第45話シスコンVS斬滅
はい、今回の大技ですが……まあ、わかる人はわかるあれですね。
まあ、元々プロレス技やらところどころで出している『前科持ち』なので私の『芸風』です。
【ホマレ視点】
1ヶ月ほど前、俺はリリィ姉さんに呼び出された。
ウキウキしながら訪れた場所は冒険者ギルドの訓練施設。
何事かと首を傾げる俺に姉さんは言った。『私と全力で戦いなさい』。
姉さんには元々夢が二つあったらしい。
ひとつは素敵な男性と結婚して幸せな家庭を築く事。
一度は途絶えかけた夢だがユリウス義兄さんのおかげで叶えられた。
そしてもうひとつは『弟と全力で戦う事』。
親父の影響もあり、姉も妹も戦闘マニアな一面がある。
特にその傾向が強いのが四女のメールだが実はリリィ姉さんも結構な戦闘マニアだ。
なので結婚前はよく姉妹が庭で模擬戦をしていた。
小さい頃、俺も誘われたことがあったがチートスキルの影響を受けている真っ只中。
姉達の攻撃は止まって見えるし特に心も躍らなかった。
そんな様子なので俺は模擬戦に誘われなくなった。正直、チートスキルの弊害だな。
やがて俺はチートスキルを神に返却するがその代わり今度は無茶苦茶弱くなってしまった。
そのせいで逆に誘われないというこれまた涙目な状態だ。
現在、俺は遅れながらもレム家に生まれたものとして親達から受け継いだ才能を開花させつつある。
デュランダルへの変身もそのひとつ。
リリィ姉さんは言った。恐らくは俺こそが親父の力を『一番色濃く受け継いでいる』と。
俺はデュランダルに変身してリリィ姉さんと初めて本気で戦った。
57分に及ぶ戦闘の末、俺は姉さんに勝利した。
『今までの人生で一番楽しい戦いだった』
ダウンしながら笑う姉さんの笑顔は眩しく、俺は思わず泣いてしまった。
俺のせいで運命を歪めて苦しませてしまったのに姉さんは……
泣いている俺に姉さんは自分の力の一部、『レグルスドレス』の能力を譲渡してくれた。
きっと俺なら使える、いずれ来るであろう大切な人を守る為に持って行って使いこないしなさい、と。
姉さんからのプレゼントに俺は感動でまた大泣きしてしまった。
ただ、最近気づいたんだ。
この力って確か姉さんが地球へエクストリーム家出した際に現地男性との間に生まれた絆から覚醒した能力だよな?
ということは例えるなら『元カレから貰ったプレゼントを弟に押し付けた』って事になって……うん、色々台無しだ。気づくんじゃなかった。
いや待て、姉さんの『元カレ』ってのはおかしいな。姉さんはそいつに恋心を抱いてはいたそうだが付き合ったわけでは無い。そもそも認めるわけにはいかん。
俺が姉さんを任せることが出来るのはユリウス義兄さん以外は無い。断じて認めない!!
素直に『姉からのプレゼント』ってことにしておこう。
□
俺はナギを連れて行こうとした聖女と対峙。
この力ならデュランダルの変身できない状況でも大切なものを守る為に戦える。
「さぁ、来い。『残飯の聖女』!!」
「『斬滅』です!何ですか『残飯の聖女』って。ご飯を残すの!?勿体ないでしょう!!」
ほう、見事なツッコミだな。
いや、悪い。割と本気で『残飯の聖女』と思ってたわ。
残したごはんでも飛ばして来るのかなー、腐ってたりしたら嫌だなーとか結構失礼なことを考えていた。
だが残飯を勿体ないと言う辺り中々よく出来た娘さんだと思う。うん。
「すべては『殿下の為』!『静寂の聖女』は連れ帰らせてもらいます!!」
『残飯』改め『斬滅』と俺の中で認識を更新した聖女セシルは強くこぶしを握るとこちらへと距離を詰めていく。
これは明らかにあの握った拳に何かあるやつだよなぁとか思っていたら握った拳をこちらに振りつつ解放。
「刃in縮傷ッッ!!」
解放された拳から放たれた力が近くに会ったベンチを両断した。
「危ねぇぇぇっ!何だその危険なにぎりっ屁は!? 避けたから良かったもののあんなもの直撃したら……怪我するじゃねぇか!!」
「なっ、ひ、人の技を『にぎりっ屁』!?しかも『怪我』!?どこまでも舐めた事をぉぉ!!」
やべぇ、怒らせてしまった。
いかんな、俺何かやってしまった……んだよなこれ。
「刃in縮傷乱れ撃ちッッ!!」
セシルは両手を使って危険なにぎりっ屁斬撃を連発する。
おいおい、大幅リストラかよ!
「獅子爪フォーク!!」
攻撃を避けつつセシル目掛け爪攻撃を叩き込む。
直撃したら大きな穴を開けてしまう技で対人戦、ましてや軽装の女性に使うものではない。
ただ、セシルは全身刃なので金属がぶつかる大きな音が響き火花が散るに留まる。
全くダメージが無いわけでもないだろうがまあ、物騒なお嬢さんだ。
「そうやって攻撃からちょこまか逃げて!それなら掴んで斬り裂く!!」
セシルは接近すると俺の右腕を掴む。
斬り裂かれながらも俺は踏み込むと掴まれた腕で鳩尾にひじを叩き込んだ。
よろめくセシルをブレーンバスターの態勢に担ぐ。
「ちょっと!何であたし相手に接近戦。しかも投げ技なんか……」
「ハーッ!タァーーーッ!獅子のひねり殺しッッ!!」
身体を捻らせながらセシルを地面に叩きつけた。
「あがっぐはっ!!?」
接触した部分はセシルの能力でダメージを受けてはいるものの、あちらもまさか投げられるとは思っていなかったんだろうな。
受け身が甘い!大ダメージに目を白黒させている。
「負傷上等!レム家に生まれた戦士の気概を舐めてもらっては困る!!」
「くっ、くそっ!まるで狂戦士じゃない。意味わかんないわよ!!」
何とか立ち上がったセシルは構えを取ると姿勢を低くし突撃して来る。
両腕は掘削機の刃のような形に変化していた。
「その気概ごと微塵にしてくれる!!大黒砕刃ッッ!!」
流石にあれを受け止めると腕が吹き飛ぶな……と言いたいところだが。
俺は爪型手甲を手全体を覆う装甲へ変化させ、『闘気』でコーティングした。
「正面から受け止めてやる!砕いてみろ!!」
セシルの危険タックルを受け止め両腕をクラッチする。
「ぐっ!正面から受け止められた!?こんな事が!?」
「凄い技だったぜ。俺も『闘気』を振りしぼらなきゃ腕を持っていかれたかもしれない」
俺が念じるとマフラーが離れて行き盾へと変化する。
そのままセシルを持ち上げて盾目掛け投げつけた。
「だからお前に敬意を表して、そして大切なものを守れることを証明させてくれた事に感謝を込めて……全身全霊を叩きこんでやる!!」
全ての『闘気』と装甲を右腕に集中すると宙を舞い逆さに落下していくセシルの喉元目掛け渾身のラリアットを放ち背後の盾へと叩きつけた。
「レグルス・ボンバーッッ!!!」
「ッッッ!?」
全身を刃としていた防御をも貫いた一撃にセシルは泡を吹きながら撃沈した。
即ちこれは『決着』だ。
「見たか、これが俺の新しい力だ!!」