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第48話 トラブルの朝

初期案だと姉と同じく酔った末の『朝チュン』でしたがその展開は没りました。

【ホマレ視点】


 目を開けると普段とは違う宿屋の天井。

 昨夜の出来事が脳裏に浮かんでくる。

 零れ落ちそうになった大切なものを守ることが出来た。

 ずっと迷っていた自身の気持ちとの決着もついた。

 

 フリーダ、そしてナギと新しく歩んでいく人生だ。

 その『証明』というかナギからの『お願い』で俺はふたりと夜を共に過ごしたわけだが……まじかよ。リアルハーレム展開してしまったじゃないか。

 思い出しただけで脳みそが沸騰しそうだ。


 よし、とりあえず呼吸を整えよう。

 こういう時は素数を数えればいいと親父が言っていた……が『11』まで数えたところで次を考えるのが面倒くさくなった。


 記憶が確かなら俺の左右には愛する女性達がそれぞれ眠っている。

 かつて俺に憧れてパーティに参加した村娘フリーダ。あの時は控えめに言ってクソな性格だった俺は適当にあしらって追い返した。

 時を経て、神から貰ったスキルを返却した。家族以外の多くの人は俺から離れてしまった。

 だけど再会した彼女は変わる事無く俺を追いかけて来て、そしてウチに転がり込んで来た。

 何やかんやあったが家族しか勝たん価値観である俺にとっていつしか大切な存在となった。


 そして異世界転移者ナギ。

 出会ってすぐ、俺の事をあちこち連れ回すマイペースな女だった。

 最初は迷惑に感じて逃げ回っていたが段々と楽しみになっていったのも事実だ。

 俺が完全に家族以外を嫌いにならなかったのは彼女のおかげだと思う。



 意を決して左を向く。寝息を立てるフリーダの横顔。よし、寝てる。時間が稼げた。

 ウチに転がり込んで来た時邪険にしたのが申し訳なく思ってしまうくらい心が躍る。多分この寝顔でご飯3杯はいける。

 

 さて、そうなると次は反対側になるわけだが急に不安が襲って来た。

 もし、右を向いて誰も居なかったら……俺はどうしたらいいのだろうか。

 ナギは、一度俺の前から姿を消しているからだ。


 右を向く。こちらを見つめるナギと目が合い心臓が撥ねると同時に安心して力が抜けてしまった。

 悪戯っぽい笑みを浮かべた年上元聖女の甘ったるい匂いがした

 昨夜の事を思い出すと……いかん、鼻血が出てしまいそうになる。


「えーと……」


「おはよ、ホマ」


 やべぇ、こういう時恥ずかしくて何を言えば良いかわからんではないか。

 考えろ。俺はレム家長男。やればできる子だって姉さん達も言ってくれていたじゃないか。

 あの時の姉さん達の声援が俺を強くする!!


「お、おはよう。えーとナギ」


「んー?なーに?」


「えっと……その……大切にするから、な?本当に、一生大切だから…………だから」

 

 居なくならないでくれ。

 ナギが聖女としてスカウトされイリス王国に旅立った時、酷い喪失感があった。

 だがそれを招いたのは俺自身の行い。傷つけたせいで彼女は俺の前から姿を消した。

 頭ではわかっていた。姉や妹と結婚などどうあがいても出来ない、と。

 ならば自分を好いてくれ励ましてくれていた年上転生者を受け入れても良いはずだったのに。

 だけど『所詮は他人』と勝手に納得させていた俺はあまりにも子どもだった。

 ナギはくすくすと笑う。


「はいはい、それじゃあ後ろを向いてフィリーの方にもちゃんと言ってあげようね。こうしていられるのは、フィリーがホマの心を溶かしてくれたからだよ?」


 言われた通りフリーダの方を見るとそこには目を覚まして真っ赤になったフリーダ。

 あらやだ可愛い…………ってやべぇぇぇ、さっきより難易度高いぞ!?


「あ、あの……フリーダ。大切にするからな。お前達の事、本気で一生大切だからなっ!」


「あぅ、あぅ……あ、ありがとう」


 いつものじゃじゃ馬ぶりが嘘の様な反応。

 すいません。、色々と反則ですよこの娘。


「はいはい、語彙がイマイチだけどけよく出来ましたー。お姉さんがよしよししてあげるねー」


 背中に密着して俺の頭を撫でる年上。

 いかん、当たってる。色々と当たってる!!?

 刺激が、刺激が強いぃぃぃぃ!!?


 こんな感じのイチャラブな事をしていた俺達だがトラブルは突如として襲い来る。

 ノックされる部屋の扉。はて、誰だろうか?


「おはようございます。あたしです。セシルです。お話があるのですが……」 


「「「!!!?」」」


 先日ガチで闘りあった『斬滅の聖女』が部屋の外に居る。

 いやいや、タイミングが悪すぎる。流石にこの状況はマズイ。

 居留守にするか?


「仕方ないですね。急ぎの用事ですので開けてもらいましょう。お願いします」


「仕方ありませんな」


 何ですと!?

 そんな、刑事ドラマでよく見る様な『開けてください』が通じるのか!?

 しかも宿の人も了承するなよ!プライバシー侵害だぞ!?


 戦慄する中、気づけば既に服を着ている二人。お前ら、早業かよ。

 何やら目配せをして小さく話し合っている。


「ホマレ、あんたは寝たふりだ!何が何でも寝たふりだぞ!?」


 言われて反射的に

 横たわり目を閉じる。そして部屋の扉が開けられた。

 ここまで約3秒。


「入りますよーって、なんだ、起きてるじゃないですか」


「あのさー、キミって気が早すぎるんじゃない?こっちが返事する間もなく開けたよね。店員さんもさ、こーいうのどうかと思うけどなー」


 いつもの調子で抗議するナギ。

 店員は『すいません、私も色々あって』と申し訳なさそうに謝罪しながら出て行く。


「それでホマレさんは……」


「な、何か昨日大分疲れたらしくてさ、まだ寝てるんだよな」


 いや待て。多分お前は『昨日の戦闘で疲れた』って方向で誤魔化そうとしてるけどその言い方だと誤魔化せてないぞ!?

 勘のいい人なら気づいちゃうからな!?


「ああ、確かにあたしとの戦いは中々の『激闘』でしたからね。あんな負け方、初めてでした」


 ああ、意外に単純な娘だった。

 しっかり誤魔化せている。


「ところで、3人とも同じ部屋に泊まっているんですね…………もしかして」


 斬滅の言葉に寝たふりをしている俺の心臓が撥ねた。

 一難去ってまた一難。


「ひとりでは休ませていられない程にあの戦いで消耗していたわけですか。なるほど、流石あたしですね。聖女ランキング3位は伊達じゃありません!2位と4位の間ですからね!!」


 鈍くて助かった。

 というか自画自賛したよこの聖女。後、何でそんなに『3』が好きなんだよ。


「そうだねー、キミ強かったよねー。それで、何の用事かな?」


「はい。実は殿下がホマレさんと会って話したいことがあるそうで」


「わかった!あいつ起こしたら会いに行くよ!とりあえず今は出て行ってくれないか?」


 そうそう。早く出て行ってくれ。


「起こすくらい一瞬でしょう?あたしでも出来ます」


 待てよこのおバカさん!


「えーとさ、ホマってさー、裸で寝る癖あるんだよねー」


 一応断っておこう。

 基本的に服は着ているよ?今朝が特別なだけで……


「え!?」


「もしかしてキミ、見たかったの?そーいうの興味あるお年頃かな?」


「あわわわわ…………」


「仕方ないな。ここで布団をはごうか?凄いものを見る事になるけど、いいんだよな?」


 あらヤダ、フリーダちゃんってば大胆に攻めるなぁ。

 だがぶった切り聖女には効果抜群だったらしく。


「と、とりあえず下でお待ちしていますのでさっさとその男を起こしてください!そ、それでは!!」 


 セシルは慌てふためきながら勢いよく部屋の扉を閉めて出て行った。


「フィリー、鍵!!」


「わかってる!!」


 素早くかけられる鍵。そして……


「「「死ぬかと思ったぁ…………」」」


 3人でため息をつくのであった。


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