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第59話 危ない木の実を食べてしまった

【ホマレ視点】


 目を開けると知らない天井。

 身体が、痛ぇぇぇ。

 呻くとフリーダが覗き込む。


「ホマレ!良かった。目を覚ましたんだな!ナギ!ホマレが目を覚ましたぞ!!」


「はいはーい、ナギも傍に居て見えてるからね」


 苦笑しながらナギが覗き込む。

 身体を動かそうとしたら激痛が奔り思うように動かせない。

 俺はふたりに支えてもらい身を起こした。


「す、すまん。ここは……」


「イリス王国のオルレアン伯爵領。王都からはまだ結構離れてるけど一応安全だよー?」


 どうやらイリス王国へは入れたらしい。

 すると部屋の扉が開き顔に包帯を巻いたライトが入って来た。


「気が付いたようですな。まさかあそこからあんな風に逆転をされるとは思いませんでした」


「あの、俺……」


 するとライトさんひざまづいて頭を下げた。


「君には礼を言わねばならない。おかげで私の大切な人達を助けることが出来た」


「止めてください。そんなボコボコにしちゃったのに……だけどそうか。それじゃあやっぱりあなたは『人質』を取られたたんですね」


 戦いの前、どちらかと言うと穏健派らしいライトさんが殺意マシマシで戦いを挑んでくるというのは何か理由があると考えた。

 そうしたらナギが離れた所で彼を監視している集団を察知してその中に女性が二人、混じっていた。

 考えられることは『人質』だ。そこで俺は彼とガチで戦っている間にフリーダ達に『人質』になっていると思しき女性達を助けて貰うよう頼んだ。

 結局、暴走したせいで色々やばい事になりかけたが……


「あいつらが『人質』にとっていたのはライトさんの奥さんと娘さんだったよ。卑怯な事するもんだな」


「ちょっと強めの兵士が居たから時間かかっちゃってごめんね。でもまさかその間にあの力を使うなんて思わなかったなー」


「あーいや、あれ勝手に発動して身体を乗っ取られたんだよ」


「何それ、暴走フォームじゃん」


 流石、地球人(いせいかいじん)。よくわかっていらっしゃる。

 

「これってさ、後2,3回は同じ暴走して克服するパターンだよね」


 まあ、テンプレ通りならそうなんだけど反動がシャレになってないし危険すぎるからもうやりたくない。


「え、何それ?そういうパターンがあるのか?」 


「そうだよ。『様式美』って奴だね。今度フィリーにも教えてあげるねー」


「えーと……何だかよくわからないのですが……ともかく、おかげで私は妻と娘を取り戻すことが出来ました。聞けば君達は殿下を救出に来たそうな。私も微力ながら協力させていただきましょう」


 おっ、これは心強い味方が出来たパターンだ。

 出来れば『暴走ナシ』でここに持っていきたかったんだけどな。


「そう言えばセシルは!?」


 ギリギリでコントロールが戻ったので斬ってはいないが蹴ったりはしてしまった。

 しかも殺しかけたわけなので凄く気まずいんだが……


「あたしならここに居ますよ」


 見れば部屋の入口にセシルが立ってこちらを見ていた。

 やはりというかかなり警戒をしている。


「セシル。えーとさっきは……」


「わかっています。制御しきれていない力を使った結果ですよね。結果として何事も無かったからいいですよ。少し、怖かったですけど…………あたしは部屋に戻っているんで、失礼します」


 うん。無茶苦茶避けられてるよな。

 まあ、あれじゃ無理も無いだろうな


「というか俺はどれくらい眠っていたんだ?」


「丸1日だよ。その間にここへ運んだんだ」


 フリーダによるとオルレアン伯爵はライトさんとは旧知で熱狂的な聖女マニアらしく、奥さんも元聖女らしい。

 そんな人だから元聖女であるナギとその家族である俺達や現役聖女であるセシルについては快く匿ってくれた。

 反対派の聖女を無理やり貴族に嫁入りさせている現体制に不満がある様で協力してくれることとなったのだ。

 

「あのぉ、失礼しますよー?」


 扉を軽くノックして少女が入って来た。

 少女はいわゆる『ニンジャ』と呼ばれる人達が着るような装束を纏っていた。

 あれ、この娘どこかで……


「何か気絶してた人が目を覚ましたって聞いたっすけど……」


「コラ、ツバメ。大切な話をしているのだぞ?」


 ライトさんが『ツバメ』という名の彼女を(たしな)める。


「えー、お父さん。そんな事言ったって……私はセシル様に言われてきたっすからね」


「セシルが?」


「はい。私とお母さんを救ってくれた人が目を覚ましたから回復させてあげて欲しいって言ってたっす。あ、はじめまして。私は……」


 そう、ツバメという名でようやく思い出したぞ。


「えーと、ツバメちゃんだよな?留学してた」


「え?お兄さん私を知ってるっすか?」


「あのさ、君ってメイママのお弟子さんだった娘だろ?覚えていないか?」


 ツバメは俺の顔をじっと見てしばらく、突然声を挙げた。


「ああっ!リムさんのお兄さんっす!!」

 

 そう、彼女はかつてメイママの所へ治療術を学びにやって来た事がある。

 基本的にメイママは面倒くさがり屋なので弟子はとらないと言っていたが最終的に彼女を気に入ったらしく弟子にしていた。


「いやぁ、大きくなったなぁ……ちょっと大人っぽくなったんじゃないかな」


「ええっ!?そ、そんな褒めたってダメすからね。何も出ないんですから。何か助けて貰っちゃったみたいで本当にありがとうございます!!」


 うんうん、元気で礼儀正しい子だな。

 ふと、視線を感じてそっとそちらを見るとフリーダとナギが腕組みをしながらこちらを睨んでいた。

 あれぇ、ちょっと不穏な空気が流れているのは気のせいかな?

 


「なぁ、ナギ。あれどう思う?というかこんな感じでわたし達が知らない女性関係が今後も出てくる気がするのは気のせいかな?」


「そーだね。危険度は30%ってとこじゃない?ホマって割と無自覚でたらし込むからね。多種族とかも注意した方がいいかもね」


 たらし込むだなんて失敬だな。

 お前らが知らない女性関係なんて……あー、あるわ。セシルの件が正にそれだ。

 そもそもセシルが幼馴染だった事も彼女たちは知らないわけだしな。

 後は……うん、無いと思うんだがな……おそらく。

 ちょっと冷や汗が流れているんだよな。無自覚で何かやらかしている可能性はあるんだ。


「ああ、そうだ。お兄さん。戦いの影響で消耗が激しいんですよね?」


「え?まあ、あちこち筋肉痛だけど」


「そういう時はこれっす」


 ツバメは波模様をした木の実を取り出した。

 ああ、そうか。彼女はメイママの教えを受けて特に『木の実』の扱いに特化した『木の実マスター』だったな。


「これは『超心の実』っす。回復を助け、筋肉痛を改善させるんすよ?」


 恐らくは何かしら代償があるのだろうがこの際、贅沢は言っていられない。

 味覚がしばらくおかしくなったりとかそういうのだろうと覚悟を決めて『超心の実』を口にする。

 やはりというか中々な苦みがあるが飲み込むと同時に酷い筋肉痛がすーっと引いていく感覚があった。


「おお、こいつはすげぇ。さっきまで痛くして仕方が無かった身体なのに、自由に動かせるぞ!!」


 怖い。これ大丈夫か!?何か危ない薬っぽい雰囲気がする。


「良かったっす。まあ、デメリットとしてしばらく『男性の機能が阻害』される事になるっすけどね」


 その言葉に部屋の空気が凍り付いた。

 特に俺、そして同性であるライトさんはその言葉の意味に恐怖を感じて震えていた。


「な、何だってぇぇぇぇぇぇ!!!?」


 それダメ!男の人に絶対食べさせちゃダメな奴じゃ無いか!?

 男の尊厳が、粉々に砕かれるぞぉぉぉぉ!?


「あれ、何かやってしまったっすか?」


 何を『転生者あるある』みたいな台詞を言ってるんだぁぁぁぁ!!!

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