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第64話 未来の白昼夢

自由過ぎる登場の新キャラ。

ツバメにせよ、色々といずれ書くかもしれない新作のキャラ候補を試験的に登場させたりしています。

【フリーダ視点】


 キララの相手を義姉さんに任せ、わたしとナギはセシルの亡骸を後方へと運ぶ。

 わたしが抱きかかえ、ナギがわたしを守りながら後退していた。

 ある民家の脇まで来た時、わたしは膝をつき動けなくなった。


「フィリー、大丈夫!?まさか、流れ矢にあたった!?」


 ナギが駆け寄ってくる。


「そうじゃない。ただ、わたし悔しくて……」


 ホマレに任せておけって言っておいてこのざまだ。

 わたしを庇ったせいでセシルは……まさか、こんな事になるだなんて。

 挙句の果てにはこうやって後方に退避させられてしまった。

 自分の無力さが、ただ情けなかった。


「見つけた!」


 その言葉にぎょっとなり警戒する。

 視線の先にはフードを被った二人組。

 片方は背が低く、恐らくは女性。声からすればそちらの声だろう。

 誰だ、まさか敵!?

 警戒する中、女性側はわたし達に駆け寄って来た。

 

「敵じゃないから!」


 フードの下からは髪を後ろでまとめた少女が出てきた。

 あれ?この顔って……


「ねぇ、何分経った?」


「え?」


「この人、心臓が止まって何分経ったのよ!?」


「えっと……」


 答えに窮する中、ナギが答える。


「5分も経ってないと思う」


「それならまだ可能性はまだある!いや、絶対に蘇生させる!お兄、周囲の警戒お願い!!」


「あいよ」


 もうひとりの人物が短く返事をする。

 少女がマントを広げるとその腰には様々な道具が装備されていた。


「傷口周辺の臓器や血管が軒並み破壊されている。だけど、心臓はギリギリ無事ね。そして、『こいつ』を持っているのが幸いだった」


 少女はセシルがホマレから渡されていたブローチを手に取る。


「それは……」


「この魔道具は『ネクターㇽ』。宝石の内部に強力な回復作用を持つ液体が満たされているの。『性能解放』されてないけど、あたしなら出来る!!」


 少女は『ネクターㇽ』に手をかざし何かを口ずさむ。


「『覚醒の詩』……これで、性能は解放されたはず」


 同時に宝石が解け、内部から液体があふれ出す。

 少女はそれをセシルの傷口にかけるとさらに腰に差したビンからぬめっとした液体をぶっかけた。


「ヒーリングクラブの甲殻から作られた軟膏。1gあたり10万ゴルトもする超高級品。こいつをネクターㇽと混ぜ込んで破損した臓器なんかを再生させる」


 同じく腰に差していたポーチから針と糸、そしてナイフを取り出す。


「この日の為に、あたしは腕を磨いてきた。必ず、助けて見せるから!!」


 数分後、滝のような汗をかく少女によって傷口の縫合が終わっていた。


「破壊された組織は修復した……後は、心臓を動かすだけ…………」 

  

 手のひらをセシルの胸に当てると呟く。


「10連……リカバリービート!!!」


 セシルの身体が小刻みに震えた後、大きく跳ねた。


「がはっ!!」


 セシルの口から血が吐き出される。


「セシル!?」


「ウソ……心臓が、動いてる。音が復活したよ!!」


 少女は宙を仰ぎ大きく息を吐いた。


「ぷはーっ、良かったぁ。とりあえずこれで、生命活動は再開したよ。後は意識が戻るだけ」


「本当に、生き返ったのか?」


「多分ねぇ。『ネクターㇽ』の浸透で脳の損傷も治ってるはずだし、魂が戻って来たらそれで万事オッケーだよ」

 

 魂が戻ってきたらって、ヤバくないかそれ?

 少女はわたしの考える事を察したの苦笑した。


「どーせ惚れた人の所でも行ってるんでしょ?身体が復活した以上戻って来るのは時間の問題だよ」


 えって、魂ってそんなアバウトなものなんだ……


「あのさ、あんたは一体……」


 さっきから気になっている事だ。

 髪型こそ違うし、大分若いがその顔は……『ナギとそっくり』だった。


「あたしはレム・カノン。そこに居るナギの娘だよ」


 沈黙。

 いや、何となく予想はしてたけど……こう、色々とね?


「「あっさりバラしたぁぁ!?」」


 わたしとナギは同時に叫んでいた。

 ああ、やっぱりナギも同じ気持ちだったのか。

 まあなぁ。顔もそっくりだし『音』を使ってるからな。

 

「あ、あのさ。キミ、ナギの娘って事は何か未来から来たとかそう言う系なワケだよね?」


「そーだよ。この時間からえーと16年後?あーいや、19年だっけ?まあ、何かその辺から来たの」


「アバウトすぎじゃない!?てかフツーそういうの隠さない!?さらっとタイムリープ!?色々とツッコミ満載なんですけど!?」


 ナギが猛烈に慌てている。

 他人には厳しい反面、ナギって身内に弱いからなぁ。すぐにペースを乱される。


「だって、あたしの顔見たら間違いなくわかっちゃうじゃん。あたしってママの若い頃によく似てるってよく言われるからさ」


「ママ…………な、何か悪くない響きかも」


「とりあえず、あたしはこの人が死ぬって聞いてたからこうやって未来から助けに来たわけ。あれ?だけどそうなるとタイムパラドックス的なものが発生しちゃわない?」


 カノンはポーチから『ペン石』取り出すと石畳に何やら数字の羅列を刻みだした。


「あれ?あれれ?何で気づかなかったんだろ。歴史が色々変わっちゃうよね。それじゃあ改変された未来で起こりうる事象を計算すると」


 一心不乱に色々な文字を書き連ねていく。

 完全に自分の世界だ。


「カノン、お前また難しいこと考えてんのか!?ていうか治療は終わったのかよ?」


 『兄』と呼ばれていた男が戻って来た。

 フードは外しており、服の前を開いて逞しい身体を見せつけてくる野性味あふれる大男だった。


「お兄、うるさい。今大事な計算してるんだから!あのね、あたしがこの人を助けた影響を考えてるの。歴史が変わっちゃうわけだしその辺はしっかり計算しないといけないじゃん」


「あーもう!お前の言う事は難し過ぎてわからねぇんだよ!んなもん適当でいいんだよ!!」


「お兄は雑過ぎ!そういうトコ、おじーちゃんそっくりなんだから!!」


 何か喧嘩が始まってる。


「本当に生意気な妹だぜ。なぁ、おふくろからも何か言ってやって…………あっ!!」


 わたしに向かって『おふくろ』と呼びかけた大男は気まずそうな表情で視線を動かした。


「何となくわかったと思うけど、それ、フィリーママの息子だから。ホクト兄」


「おいカノン!『それ』って言い方酷いだろ!?というか出発前にあれ程『絶対身バレしないように』って言ってたのお前だろ!?何でバラしてるんだよ!!?」


「だって、隠すの面倒になったもん」


「お前はぁぁぁ!!!」


 この雑そうな大男がわたしの息子……何か色々と理解が追い付かないけど妙に納得もしちゃうんだよな。

 わたし自身、少し雑な所あるから雑×雑の合作となると雑な人間になるよな。

 大男は無理やり妹を抱えあげた。


「これ以上留まると何が起きるかわかりゃしねぇ。『ユズカ』にどやされちまうからな。帰るぞ」


「ちょっと、まだ計算終わってないんですけど……って『ユズカ』って誰よ、今度はどこの女ひっかけたのよ!いちいちフォローしなきゃなんないあたしの身にもなって欲しいんですけど!!」


「あぁぁん!?お前、『ユズカ』は『ユズカ』だろうって…………あれ?」


「ちょっとお兄、これってまさか……あー、そう来たかぁ」 


 カノンはわたし達の方を見て苦笑。


「まー、これから色々あると思うけど頑張って。いつかの未来でまた会おうね」


 言いながら二人の姿は消えていった。

 そして……


□□

「あれ?フィリー、セシルの傷が治ってるし心臓も動いてる!!」


「何言ってんだよ。さっき治療してもらって…………あれ?誰が治療したんだっけ?え?そもそも死んでなかったっけ?」


 何だか変な夢を見ていたみたいだ。

 わたしの目の前で命を落としたはずのセシルは意識こそ無くしてはいるけど生存しているし……


「何か変な夢を見てた感じだ」


「あー、何かナギもそうかも。でも何だろう、妙な嬉しさがある感じ。なんかこそばゆいっていうかさ」


「わたしもだ。それに、セシルが生きてて、本当に良かった」


 そうだ。セシルが生きている。

 今はそれで、十分なんだ。

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