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第46話 告白、そして炎刃の聖女

【ホマレ視点】

 

 俺がセシルを撃破したのを確認するとフリーダとナギが駆け寄ってくる。


「やったな、ホマレ!まさかそんな力を隠してたなんて驚きだよ」


「まあ、能ある鷹は爪を隠すって言うだろ?俺くらいになるな。まあ、そういう事さ」


 俺の引用にフリーダは首を傾げていた。

 あれ?わからないか?かっこよく決めたつもりだが……滑った?


「ホマ、その言葉だけどこっちの世界には無いからね?えーとね、才能がある人ってむやみにひけらかしたりしないって意味だよ。ホマの場合微妙だけどさ」


「うん、微妙だな。まあ、初めて出会った時があのイキリっぷりだからなぁ」


 止めて。ちょっと滑って恥ずかしいのに更に恥ずかし過ぎる黒歴史を掘り起こさないでくれ。

 姉さんのエクストリーム家出と並んで一生言われ続ける奴だよこれ。


「それにしても……まさかセシルを倒しちゃうなんて。よく考えたら冗談抜きでヤバいかも。ホマ達に迷惑をかけないつもりで離れたのに余計に迷惑を掛けちゃった気が……」


 ナギが不安げな表情で俺を見る。

 何この弱気な表情。普段見せない顔でちょっとドキドキするじゃないか。


「あのなぁ。俺からすればお前が居なくなる方が余程困るんだよ。その、大切な話もしたかったし……」


「ホマレ……もしかしてそれってさ。えーと……」


 フリーダはどうしようかと言葉を選んでいる様だ。

 そうだな。丁度勝利で気持ちも高ぶっているしここは一気に決めるとしよう。


「聞いてくれ、俺は……」


「ナギね。一度は諦めたけどやっぱホマのこと好きなんだよね。でもフィリーの事も大事だし、離れたくない。それで、フィリーとたくさん話し合ってさ、ナギもホマレの彼女になるって決めた。どうかな?」


 だぁぁぁぁぁっ!?

 ちょっと待て。今のは俺がかっこよく告白を決めるところだよな!?

 フリーダと付き合っているのにナギの事も好きになってしまって。二人とも大切にするから、ずっと一緒に居たいからって感じで謝りつつ告白する予定だったのに。

 先を越されたっていうか、被せられたっていうか。

 見ればナギは顔を赤らめつつも悪戯っぽく笑っている。

 あっ、こいつ確信犯だ。俺の告白が来るのを確信して被せやがった。


「ダメかな?聖女も辞めちゃったし、アラサーなっちゃってるこんな、『私』じゃキミに釣り合わない?」


 しかもさり気なく普段は自分の名前を一人称にしている癖にここぞと『私』って言って……ギャップを見せてきやがる。

 フリーダの方を見る。彼女は黙って俺達の様子を見ていた。

 その表情には期待するような、そんな何かを感じさせる。

 

 参ったな。

 ナギが俺の事を好いてくれている可能性は十分にあった。

 何せ一方的に連れまわされていたとは言え一緒に冒険をして一度は一線を越えかけたくらいだからな。

 あの時は結局直前で断って凄く恥をかかせちゃったんだよな。


 だけどフリーダと話し合いが済んでいてその上で告白されるとは……顔が熱い。火傷してるんじゃないかってくらい熱いぞ?

 まさか姉さんたち以外でこんな気持ちにさせてくれる女性が『二人』も居て両方が好意を寄せてくれるなんて。

 俺はとんでもない幸せ者だな。

 ナギに近づくとそっと唇を重ね、言った。


「ああ、俺の方こそよろしく頼むよ。ナギ」


 ナギは真っ赤になりながら視線を泳がせまくっていた。


「あはは、ど、どうしよう。覚悟してたけど嬉し過ぎてナギ、頭が爆発しちゃいそうだよ」


「ええっ!?ナ、ナギ!?嫌だぞ!?せっかくホマレに返事貰ってこれから3人でってなのに……いきなり爆発!?」


「もうフィリーったら、た、例えだからね。そんな爆発したら大変になっちゃうじゃん」


 年上元聖女は笑いながら年下村娘の頭を撫でていた。

 良かった。どうなる事かずっと心配だったけどいい感じに着地してくれた。


「あっ、でもこれで王国を敵に回しちゃったからナギ達さっさと逃げなきゃ、だね」


「あー、確かにそうだよな。ホマレ、とりあえずどこへ逃げる?」


「それについてだけど一応考えはあってな。多分何とかなりそうなんだけど……」


 突然、広場全体を大気が震えるほどに強烈な威圧感が支配した。


「な、何だよこれ!?」


 フリーダがナギに抱き着く。

 ナギも顔色を変えフリーダをぎゅっと抱きしめている。


「嘘、こんなに早く見つかった!?」


 広場に繋がる階段をゆっくりと降りてくる人物が居た。

 炎の様に真っ赤な鎧を纏いやはり炎の様な色のリボンで髪を結っている女性。

 その手には炎を具現化したような剣を携え歩くたびに燃え上がる炎が宙を揺らめく。


「まさかセシルが倒されるとは……」


 女性は俺をキッと睨みつけると凛とした声で叫んだ。


「我が名はイリシア・ランパディス・グレーシズ。イリス王国の第1王女よ。そこ居る聖女ナギは本来我が国の所有物。直ちに帰還を命じます。それを邪魔するというのなら、排除させてもらうわ!!」


 更なる威圧感が俺達を襲う。

 うわぁ、ちびりそうなくらい激オコってやつだな。

 まったく、気が短い王女様だ。


「ホ、ホマ!」


 一国の王女にして最高戦力のひとり。はっきり言って勝てる見込みは無い。

 デュランダルに変身した所でそれすらも倒すほどの実力を持っているのはわかっている。


「ホマレ、あんなの、あんなのどうしたら……」


「まあ、心配するなって」


 これはある程度予想していた状況だ。

 まずはこの激オコ状態をどうにかしないといけないよな。


「いやまあ、そのさ。そんなキツイ事言わないでくれよ。えーとほら、『いとこ』のよしみで。な、『グレース』」


「「「はい!?」」」


 一瞬にして周囲の空気が凍り付いた。

 多分、時間も数秒間停止した気がする。


「誰かは知らないけれど貴方ごときに王族である私がその愛称で呼ばれる所以などあるはずが……ってあら、あなたもしかしたら」


 ああ、どうやら気づいてくれた様だな。

 これならあっさりとこちらののペースに持ち込めるだろうがもう少しダメ押しをしておくとしよう。


「前に会った時はもっと小さかったのにな。大きくなったんだな『グレースちゃん』」


「え?まさか、嘘。お、お兄ちゃん!?うえぇぇ!?」


 おふくろやアリス姉さんと同じ驚き方。

 いやぁ、本当に『親戚』だなぁ、うん。


「そうそう、俺だよ。ホマレ。ジェスロードホマレだ」


「うえぇぇぇ!?ほ、本当にホマレお兄ちゃんl!?」


 よし、冷静沈着でおっかない仮面を剥がすのに成功だ。

 先ほどまでの威圧感も完全に消えてしまっている。


「あのさ、ホマレ。イマイチ状況が呑み込めないんだが……何かさっきの迫力との落差が……」


「えーとな。おふくろって本名が『イリシア・アルセイデ・リーゼロッテ』っていってな。まあ、あれだ。つまりはイリス王族出身なわけ。あいつの叔母にあたるんだよな。簡単に言うと、俺とあいつはいとこ同士だよ」


「な、何ィィィィィッ!?」


「あー、そう言えばリズさんってどこかの王族だったってお母さんが言ってたけど……まさかイリス王国だったのかぁ。あはは、ナギちょっと思考を放棄していいかな?」


 そりゃ驚くか。まあ、無理も無いよな。

 目を覚ましてゆっくりと立ち上がったセシルが怒りの叫びをあげた。


「お、おのれ!あろうことか数十年前にお亡くなりになった国王陛下の妹君の名を騙るとは不届きにも程があるぞ!!」


 いやー、それが生きてるんだよなぁ。

 去年1回死にかけたけど今じゃ完全回復。ピンピンしている。


「いや、しっかり生きているぞ?昨日、体重がちょっと増えちゃったってて嘆いてるの見たし。今日は馬車を使わず歩いて仕事場まで行ってたな。片道1時間くらいかかるんだけどな。歳なのに無理しやがってさ」


「き、貴様!リーゼロッテ様は王族だぞ!?そんな一般家庭のおばさんみたいな事が……」


「セシル……その……それについてなんだけど。彼の言う事は事実よ。えっと……確かにリーゼロッテおば様は生きているし、それに彼はいとこなのよね。ええ、そう。いとこの……お兄ちゃん」

 

 少し顔を赤らめながら現役最強聖女である王女は俺との親戚関係を認めた。


「えっ……」


 先程まで大暴れしていたぶった斬り聖女の時間が停止した。

 そして数秒後、再起動した彼女は……


「ど、どっでんしたどねー!?」


 思いっきり出た訛りと共に咆哮した。

 確かイリス王国の地方訛りだよな。確かマントル地方だっけ。

 意味は『どういうことだー』みたいな感じだっけ。

 まあ、あれだよ。『事実は小説より奇なり』って事だな。


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