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第43話 チャブーダの広場

当初は普通の『ゴンドラ』が出てくる予定でしたが『どうせなら異世界っぽくいこうぜ』と思い立ち異世界生物が登場することになりました。


【ホマレ視点】

 

 バルキンさんの店でしばらく過ごした後、俺達は表通りへと出た。

 フリーダは停留場に停めてあるゴンドラとよく似た軟体生物を指さす。


「なぁなぁ。あれに乗ってみたいんだけどいいかな?あれって乗れるやつだよな?」


 まあ、そう言うだろうと思った。

 俺もガキの頃、この街に来た時は乗りたがったからな。

 ナギの方を見ると『いいんじゃない?』と笑いながら同意してくれる。


「あれは『ゴンドラウミウシ』っていう人を乗せて水路とかを移動することが出来る生物だ。ゴンドラウミウシにはそれぞれ専用のテイマーがついていて、操っているんだ」


 その背は自由に形を変えることが出来、観光用のゴンドラウミウシは座席状になっている。

 乗船可能人数は大きさによって変わるが3人なら余程小さなものでない限り問題なく乗れる。

 どれにしようかと眺めているとフリーダが停留場の奥の方に止めてある一台の黄色いゴンドラウミウシを指さす。


「どうしたのフィリー?」


「何だろう。あっちが気になるんだ。『糸』が伸びている気がする」


 ああ、なるほど。こいつお得意の『糸ガイド』だな。

 『特殊個体』なんかのトラブルを引き寄せることがある一方で探し物がすぐに見つかったりと中々頼りになる。

 それならば、とフリーダが気になる方へと歩いて行くと白髪アフロという中々奇抜なヘアスタイルをした爺さんが居た。


 あーうん。流石にこれは無いんじゃないかな。

 プルプル震えているのはもう不安しか感じない。


「ねーねー、おじいちゃん。その子に乗せてくれる?」


 年上元聖女は何の躊躇いもなく老人に声をかけた。

 いやいや、一度躊躇おうぜ!!


「へへ……あ、あっしの船に乗ってくれるんですかい?へへ、これで久々の酒代が稼げるってもんですわ……」


 うん。凄くダメっぽいんだけどな。

 酒代を稼ぐとか言ってるもんな。

 もしかして今震えているのも酒が切れてるからとかじゃないのか?

 大丈夫なのかこの人!?


「どうしたのホマ?だってフィリーが糸で手繰り寄せたのがあのおじいちゃんだよ?大丈夫だよ…………多分」


 こいつ今、『多分』って言ったよな!?

 やっぱり若干不安を感じてるんじゃないのか!?自信無いんだよな!?

 ナギは俺に耳打ちする。


「でもさ、こっちから声かけといて『やっぱ間違いでしたー』ってのも何か感じ悪いじゃん。フィリーの『糸』を信じようよ」


 まあ、確かにそれは一理あるな。

 意外と凄いじいさんかもしれないし。


「それじゃあじいさん、3人頼めるか?」


「へへへ、お安い御用で。久々のお客さんですし1時間7000ゴルトってところでどうですかい?」


 7000ゴルトか。思ったよりも結構安いな。

 相場は大体その倍くらいはするものなのだが……やっぱり不安になってきたぞ?

 俺は爺さんテイマー『ヒロ』が操るゴンドラウミウシへと乗せてもらいウィグホーケンの水路を観光する事となった。


□

 乗船前の不安は嘘の様にヒロ爺さんの操るゴンドラウミウシは安定した航行をしていた。

 どうやらフリーダの『糸』はかなりのベテランを引いた様だ。やはり頼りになる。

 水路の両側は住宅の壁となっており、中には船が乗り付けられる入り口なんかもあった。 


「やっぱり水路が張り巡らされてるから橋が多いんだな」


「そうだねー。大きいのや小さいのやら色々あるよねー」


「へへっ、おおよその数ですが大体600前後の橋があるそうでねぇ」


 半端ない『橋の街』だな。

 こことよく似た造りをしている都市が『地球』にもある。

 水の街と呼ばれる『ヴェネツィア』がそうであちらは400くらい橋があると聞いた事がある。


「ところでやっぱり旦那方はあれですかい?『恋煩いの橋』をくぐりに?」


 この街の名所『恋煩いの橋』。

 ハートの装飾が施された小さな橋の下を抜けると乗った男女二人は末永く幸せに結ばれるという言い伝えのあるスポットだ。

 煩っていい物かと疑問は残るがまあ、いいのだろう。

 ちなみにガキの頃、リリィ姉さんとくぐるって駄々をこねて呆れられた。うん、あの頃は若かったな。中身は20歳越えてたけどさ。


「えーと、それも興味はあるけど……」


 フリーダは顔を赤くして俯く。

 その様子を見てヒロじいさんは少し考え、こう言った。


「旦那方、もしよろしければあっしのおすすめスポットへ案内しましょうか?旦那方なら多分『そっちの方が合っている』気がしましてね」


 おすすめスポットか。

 まあ、行き先は適当に任せてはいるし悪い爺さんじゃなさそうだからな。


「ああ、頼むよ」


 同意を得るとヒロじいさんはウミウシに命令を与え複雑な水路を抜けていく。

 やがて到達したのは小さな広場。

 その中央には変わったモニュメントが鎮座していた。

 それは巨大なちゃぶ台を囲む人々の像だった。


「じいさん、これは?」


「へへへ、『チャブーダの像』です。あの中央にある低いテーブルが遥か古代に栄えた文明のテーブル、『チャブーダ』でしてね」


 うーん。どう見ても『ちゃぶ台』だよなあれ。

 思うに古代に転生した人がちゃぶ台なんかを持ち込んでそれが伝わっているんだろうな。

 そして発音もこう間違って伝えられちゃったんだろう。『コーターツ』みたいに。

 ちなみに『コーターツ』こと『こたつ』は娼館なんかに置いてある卑猥な道具という間違った地位を確立してしまっている。

 下手に『こたつ』の事を口にすれば社会的に死ぬので要注意だ。


「それで、何で俺達をここに?」


「この像は『家族としていつまでも仲良く暮らせますように』っていう願いがこめられた像でしてね。昔は結婚したばかりの夫婦とか色々な人達が訪れていた。今は恋愛成就の橋とかそんなスポットに押されてこの地味な像の広場に訪れる人達は本当に少なくなってしまった。ただ、あんた達なら『恋煩いの橋』なんかじゃなくてこっちかなぁと思いましてね」

 

 ああ、もしかしてじいさんは気づいているのか。

 『恋煩いの橋』の言い伝えはあくまで『男女二人』の幸せ。

 だけどこっちは……


「もう20年以上前になりますかね。あの時もこうやって案内した人達が居ましたね。あの時は女性が『3人』でしたね」


「女性が3人……それってもしかして」 


 それはもしかして親父達なんじゃないだろうか。

 時期的にも親父達の結婚と一致するよな。


「ちょっとお節介でしたかね」


「…………いや。おかげで俺の中で決心がついたよ。ありがとう」


 そうだな。あれこれ考えていてもドツボにはまって行くだけだ。

 俺がどうしたいか、二人に伝えなくちゃな。


「なぁ二人とも、大事な話があるんだけど……ってあれ!?フリーダ、ナギは?」


「え?」


 見ればフリーダの隣に居たはずのナギの姿が見えなかった。

 おかしい。さっきまでそこに居た筈なのに!?


「フリーダ、ナギを探すぞ!そう遠くには行っていないはずだ!!」


「あ、ああっ!!」


 俺はヒロじいさんに礼を言って金を渡す。


「だ、旦那、随分と多いみたいですけど……」


「チップだと思ってくれ。あんたのおかげで俺の中で決意が出来たからさ!!」


 そう言うと俺達はナギを探して駆け出した。


---------モンスター名鑑---------


ゴンドラウミウシ

種族:軟体生物系

体長:12m

危険度:初級Lv1

ウィグホーケンで水路を移動する手段として古くから使われている生物。

大人しい性質で様々な特徴を持つゴンドラウミウシが居る。

中には戦闘能力を持ちテイマーと一緒に戦うことが出来る種類も居るとか。


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