンだったわけか。ところでその、彼は何で胴体をパージさせてあんなところに?」


「聞いて驚くなよ?実は昨夜友人達と飲みに行ったんだが、途中から記憶が無くてな。気づいたらこんな所に居たわけだ」

 

 ほら見ろ。酒は悪魔の飲み物だ。

 郵便受けを頭に被っていた俺が可愛く思えるぞ?


「ちなみにあんた、昨夜の服装はまさか……」


「プレートアーマーだ」


 あれかな。まさか荷馬車の近くで前後不覚に陥ってしまい、ぶっ倒れていたら積み荷と間違われて運ばれとかそういうオチか。

 うん。もう色々と馬鹿なのかなとツッコミたい。


「それじゃあ、積み荷を調べれば『中身入り』の鎧があるわけだ。よし、スピード解決だ。積み荷は何処だ?」


 その時だった。

 バレッタ隊長が怒り心頭といった様子で安置所にやってきた。


「ホマレさん、今朝の事についてですが始末書を提出していただくことになるのでお願いします!」


 あー、やっぱり始末書かぁ。

 まあ、あれは俺が悪かったよな。

 フリーダの事が気になるしさっさと書いてしまおう。


「吾輩の身体は何処じゃ!!」


 ゲソボットさんがさっきと同じ調子で声をあげた。

 そこからは予想通り、再び白目を剥き我らの隊長は気絶してしまったのだ。


「なぁ、今度は俺のせいじゃないよな?」


 やれやれだぜ。

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