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第6話 巨大ウナギがあらわれた!

「何だよあれ!大蛇?」


 水柱と共に現れたのはぬめっとした体表を持つ黄色い体色の大蛇……いや、違うな。


「あのぬめり具合は……ウナギだな」


「ウナギ?」


 ああ、そうか。

 『ウナギ』って名称はこっちじゃあんま一般化してないんだった。

 多分、こう呼ぶの転生者界隈くらいだからな。


「魚の一種さ。ニョロッとしていて長い奴だ。この湖には『アンギーラ』という淡水魚が生息しているが……それに似た形だな。まあ、あんなデカくは無いんだがな。さて、あれをかば焼きにすれば何人分になるだろうか?いや、そもそも食べられるか怪しいな」


「何ぶつぶつ言ってんだよ!?どっちかって言うとこっちが食べられる方じゃないか!!」


 なるほど。中々いい指摘だと感心した。

 確かにあれだけでかいと俺達くらい丸呑みにされてしまいそうだ。

 まあ、ウナギが人を食うのかは疑問だが。ああ、でも転生前に見た巨大ウナギの映画では普通に人を食ってたな。


「確かにどっちかって言うと俺達がエサになる可能性があるよな。はっきり言ってデンジャラスな状況と言えるだろう」


 巨大ウナギはこちらを認識すると身体をうねらせ尻尾をこっち目掛けて突き出してきた。


「ああっ!来たッ!!」


 猛烈な勢いで迫る尻尾の一撃。

 俺は慌てることなくサーベルでウナギの攻撃をガード、そのまま横へといなした。


「なっ!?ホマレ、あんた今のは……」


 これぞ俺が今でも使える数少ない剣技、『いなし刃』。

 まっすぐ進む力が強い程横からの力による影響を受けやすい。

 それを利用したガード方法で中々重宝する技である。要するに『ジャストガード』的な感じだろう。いや、『ジャスト回避』か?


「久々にやったけどよく成功したもんだな。正直ヒヤッとしたぞ」


 結構タイミングがシビアだったので下手すれば直撃して大ダメージを受けてしまう所だった。


「ぶっつけ本番だったのかよ!?」


「おいおいフリーダ。人生ってのはいつだってぶっつけ本番なんだぞ?それより重要なのはこういう状況でも冷静さを失わない事だ。慌てて無茶苦茶な行動をすることで生存確率は大きく下がって……」


 俺が言い終わる前に、今度は横なぎされた一撃が俺を捕らえ俺は宙を舞い、湖へ落水してしまった。

 言わんこっちゃない。


「ホマレェェェ!?」


 えーと、今回の教訓はあれだな。

 冷静になっててもダメなものはダメな時があるんだよな。

 まぁでもさぁ、横なぎはなぁ、反則だろ?イエローカード1枚だ。

 これこのまま巻き付かれたりして湖底へ引きずり込まれたりしたら流石にまずい事態だな。

 

 しかしながら悪い予想は当たらず敵が追撃を掛けて来る事は無かった。

 という事は即ち、地上のフリーダが狙われているという事になる。


 やれやれって感じだな。

 『クエストを成功させる』『後輩の命を守る』。

 どっちもやらなきゃいけないっていうのがつらいところだぜ。

 

 水中で右手を伸ばし体に力を込める。

 すると俺の身体を光が包み込み急上昇。

 仮面と鎧を纏ったヒーロー『デュランダル』へと変身し尻尾の一撃が叩き込まれようとしているフリーダの前に降り立つと一撃を受け止める。

 ちなみにこのイカした名前、命名はもちろん俺である。


「待たせたな!!」


「あんたは……確かあの時の……」


 そう言えば変身してこいつの前に姿を見せるのは2回目になる。

 ちなみにがっつり喋っているが何か声は変身と同時に特殊な変声を果たしているようで俺の声だとはばれない。


「へあっ!!」


 俺は相手の尻尾を掴んだまま力を込めて振り回し太い木へと叩きつけてやる。

 水中で生活してたモンスターだから木に叩きつけられるなんて夢にも思わなかっただろうな。

 

 だがモンスターはすぐさま首をもたげると口から電撃を放ってきた。

 さっきの爆走トカゲはこれを喰らってしまっていたわけか。

 避けても良かったがそれだと背後にいるフリーダに当たってしまう事になる。

 俺は両手っを広げ仁王立ちになり電撃を受け止めた。


「ぐあっ……」


 電撃のダメージにより膝をつく。

 そこへモンスターは一気にこちらへと距離を詰め俺の身体に巻き付き締め上げ始めた。

 普通なら身動きが取れずに詰みな状況となってしまうがそこはヒーローだ。


「ヘッドビィィィム!!」


 額から細いビームを発射してモンスターの片目を潰す。

 ウナギはたまらず俺の身体を離した為、拘束から抜け出すことが出来た。

 肩アーマーの一部をパージする湾曲した短刀に変化したそれを勢いよくウナギ目掛け投擲する。


「オラァァァッ!!」

 

 俺の意志で自由に飛び回る刃はモンスターの尻尾を切り、更に旋回して首を斬り落とす。

 首を落とされたモンスターはそのまま地面に倒れ込んだ。

 そして少しの間身体をけいれんさせ、生命活動を停止した。


「やった……のか?」


 フリーダは唖然としていたがやがてハッと気づき湖の方へ走っていき湖面を見渡す。


「ホマレが、仲間が湖に落ちたんだ!早く助けないと!!」


 ああ、これはまずいな。俺を心配してくれているのは悪い気はしないがそもそも当人は目の前にいるだよな

 このままだとそこに居ない俺を探して湖に飛び込みかねない。

 そうすると今度は俺がこいつを助けなければならなくなりそこそこややこしい。


「大丈夫。彼ならあっちの岸に上がっている。無事だ」


 まあ、実際は目の前に居るんだけどね。


「え?」


「私の名はデュランダル。少女よ、鍛錬を積み立派な冒険者になりなさい」


 とりあえずそれっぽい事を言っておこう。ヒーローってこんな感じだよな?

 そうして俺はフリーダが少しよそ見をしている間に飛び立つと素早く移動。

 さっき示した辺りで変身を解除するという盛大な『自作自演』を行う。

 間もなく俺を探してフリーダがこちらへと近づいて来て……


「ああっ、ホマレ。良かった、無事だったんだな!」


「はは、気づいたら水の中でさ……頑張って泳いで何とか岸に上がったんだ」


 まあ、見事な嘘です。

 さっきまで『へあっ』って戦っていました。


「ところで、あのモンスターはどうしたんだ?」


 我ながら白々しいと思うがこの辺は『お約束』だから仕方ない。


「ああ。それならえーと、確かデュランダルっていう……」


 カッコいいヒーローが来たんだよな?


「変な奴がやっつけてくれたよ」


「へ、変な奴!?変な奴だったのか?助けてくれたんだよな?こう、何かカッコイイとかそういう感想は無いのかな?」


「えー。どうかな。強いとは思うけど何か勝手に出て来て一方的に帰って行ったからなぁ。わたしはあんたの方が心配だったし『変な奴』ってイメージしかなかったよ」


 そうか。ヒーロー『デュランダル』は変な奴……変な……奴。


「大丈夫か?頭とか打ってるのか?何か落ち込んでいる様に見えるけど……」


「いや、その…………大丈夫。湖に落ちて……びっくりした、ってやつかな。うん」


 変な奴か……俺のイカした変身が……変な奴って。


「それよりも、魚無事か?早く納品しようぜ……うん」


「本当に大丈夫か!!?」



【???】


 湖から離れた場所で戦いを見ていたのは先ほどホマレをナンパした紫髪の女性、キュレネであった。


「何という事……私の可愛いペットちゃんが…………はぁ、仕方ない。アジトに戻って次の実験にとりかかるとしましょうか。それにしてもあの戦士、許せないわね。何者なのかしら?」 

 

 

 


---------モンスター名鑑---------


放電怪魚サンダギーラ

種族:魚獣系

体長:5m

危険度:中級Lv3


ミラ湖に生息するウナギ型生物『アンギーラ』が進化したもの。

体内に発電器官を持ち、雷属性の攻撃を使いこなす。また、尻尾で敵を薙ぐ払う突き砕くなどの攻撃が得意である。

進化の過程に謎の女キュレネによる『実験』が関与している。


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