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第62話 妹が合体ロボに乗っています

【ホマレ視点】


 作戦というのはいつだって思った通りにはいかない。

 想定外の事態は常に起こりうるものなのだ。

 まあ、今回の場合やらかしたのは身内。可愛い我が妹なのだが。


 勝手に開幕の狼煙を挙げてしまったメールに続き、俺達は強引に王都へなだれ込む。

 目指すはグレースが捕まっている王城なのだが当然の如く多くの兵達が待ち受けていた。

 

 メールは、妹は何処にいる?

 迎撃してくる兵士を倒しながら妹の姿を探す。


 王都の街。その屋根の上で妹は戦っていた。

 相手は上半身が虎のような姿になっている男でチェーンを振り回して攻撃していた。


「シャイード!ディズデモナ派の将です!!」


「見た所、『獣人変化型』魔道具の使い手か」


 獣の力を身に宿し戦う。まあ、ウチのキョウダイも似たようなものだが大きな違いはあちらは姿かたちが変化するということ。

 そういや親父がこの世界に転生して初めて戦った人間も『獣人変化型』の魔道具を使っていたらしいな。


「どうしますか。援護に回ります?」


 セシルの言いたいことはわかる。

 恐らくシャイードという男はそれなりの実力者なのだろう。

 ただ……


「止めとけ。巻き込まれて殴られるぞ。それに、恐らく『あれくらい』ならもう決着する」


「え?」


「義姉さんなら、そうだろうな」


 見上げればメールはシャイードとやらに延髄斬りを叩き込んでいた。

 そして空中で背後に回ると脚を取りクラッチ。

 ああ、決まったな。


「ケリュケイオン・スープレーーックスッッ!!!」


 元々はリリィ姉さんの技なんだが何だかんだでメールも使っている。

 シャイードは地面に叩きつけられ動かなくなった。着地地点に居た他の敵兵達も何が起こったかわからないといった様子で固まっていた。


「敵将撃破ーー!!」


 喜ぶ妹を見ながら安堵しつつ、少し頭が痛い。


「まあ、そういう事だ」


「すいません。あたし色々と理解が追い付かないんですけど……」


 単騎勝負ならほぼ問題はない。

 むしろ問題となるのは多数の敵と戦う事で消耗すること。

 兵士の中にはナギの『声』による攻撃を避けて向かって来る手練れなどもいるし、妙な雰囲気を持つ連中も混じっている。

 恐らくそいつらはキララの仲間なのだろう。

 聖女とかでは無く闇から暗躍する連中、『邪神の祭壇』と呼ばれる組織の連中だ。

 

 どれくらいそういった連中がいるかはわからないがこの段階でそんなのがモブに交じっているのは正直あまりよい状態じゃないな。

 ナギの『声』を避けた兵士はこちらに接近する直前で横から割り込んできたユーゴさんに斬られ倒れた。

 フリーダの糸をちぎった奴についてはライトさんが接近戦で押さえていた。


 俺自身、こういった乱戦は得意じゃない。

 しかも相手は人間だ。出来れば殺さないように手加減をしたい。

 

「ああっ!更に増援が!!」


 王城の方から次々と増援が沸き出して来る。

 このままだと数で押されてしまう!!


「麻痺毒魔法『卑しき雫』!!!」


 聞き覚えのある声と共に空から降り注いだ液体が敵兵に直撃し転倒させる。


「この魔法は!!」


 空を見上げると上空には巨大な怪鳥の様な飛行物体。

 その背から飛び降りて来たのは……


「ああっ、姉さんだぁぁぁ!!」


 我が家の長姉にて才色兼備なくせに異次元レベルに低い恋愛偏差値の持ち主、ケイト姉さんだった。

 ケイト姉さんが建物の屋根に着地すると大声でマイクパフォーマンスを始める。まあ、マイクは持ってないけど。


「国王に反旗を翻した不届き共!このあたしが一人残らずぶっ倒してあげるわ!!」


「な、何だお前は!?」


 敵兵の問いにケイト姉さんは叫びで応答。


「通りすがりの『受付嬢』よ!覚えなくてよろしい!!」


 ああ、やっぱり姉さんはかっこいいなぁ!!

 それを合図として飛行物体から複数の影が飛び出してきた。


「やべぇ、あいつは巨人戦士『ボルン』だ!!」


「狂戦士『ワーレン』まで!?何でこいつらがここに!?」


 敵兵の叫びが聞こえてくる。

 どうやら親父の知り合いたちが参戦してくれているらしい。


「ホマ!このまま一気に抜けるよ!!」


「ああ!」


 味方の増援により進みやすくなった俺達は一気に王城目掛け駆け抜けていく。


「うわぁぁぁ、やべぇ『やすし』だ。こいつは止まらねぇぇ」


「何だよこいつ、噂通り意味が解らねぇぞ!!?何をされているんだぁぁぁぁ!?」


 えっ、『やすし』って人来てるのか?

 えーと確か『あの有名な戦士アーサーの友人の弟がよく通っているマッサージ店の隣に住んでいるよくわからないやつ』だっけ?

 ちょっとどんな人か興味あるんだけど……


「ホマレ!わたしも気になるけど今は前に集中しろ!!」


 フリーダに活を入れられ、俺は気を取り直して前へと進む。

 そうして城門近くまで来た時、突如として兵の波が俺とフリーダ、ナギ、セシルを分断する。


「しまった!?」


 振り返る俺だがセシルが叫ぶ。


「ジェス君!あなたはそのまま城内へ!殿下を救ってください!!」


「わたし達はここで敵を食い止めるから!!」


 だがあいつらを放っておくわけには……


『ナギ達なら大丈夫。ちゃんと警戒しとくから。だから、ホマは先に行ってて!!』


 ナギの『声』が飛んでくる。

 更には一緒にグレースが幽閉されている場所への道のりまで『イメージ』として飛ばしてくれた。


「くそっ!絶対生き残ってくれよ!!!」


 俺は叫び、王城へと突入した。



 王城内でも多数の兵士が迎え撃ってきた。


「くそっ!時間が無いんだ。邪魔をするんじゃない!!」


 早く戦闘を終わらせないとフリーダ達が!!


「いけませんわ、お兄さま。肩に力が入っていますわよ?」


 俺の頭上を飛び越え、敵兵に蹴りを入れる女性が居た。


「リム!?お前も来てたのか!?」


 末妹リムは回し蹴りで敵を吹っ飛ばしこちらにウインクして見せる。

 やべぇ、控えめに言って『尊い』ぞ。あれでご飯3杯はいける。


「さぁ、魔法の力、魅せてあげますわ!!」

 

 妹は敵兵の剣をいなし、カウンターで蹴りを入れていく。

 その反動で空中を舞い更なる蹴りを。

 時には姿勢を低くして足払いをするなど多彩な蹴り技で敵を薙ぎ払っていく。

 あれ、『魔法の力』は?


 やがて混じっていた手練れが蹴りを受け止めリムの動きが止まるが……


「こういう時は『回転』すれば問題なし!!」


 身体を高速スピンさせて敵の拘束から抜けると同時に撃破していた。

 うん、敵から見たらすっげー『理不尽』の塊だよなウチのキョウダイ。


「さぁ、お兄様早く!私に『巻き込まれない』内にどうぞ!!」


「あ、ああ!!」

 

 そうだった。あんまり戦っているこいつの傍に居ると『巻き込まれる』んだった。

 先を急ごうとする俺の前に見覚えのある女性が立ちはだかる。


「ふふ、久しぶりね。イケメンなお兄さん」


 こいつは確かいつぞやのゴーレム使いの女。確か名前はキュレネだったか?

 キララ達がおふくろを襲った時に謎の人物によって連れ出されたらしく義母さんが探していたな。


「せっかく楽しい事が始まろうとしているのに邪魔して貰ったら困るのよね。さぁ、『タラスク』。行きましょう!!」


 水牛の様な巨大角とごつごつとした甲羅を背負ったバトルゴーレムが姿を現しキュレネはそれに乗り込む。

 こいつ、こんな時に!!


「あら、『同類』の方がいましたのね。それでは、私も……来なさい、『マーナガルム』ッッ!!!」


 リムの呼び声に応え、天上をぶち破り巨大な大盾が姿を現す。

 これはメイママの実家、『ミアガラッハ辺境伯家』に伝わる伝説の防具。

 内部に人が乗り込み操縦できるよう改造された『引きこもり兵装マーナガルム』だ。

 ちなみに改造したのは義母さん。つまりナギの母親だ。


「なっ、こ、こいつも『ゴーレム使い』!?」


 リムは嬉々としてマーナガルムに乗り込む。

 まさか、久々に『あれ』が見れるのか!?


「完全引きこもり合体!!」


 名称は凄くカッコ悪いが空間を越えて複数のパーツが出現。

 それらが変形しながら合体していき腕となり、脚となり、そして頭となった。


「完成!スーパーマーナガルム!!」


 やべぇぇぇぇ!!右腕はビッグハンド、左腕はドリル装備。

 いつ見てもこれは無茶苦茶燃える展開だ!!

 あの人は毎回ろくでもない事をするけどこれに関しては全面的に支持する。

 男のロマンに溢れた合体ロボがこの異世界に爆誕したんだからな。


「さぁ、お兄様。早く行ってください!!」


 ロボ同士の戦いとか胸アツすぎるのでもう少し戦いを見ておきたいのだがそうも言ってられない。


「頼んだぞ!!」


 若干、後ろ髪惹かれる思いで俺は先へ進んだ。

 直後、激しい激突音が響いた。


□□


 庭園へと出ると敵兵は一人も居なかった。

 ここを抜けて行けばグレースが閉じ込められている部屋まですぐだ。


「やれやれ、どういうことだ。何故、『君』がここにいるのだ?」


「お前は……ギリアム!?」


 ディズデモナ公爵の息子、ギリアムがそこに居た。

 こいつは俺やアリス姉さん、そしてグレースとはいとこ関係にある。

 そしてこいつとは昔からウマが合わなかった。

 しかも共和国の学校に海外留学していたこともあり、その頃はよく顔を合わせては喧嘩になっていた。

 まあ、こうなった以上。どこかで会う事にはなると思ったけどな。


「まさかこの騒ぎは君が……どういうつもりなんだ!?」


「お前の方こそ、わかっているのか!?このままじゃ戦争が起きるんだぞ!!」


「その通りだ。だが君に僕を非難する資格があるのかい。王族の血統を持ちながらその責務を果たそうとせず国外でぬくぬくと暮らしてきた君に、僕やグレース達が背負っているものがわかるのか?」


「資格だの責務だの。そんな堅苦しい言葉で繕うんじゃねぇよ!そう言うならこの国を蝕んでる『影の聖女』をどうにかしろよ、このナルシスト野郎」


「君は本当に……本当にいちいち癇に障る男だな!!」


 ギリアムが剣を抜く。

 こいつは本当に昔からぁぁぁ!!!


「邪魔するんじゃねぇ!どけ!俺も大切な人達を守る為になり振り構ってられねぇんだよ!!!」

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